テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
青空の下で、君を待っていた。
風が吹いた正午、影がいちばん短くなる時間。
何も隠せない時間。
僕は
「これからどうなるんだろうね」
と言いかけてやめた。
進め方は教わらなかった。
君の目を見た。
何もわからなかった。
僕は何も言えず、歩いた。
ただひたすら、歩いた。
「考えたってわからないし」
「青春なんてつまらないし」
辞めたピアノの机をたたく癖が抜けないみたいに、
辞めたはずの夢も抜けない。
「将来何してるだろうね」
僕が問うと
「音楽はしてないといいね」
君は笑った。
それは優しさの顔をした、裏切りだった。
売れない未来より、
苦しむ僕を選んだ。
僕も選んだ。
幸せそうな人が憎い。
その理由を考えるたび、頭の奥の化け物が大きくなる。
劣等感という名の化け物だった。
「間違ってないよな」
何度も聞く。
それでも君は言う
「間違ってるんだよ」
僕は昔、信念があった。
今ではもうすでに塵だった。
売れることなんてどうでもよかった。
ただ君を書ければよかった。
何度も君を書いた。
本当だ。本当なんだ。
でもある日、気づいた。
君は”僕の音楽”なんて眼中になかった。
“音楽を辞める僕”を見ていた。
「音楽とか儲からないし」
「歌詞とか適当でもいいよね」
君が言うたび、僕は苦しくなった。
でも苦しくなる分、君は安心した顔をする。
早くやめろと言うみたいに。
だから辞めた。
君の瞳に移るために。
僕の夢をあきらめることで。
「考えたってわからないし」
「生きてるだけでも苦しいし」
「将来何してるだろうって?」
大人になったらわかったよ。
「何もしてないなぁ笑」
何も始めない。
何も挑まない。
何も失わない。
でも、
”何も手に入らない”
君は隣で笑っている。
「やっと辞めた」
と言うように。
君は僕が夢をあきらめたことに安心し、
僕は君の瞳に移ることで存在を感じる。
幸せだった。
幸せだったはずだ。
今もまだ、ひとりで机を弾く。
音は鳴らない。あたりまえだ。
でも指が覚えている。
昔の僕。
売れることこそどうでもよかった僕。
塵みたいになった信念が、まだ少しだけ残っている。
「だから僕は音楽を辞めた」
君のせいにして、ずっと言い続けてきた。
でも本当は、君のせいではなかった。
怖かったのだ。
挑戦することが。
失敗することが。
君に呆れられることが。
青空の下。
まだ君を待っている。
進め方は、今も分からない。
教わってないんだもの。
それでも、それでもまだ
机を弾く癖が、抜けない。
「辞めたくなかったのかなぁ笑」
辞めたことが唯一の後悔だったんだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#ガールズガールズ