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ーーあと30日。
【sv彡視点】
高校2年生の夏休み初日。
蝉の声が、窓の外から絶え間なく聞こえていた。
机の引き出しを整理していると、見覚えのない一冊のノートが落ちてきた。
薄い水色の表紙。
角は少し擦れていて、長い間しまわれていたものらしい。
表紙には、誰かの字でこう書かれていた。
『あと30日の夏休み』
「…何これ」
ぱらり、とページをめくる。
最初のページには、日付と一緒に短い文章が書かれていた。
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8月1日
今日からあと、30日。
貴方は、この夏の終わりに
大切な人を忘れる。
ーーーーーーーーーーーー
「…は、?何これ、」
思わず、ページを閉じた。
意味が分からない。
そもそも、今日は8月1日。
夏休みはまだ始まったばかりだ。
なのに、どうして――。
もう一度ページを開く。
次のページには、こう書かれていた。
ーーーーーーーーーーーー
8月2日
駅前の自販機でラムネを買う。
そして出会う。
ーーーーーーーーーーーー
「どういうことだ?」
まるで日記のようだった。
なぜ部屋にあるのか、
誰のものか、
いつのものか、
わからないまま
ノートを閉じた。
駅前で喉が渇いて、自動販売機の前に立った。
なんとなく昨日のノートを思い出して、ラムネを選ぶ。
カラン、と瓶が落ちてきた。
その瞬間。
「…それ、好きなんですかっ?」
声がした。
振り返る。
するとそこには、女の子が立っていた。
水色の長い髪をひとつに結び、
夏の日差しに目を細めながら、彼女は笑っていた。
「rnもそれ、好きですっ!!」
心臓が、変な音を立てたのは
気のせいだろうか_?
「rnも買おうかなぁ…」
「…いいんじゃない?笑」
そんな何の変哲もない会話をした後、
「今年の夏、楽しみですね、笑」
そう、話しかけてきた。
「…おぅ、!」
ただ夏休みへの期待と共に返事をした。
その瞬間。
昨日のノートのことが、頭をよぎった。
『駅前の自販機でラムネを買う。
そして出会う。』
偶然にしては、できすぎている気がする。
翌日。
8月3日。
俺はまた、駅にいた。
夏待駅。
名前に、少しだけ独特な響きがある。
そのため
この駅には、いくつかの噂もあるらしい。
そんな駅に併設された図書館で宿題をするのが、
夏休みに入ってからの俺の日課だった。
「あっ、」
昨日の女の子がいた。
「昨日のラムネの人ですか、?」
「その呼び方やめてよ笑」
「じゃあ…ラムネくん?」
変なあだ名をつけられた。
「もっとひどくなってるじゃん笑」
「むぅ…なんて名前なんですか?」
「…svです」
「sv彡!rnはrnです!!」
なんだろう。
この会話、
初めてじゃない気がする。
それから、よくrnとは駅で会うようになった。
最初は、本当に偶然の重なりだった。
でもある日、
「sv彡…、明日もここ、来ますか?」
「たぶん」
「じゃあ…また会えたらいいですねっ!」
始めて、約束をした。
8月11日。
ノートに書かれていることが、
毎日起こり続けていた。
約束を交わした昨日のノートには、
『8月10日
初めて、約束をする』
た書かれていた。
全て、rnとしていることだった。
そして今日のページには、
ーーーーーーーーーーーー
8月11日。
海に行く。
そして気づく。
その後、一緒に花火を見る。
ーーーーーーーーーーーー
と書かれていた。
「sv彡っ!!今日も会いましたね!笑」
「昨日約束したじゃん笑」
そう言うと、
rnは少しだけ目を丸くして、
「そうですねっ笑」
とても嬉しそうに笑った。
「sv彡、今日この後予定ありますか?」
「特にないけど…、?」
「じゃあっ…海…行きませんかっ!? 」
「…!」
やっぱり、ノートに書かれていた通りのことが起こった。
このノートとrnは関係があるのだろうか…?
とにかく俺は、
「いいよ。行こ!」
そう、快く返事をした。
「来ちまったよ…海、笑」
特に水着も何も持たずに、
ただ気のままに、海に来た。
「うわぁぁっ!!綺麗ですねっ!」
そう、rnはきらきら笑う。
「…そうだね。笑」
俺はその笑顔を見ると
胸がざわつく。
俺は、rnの笑っている顔が好きだ。
「おりゃっ!!sv彡!
