和やかな団らんに、私は最初の緊張を忘れてしまっていた。誠実で優しい悠人を育てたご両親。私は、このご夫妻となら、義理の両親と嫁の関係が上手くいきそうな気がした。あまりにもいろいろ心配して、構えすぎだったなと反省した。
帰り際に、「穂乃果さんがお嫁さんに来てくれたら嬉しい」と、2人とも手を握って言ってくれた。すごく喜んでもらえて本当にホッとした。
「いらっしゃい。よく来てくれたわね」
私のお母さんが出てきた。
暗闇から明るい玄関に入った瞬間、お母さんは、悠人を見てかなり驚いたみたいだった。
「あらまあ! なんてイケメンなの。モデルさんみたい」
「いえいえ。初めまして、月城悠人と申します。今日はお招き頂き、本当にありがとうございます。お加減はいかがですか?」
「まあ、私の体のことまで心配してもらって、何だか申し訳なかったわね。もうすっかり良くなったの。ありがとう」
「それは良かったです。安心しました。お体、大事になさって下さい」
「ありがとう。優しいのね、月城さんは」
悠人は優しく微笑みながら、手土産の日本酒を差し出した。お酒は、お父さんの大好物だった。最近は年齢のせいもあり、あまり飲めなくなっていると悠人に話したら、口当たりの優しい本当に美味しいお酒を地方からわざわざ取り寄せてくれた。
私達は、廊下を歩いてリビングに向かい、ドアを開けて中に入った。
ソファに座っていたお父さんは、悠人を見てサッと立ち上がった。
お父さんまで緊張してるみたいだった。
こんなに落ち着きのないお父さんを見るのは、初めてかも知れない。
「さあ、座ってくださいね」
一通りの挨拶を終え、私達はまず食事をすることになった。お母さんお得意の和食が、テーブルに所狭しと並ぶ。
「ありがとうございます。すごく美味しそうですね。和食は大好きです」
「まあ! それなら良かったわ。お口に合うかどうか……」
「ありがとうございます。いただきます」
悠人はお母さんに勧められ、肉じゃがを1口食べた。
「美味しいです。こんな美味しい肉じゃがは初めて食べました」
「いやだわ、月城さんたら。そんなお世辞言っちゃって」
「僕は嘘をつきません。本当に美味しいです」
お母さん、悠人に褒めらてまんざらでもない顔してる。女性は料理を褒められたら、すごく嬉しいものだから。
私もそうだ。
たまに時間があれば、悠人のために料理を作ってるけど、必ず褒めてくれる。
高校生の頃かな……お母さんに少しずつ教わってたことが今になって役に立って、良かったと思えてる。
自分で料理は苦手だと思ってたけど、悠人に美味しいって言ってもらえたら、頑張って作ろうと思えるし、楽しくなってだんだん上達もしてきた。
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