コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「覚えてる? 黒板に書いた約束」
紗季はうなずいた。「“また、ここで会う。”だよね」
「うん……。そのとき、実は私――」
葵が言いかけて止まった。そして、ふいに目をそらす。
「……あの頃、紗季のことが好きだったの。友達としてじゃなくて、本気で」
教室が、風の音だけになる。
紗季は一瞬、何も言えなかった。でも、それは驚きじゃなかった。なんとなく、ずっと気づいていた。いや、気づかないふりをしていたのかもしれない。
「……だったら、手紙渡してもいい?」
「手紙?」
紗季は胸ポケットから、少し折れ曲がった便箋を取り出した。葵が不思議そうな顔をして受け取る。
「私もね……葵のことが、好きだったよ」
葵の目が見開かれ、そしてゆっくりと潤んでいく。やがてふたりは、何も言わずに見つめ合い、ただそっと――手をつないだ。
その手の温もりが、約束の続きを照らしていた。