もっとこっち来てくださいっ!!」
楽しそうにしているところが好きだ。
「やったな〜?笑
おりゃぁっ!!」
もっと顔を見ていたい。
明日も会いたい。
…いや、
明日だけじゃない。
これからも…ずっと一緒にいたい。
ドン__。
「わっ…!sv彡、!
花火ですよっ、!!!」
遠くで花火があがった。
「綺麗ですねっ…!」
「あぁ…だな。」
「なぁ…rn、」
「はいっ…?」
「このノート…知らない?」
「あっ…それは、」
ドン
ドン
ドン
赤。
青。
金色。
次々に花火があがる。
「…何もないです、笑」
rnは苦く笑った。
花火は終わり、
時刻はもう、夜。
海風が頬を撫でる。
少し湿った風には、ほんのりと塩の匂いが混じっていた。
「rn…また、どこかに出かけない?」
「…!いいですねっ!笑」
それからもずっと、
不思議なノートに書かれていることが
毎日起こった。
そして俺は、どんどん、どんどん
rnの色んなところに惹かれていった。
ーーーーーーーーーーーー
8月26日。
今日、ちゃんと話す。
ーーーーーーーーーーーー
今日のノートの内容は、こうだった。
「何を話すんだろ…?」
「ふぅ〜っ!宿題も一通り終わった〜!!」
俺は宿題を終わらせた達成感から
思わずぐぅっと伸びをした。
「あれ、rn何書いてるの?」
ふとrnの方を見ると、
薄い水色の表紙をしたノートに
何かを書いていた。
「あっ、あぁ…これですか、?」
「日記です笑」
「毎年、この色のノートに書いてるんです、笑」
その字には、見覚えがあった。
「あのノートの字と…同じ、」
毎年…、?
「な、なぁ…rn、」
「このノート俺の家にあったんだけどさ、」
「これ…rnが書いたの、?」
「…そうです」
「それは、去年の夏の日記です」
「…え、?」
俺は理解できなかった。
なぜなら俺は、去年、rnと会った記憶がない。
去年の夏のことを
覚えていない。
俺は急いで最後のページを見た。
ーーーーーーーーーーーー
8月31日。
貴方は私を忘れた。
今年も、
私を忘れた。
ーーーーーーーーーーーー
そこには、涙の跡があった。
「r、rn…」
「rnってこのノート…何冊くらい書いてるの、?」
「さぁ…笑」
「数えたことないですね、笑」
その答えが、一番苦しかった。
忘れたことさえ忘れていた。
何も知らない顔で、毎年また彼女に出会って。
俺は、何も覚えていなくて。
彼女が一人で抱えてきた時間を、俺だけが知らない。
それが、たまらなく苦しかった。
「ですが…貴方は毎年、私と楽しくて素敵な夏休みを過ごしてくれるんです、笑」
俺は…毎年rnとの記憶を忘れている_?
「rn…、!俺は…ッ 、
rnが好きだ ッ 、!!」
「好きな人のこと ッ 、
忘れるわけないだろ ッ 、!!」
「…sv彡、笑
ありがとうございます、笑
今年も ッ … 、rnのこと 、
好きになってくれて … 、笑」
「rnは、sv彡のこと、ずっとずっと
大好きですっ!!」
「…えっ、今年も、?」
それしか、言葉が出てこなかった。
彼女は静かに頷く。
去年も。
一昨年も。
その前も。
俺は、彼女と同じ夏を過ごして。
同じように笑って。
同じように好きになって。
それなのに――全部、忘れた。
胸の奥が、ぐちゃぐちゃになった。
悲しいのか。
悔しいのか。
怖いのか。
自分でも分からない。
ただ、
こんなに大切なものを、俺は何度も失ってきたんだ。
そう思った瞬間、息が苦しくなった。
泣けばいいのかもしれない。
怒ればいいのかもしれない。
彼女に謝ればいいのかもしれない。
でも、どれも違う気がした。
だって俺は、何も覚えていない。
覚えていないくせに、こんなにも苦しい。
そのことが、一番悔しかった。
夏休みが終わるまで、
今日を含めてあと6日。
俺は本当に…rnを忘れてしまうんだろうか_?
