テラーノベル
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春の空気は まだ少し肌寒くて 、 教室の窓から 吹き込む風が 、磯野はるかの前髪をそっと揺らす 。
「 …… ん 」
丸い眼鏡の奥の黒い瞳が 、教室の隅で 小さく瞬いた 。
誰にも気づかれないように 、そっと視線を前に戻す 。その視線の先には 、クラスで一番騒がしい存在 ーー 相川 渚 。
暗い青色の髪が光に照らされて 少しだけ艶めいている 。センター分けで整えられた髪型も 、彼のやんちゃさと 不思議と調和していて 、思わず見とれてしまう 。
「 …… また見てる …… 」
はるかは小さくつぶやいて 、机の下で指先を握りしめた 。
隣の席では 、女子たちが相川渚の話題で盛り上がっていた 。
「 ねえねえ 、昨日の放課後 、また渚くん 誰かに絡まれてたらしいよ 」
「 えー 、また? ヤバ …… でも 、かっこよくない? あの感じ 」
はるかは目を伏せた 。騒がしい話題には乗れない 。いや 、乗りたくても乗れないのだ 。自分がこの会話に加わったら 、場違いだとすぐに分かるから 。
だから今日も 、静かに 、目立たないように 。
… そう思っていたのに 。
ーー 不意に視線を感じた 。
顔を上げると 、前方の席から こちらを振り返っている 相川渚の目が 、はるかの視線と重なった 。
「 あっ …… 」
慌てて 顔を背けた 。心臓が跳ねる 。
( 見られた … っ )
渚がこちらを見ていた理由なんて 、わかってるはずがない 。 でも 、見られるだけで 、何かを読まれたような気がして 、はるかは いつも反射的に視線を逸らしてしまう 。
そんな自分に 、嫌気がさす 。
放課後 、はるかは そそくさと教室を出て 、一人暮らしのアパートへ帰る途中 、近くの書店に立ち寄った 。
BLコーナーの隅に座り込むようにして 新刊を選びながら 、心の中で渚の名前をつぶやく 。
( …… 最近の推しカプが 、ちょっとだけ …… 渚くんと似てるんだよね )
強気で 誰にでも当たりが強いのに 、実は 優しさが滲んでる 攻めキャラと 、自分の気持ちを隠して 大人しくしている 受けキャラ 。
その構図が 、どこか今の自分たちに重なって見えて ーー 。
「 …… バカみたい 」
はるかは小さく笑って 、本を手に取る 。レジを済ませて外に出ると 、 夕暮れの風が 少しだけやわらかかった 。
ーー 翌朝 。
はるかは自分で詰めた 小さなお弁当をカバンに入れて登校した 。卵焼き 、ミニトマト 、ウインナー 、それから 昨日の夜作った 鶏そぼろ 。彩りには 少し自信がある 。
教室に入ると 、また視線を感じた 。
( また ……? )
ちらっとだけ 、前の席を見ると ーー
やはり 相川渚がこちらを見ていた 。けれど 、今日は すぐには目を逸らさない 。
( …… 見てくる …… )
はるかの心臓が高鳴る 。これは妄想じゃない 。明らかに目が合っている 。そして …… 観察されている?
「 …… なあ 」
不意に 、渚が口を開いた 。
はるかは 、呼ばれたことに気づいていなかった 。
「 …… おい 、メガネ 」
「 えっ …… えっ 、ぼ 、僕 ……? 」
「 他に誰がいる? 」
渚は机に肘をついたまま 、少し目を細めた 。
「 ずっと思ってたんだけどさ 、お前 …… なんで目合った瞬間 、逸らすわけ? 」
「 …… っ 」
( 終わった )
はるかの頭の中で 、非常ベルのような音が鳴る 。
妄想がバレた? まさか? そんなわけない 。でも もしかすると バレてたかもしれない ……!
「 べ 、べつに …… そ 、 そんなつもりじゃ …… っ 」
「 嘘つけ 。毎回だぞ 」
渚は小さく笑った 。
「 なんか 、俺のこと嫌ってんのか? 」
「 ち 、違う 、ちがうよっ! ぜんぜん …… そんなこと 、ない 、です ……! 」
渚の目が 一瞬だけ丸くなった気がした 。
「 ふーん …… じゃあ 、なんで? 」
はるかは返事ができなかった 。できるわけがなかった 。
『 だって 、君のことばかり考えてるからです 』
なんて 、言えるはずがない 。
渚はそれ以上 追及しなかった 。ただ 、少し興味ありげにこちらを見つめたまま 、 ふっと鼻で笑って 席を前に向けた 。
「 …… ま 、いいけど 」
その背中を見ながら 、はるかは胸を押さえた 。
息が 、うまくできない 。
でも 、少しだけ …… ちょっとだけ嬉しかった 。
( 僕のこと 気にしてたんだ …… )
はるかの頬が 、ほんのり赤くなった 。
:磯野 はるか ( いその はるか )
受け
クラスで 一番目立たない陰キャ 。
髪は少し長めの黒髪で 、丸い眼鏡をかけている 。
黒色と淡い水色が好き 。
趣味は BL本を読むこと 、妄想すること
恋愛対象: 男
肌の手入れなどしていて 、女子力が高い
料理やお菓子作りが上手くて 、自分で弁当を作って 学校に持って行っている 。
だが それ以外の家事は苦手 、この歳で 一人暮らしをしている 。
:相川 渚 ( あいかわ なぎさ )
攻め
学校で一番のヤンキー 。陽キャでもある
暗い青髪で 、センター分け 。
ヤンキーだけど 自分と関係ない人には優しい 。関係のあるやつには いつも喧嘩腰 。
暗い青色と白色が好きで 、
趣味は 喧嘩と妄想 。
恋愛対象: 男
料理が苦手で 、その他の家事は得意 。
母親と二人で暮らしている 。
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