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朝の光は、
いつもより少しだけ白かった。
まどかは、
目覚ましが鳴る前に目を開けた。
胸の奥が、
静かに整っている。
昨日まであった重さが、
形を変えて、
そこにあった。
リビングには、
もう母がいた。
フライパンの音。
味噌汁の湯気。
いつもの朝。
でも、
今日は違う。
「おはよう」
「おはよう、まどか」
声は、
いつも通りだった。
だからこそ、
今、言わなきゃいけないと思った。
さやが、
制服姿で現れる。
鈴蘭学院の紺色。
その姿を見ても、
胸はざわつかなかった。
もう、
逃げないと決めたから。
朝ごはんが揃う。
全員が席についた、そのとき。
まどかは、
箸を置いた。
「……あのね」
一瞬、
空気が止まる。
でも、
誰も急かさない。
「鈴蘭学院、
行くことにする」
声は、
ちゃんと出た。
震えていなかった。
母は、
すぐには笑わなかった。
驚いた顔もしない。
ただ、
まどかを見る。
「自分で決めたの?」
静かな確認。
「……うん」
「そう」
それだけ言って、
母は小さく息を吐いた。
「なら、
応援するわ」
短い言葉。
でも、
まどかの背中を
ちゃんと支える言葉だった。
さやが、
まどかの方を見て、
少し笑った。
「来るんだ」
「……うん」
「そっか」
それだけ。
でも、
その声は、
うれしそうだった。
「無理しないでね」
さやは、
それだけ付け加えた。
「困ったら、
ちゃんと困っていいから」
胸の奥が、
じんわり温かくなる。
選んだ道が、
孤独じゃないと分かった。
朝食を食べながら、
まどかは思った。
世界は、
もう動き始めている。
でも、
怖さより先にあるのは、
静かな覚悟だった。
食器を片付けて、
家を出る準備をする。
いつもの朝。
でも、
もう同じではない。
玄関で靴を履きながら、
まどかは、
小さく深呼吸をした。
鈴蘭学院へ行く。
それは、
誰かに選ばれたからじゃない。
自分で、
一歩踏み出す朝だった。