「でも、いいんです、笑」
rnがぽつりと呟いた。
「rnは、覚えているので、笑」
「sv彡が忘れても、rnだけは覚えていられるように」
「…なんで ッ そこまで 、ッ 」
rnは泣きそうな顔で言った。
「だって ッ …」
「rnは何度忘れられても、毎回sv彡のこと…好きになるから ッ 、笑」
「出会ってしまうから ッ 、笑」
「俺…忘れたくない。」
「忘れてしまっても、思い出したい。」
そうして俺は、rnと同じように、
来年の俺に向けて、ノートを書くことにした。
8月29日。
あと3日。
俺は、怖かった。
だけど、rnといたら、怖くなかった。
忘れるなら。
忘れてしまうなら。
それでも、今ここにある気持ちだけは本物だ。
だから最後まで一緒にいることにした。
写真を撮った。
海で。
駅で。
神社で。
くだらない顔をして笑い合った。
全部、残した。
8月30日。
あと1日。
俺は、rnと並んでノートを書いた。
ーーーーーーーーーーーー
8月30日
今日、彼女と最後の夏を過ごした。
明日、俺は彼女を忘れる。
でも――
もし忘れてしまっても、また好きになればいい。
ーーーーーーーーーーーー
「じゃあrn…また明日!! 」
「…はい ッ 、!」
8月31日。
目が覚めた。
カーテンの隙間から、朝日が差し込んでいる。
机の上に、二冊のノートが置いてあった。
一冊は、知らない女の子の字。
もう一冊は――俺の字。
ページをめくる。
海。
神社。
花火。
ラムネ。
知らない女の子と過ごした、30日間。
どれだけ読んでも、思い出せない。
顔も。
声も。
名前も。
何も。
なのに。
最後のページを見た瞬間、胸が痛くなった。
そこには、俺の字で書かれていた。
もし忘れてしまっても、また好きになればいい。
「……誰なんだよ」
答える人はいない。
ふと、机の端に置かれた写真に目が止まった。
そこには、俺と女の子が写っていた。
二人とも笑っている。
すごく楽しそうに。
俺は写真を裏返した。
裏には、日付と一言。
『30日間、ありがとう。』
なぜだろう。
その文字を見ただけで、涙が落ちた。
理由なんて、分からない。
ただ。
写真だけは、捨てられなかった。
二冊のノートも。
きっと、捨ててはいけない気がした。
窓を開ける。
夏の風が吹き込んできた。
蝉の声。
遠くから聞こえる電車の音。
そして――
どこか懐かしい、ラムネの匂い。
俺は空を見上げた。
真っ青だった。
嫌になるくらい、澄んだ夏空だった。
それなのに。
胸の奥だけが、どうしようもなく寂しかった。
俺は知らない。
この夏、誰を好きだったのか。
何を約束したのか。
どうしてこんなに、涙が止まらないのか。
――何も、覚えていない。
それでも。
机の上には、二冊のノートがある。
同じ夏を記した、違う字の二冊。
そして、その隣には。
二人で笑った写真が一枚。
俺はそれを、大切にしまった。
いつかまた、この写真を見たとき。
理由なんて分からなくてもいい。
ただ一つだけ。
この夏に、確かに大切な人がいたことだけは、忘れないように。
――夏休みが、終わった。
【rn彡視点】
8月31日。
貴方は、駅にいなかった。
いつものベンチ。
いつもの自動販売機。
いつもの夏待駅。
rnは一人で立っていた。
ポケットの中には、一枚の紙。
何度も折り畳んだせいで、端が少し擦れている。
そこに書かれている文字を、rnはもう何度見たか分からない。
“診断書
氏名:緑黄 sv
既往歴:――
記憶障害:――
初回発症:4歳”
紙を握りしめる。
今年も、忘れてしまった。
でも。
「… また来年 ッ 、笑」
rnは、笑った。
瑠夢 🍗🎧𓂃
るあ⭐︎ 🍑🌙💧
42
#ご本人様には関係ありません
うい
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コメント
13件
さいこうだったよ、笑 ちょ普通に涙止まんないからあんま長くは書けないわ笑笑
多分10年以上?恋をして忘れて、でもrnさんはそれを全部覚えてて、どれだけ辛かったんだろうなぁって思う…rnさんも、毎回初対面のように話して、毎回好きを伝えられて、また、夏まで会えなくなる。次にあった時はまた同じことの繰り返しで、ほんとに感動した!きっと、この先も同じ状況が永遠に続いてしまうのかなぁ、でも、svさん、いつか治るのかなぁ?治って欲しいよぉ!
🐸❄️ぁぁぁ😭 泣かせないでよぉぉぉ ❄️彡も🐸彡も辛いじゃんかぁぁ