『どーってことないですよ。どんどん映しちゃて下さい!』
夏希が、思いっきり笑って言った。
夏希らしい。
『あのねぇ、夏希。他人事だと思って』
この密着番組、本当に人気番組だし、すごくたくさんの人の目に触れるの…やっぱり嫌だよ。
『森咲はコピーのセンスがあります。笑顔も…どうぞ紹介してやって下さい。お願いします』
朋也さんが、ディレクターさんにそう言った。
『了解です。じゃあ、そうさせて頂きます』
えー!!
私、OKしてないよ。
朋也さん、夏希、一弥先輩まで、みんな意地悪そうに笑ってる。
『恭香ちゃん。もう、観念しなきゃね。放送が楽しみだね』
『一弥先輩…私、本当に自信ないんです。テレビ画面に私の顔が映るの想像しただけで…』
『恭香ちゃんは可愛いよ…自信持って』
その言葉と一緒に、一弥先輩の右手が私の頭の上に…
優しい笑顔で頭を撫でてくれたんだ。
『嘘みたい~私が恭香先輩の顔だったら絶対断ります。みんなちょっとおかしいです』
梨花ちゃん…
みんながいなくなった途端に出た言葉。
辛辣だよ。
分かってるよ、そんなこと言われなくても…
『梨花ちゃん。そんなこと言っちゃダメでしょ…恭香ちゃんだって、自分がたいしたことない…って分かってるから嫌がってるんだから。テレビ…楽しみね。しっかり見させてもらうわ、笑顔のコピーライターさん』
菜々子先輩…?
どうしたんだろう…
前まではもう少し優しかったのに…
なんか今の言い方、すごく意地悪だよ…
でも、そんなことをウジウジ考えてる暇は無かった。
シンプル4のCM撮影が再開された。
人気者だから拘束時間は守らないと…
軽快な音楽が流れ、彼らがリズムを刻んで踊る。
もちろん商品のお菓子を持って。
グミを何度も食べるから、大変だろうな。
笑顔いっぱいの4人。
彼らが持ってるだけで、グミも美味しそうに見えるし、なんだか楽しそうだし、カッコイイし…
CMは成功するって確信が持てた。
うん、みんながこんなに頑張ってるんだから、私もクヨクヨするのやめよう。
笑顔、笑顔。
頑張ってれば良いことあるから…
そう自分に言い聞かせた。
次は、亮くんが一人でアップのシーンの撮影。
梨花ちゃんが考えたコピーを、亮くんがとってもカッコよく言う。
『一緒にたべない?君と僕をつなぐ、ちっちゃなハート』
ハート型の可愛いグミを亮くんがつまんで、グミに優しくキスをする…
チュって…
女子達は、テレビ画面の向こうで、きっと胸きゅんするだろう。
亮くんって可愛い系の男の子だけど、このセリフは少しセクシーにも聞こえた。
大人の女性にも興味を持ってもらえそう。
全て上手く進んで撮影も無事に終了し、密着カメラも一旦止まった。
そしたら、亮君がまた私のところに来てくれたんだ。
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