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夫とだけはしたくありません

40 - 第40話 圭太の怪我

2024年11月16日

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それからしばらくの時間、ご飯の支度をしながら遠藤とメッセージをやり取りしていた。


《では、火曜日にお願いしますね》


〈はい、間違いなく〉


そこでメッセージは終わり、スマホを閉じた時に時間が目に入った。


雅史が圭太を散歩に連れ出してから、2時間以上が経っていた。


「えっ!ちょっと、どこまで散歩してるの?」


いつもの雅史なら、圭太を連れてそんなに長い時間外出することはない。


なんだか嫌な予感がして、外へ出た。


散歩と言いながら、きっといつもの公園で遊んでいるのだろうと、そちらへ向かう。


途中で救急車が横を通り過ぎた。


「えっ!まさか!」


救急車のサイレンが、とんでもないことが起こっているように聞こえて、公園までの道を走った。


日曜日の夕方も近いのに、一箇所に人だかりができていて、救急車はパトライトをつけたままそこに停車していた。


象の滑り台の辺りで、何かが起きたらしい。


人だかりの中から、聞き覚えのある声がした。


「あっ!圭太くんママ!大変よ、圭太くんが!」


「圭太が?」


人だかりをかき分けて中にはいると、救急隊員に声をかけられている圭太の姿があった。


「圭太、どうしたの?」


「おかーたん」


「あ、この子のお母さんですか?」


「はい、あの、うちの子がなにか?


「滑り台のてっぺんから落下して、頭をぶつけたらしく、一時的に気を失っていたみたいです。意識はあるのですが念のためこのまま病院へ運んで検査をします」


「は、はい、お願いします」


「では、付き添いを」


担架に乗せられる圭太に、声をかけながら救急車に乗り込む。


「おかーたん、ごめんね」


「大丈夫よ、どこか痛い?」


「ん…」


「あれ?そういえばお父さんは?」


救急車に乗りこんだとき、人だかりの中から雅史が走ってきた。


「圭太!」


呼ぶ声が聞こえたけれど、救急車はすぐに出発した。




病院に着いて、一通りの検査をしたけれど特に異常はなかった。


たんこぶと、擦り傷を消毒して終わってホッとした。


「念のため24時間は、様子を見てくださいね」


「はい、お世話になりました」


待合室で精算を待つ間に、雅史に電話をして保険証や財布を届けてもらった。




会計を済ませて外に出た。


雅史が駐めた車まで歩く。


「圭太、大丈夫か?」


「ん」


「大丈夫みたい、だけどなんで?どうして目を離したの?圭太を遊ばせているなら、目を離さないでよ。なんのためについて行ったの?」


「いや……そのほんのちょっと、一瞬目を離しただけだよ、な、圭太」


「おとーたん、ゲームだもんね」


「え?スマホしてたの?ゲーム?圭太を見ないで?」


私の頭の中に京香の顔が浮かんだ。


「いや、ゲームじゃないよ、仕事のことで連絡とってたから、ちょっとだけだよ」


京香とLINEでもしてて、そのために圭太が怪我をしたのかと思うと、悔しくて腹が立って泣きそうになる。


「見せて!そのやり取り。ホントに仕事なの?仕事なら見せられるでしょ?今ここで見せて」


「えっ、それは、その……」


雅史は、慌てたようにスマホが入っているらしいポケットを押さえた。


「早く出して!圭太を放っておかなきゃいけないくらいの大事な仕事の用事ってなに?」


「仕事の話なんだから、お前に見せてもわからないだろ?」


雅史のイラついた時の私の呼び方“お前”。


そのせいで私の中の怒りのスイッチが入った。


「いいから見せてよ、見せられないの?誰とやり取りしてたの?正直に言ったら?仕事なんかじゃない、女とだって」


「声がデカいぞ、みっともない」


広い駐車場とはいえ、周りにはチラホラ人影があった。


「おかーたん?」


圭太が、涙を浮かべて私を見上げてくる。


「あ、ごめんね、圭太のことじゃないからね」


ちっ!と雅史の舌打ちが聞こえた。


とりあえず、車に乗り込む。


「早く、ここでスマホを出して、私に見せてよ。仕事なら隠す必要ないでしょ?」


「しつこいな、じゃあ、これはどういうことなんだよ、説明しろよ。お前がこれを説明できたら俺も説明してやるよ」


そう言うと、わざわざ私のスマホに写真を送ってきた。


_____あの日の写真だ



そこには遠藤とランチをしている私が写っていた。


あの時いたのは間違いなく京香で、やっぱり写真を撮っていた。


「お前だって浮気してるじゃないか!」


「なに、その言い方。まるで自分もしてるけどお前もしてるじゃないかって聞こえるんだけど?」


「いや、してるだろ?」


私は成美がSNSにあげていた、あの日の写真を雅史に見せた。


「これでしょ?成美と成美の会社の人とランチした時の。成美とランチしてたら偶然この人が来て、あ、ほら、書類を出して仕事の打ち合わせもちょっとしてたよ。この写真はまるで私がこの男性と二人きりに見えるように切り取ってあるのね。悪意しか感じないけど、誰がこんな写真を?」


私は成美と打ち合わせておいた内容の話をした。


少し嘘があるけれど、実際、遠藤とは何もないのだし。


雅史の顔が青ざめている。


「また誰かの罠だったりして。でも誰が?何か心当たりがあるんじゃないの?誰なの?そんな写真を撮って送りつける人って」


京香だということはわかっているけど、とぼけて雅史に問いかける。


「誰なの?ねぇっ!」


車内に流れる険悪な空気。


「おかーたん、おなかすいた」


「あっ、ごめん、帰ろうね。今日はミートボールだからね」


後部座席のチャイルドシートの圭太の頭を撫でて、なだめる。


「あとで話しましょう。訊きたいことがたくさんあるから」


雅史は、無言のままで駐車場から車を走らせて家に向かう。


ミラー越しに圭太を確認して、大した怪我でなかったことにあらためて胸を撫で下ろした。


_____これって、遠藤さん夫婦の話と似てる!


違うところは、圭太の怪我は軽傷だったことと、雅史は浮気相手とLINEでもしていて圭太から目を離したことだ。


遠藤さんは仕事のやり取りをしていてと言っていた、けれど。


_____まさか、ね


遠藤に限って、女と何かしていたとは信じたくなかった。
















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