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【 不審者 】
「そういえば、最近不審者が出たらしいですよ 」
「へえ。暖かくなると変な人増えるよね」
「ただの変な人ならいいんですけど、最近、近くの小学校の僕と同い年の子が行方不明になったらしくて。明日から集団下校なんです」
「……え?」
昔から、幼い子の誘拐事件というのはよくあることだ。いや、あってはいけないのだけれど。警戒心も抵抗力もない子供たちを狙うのは本当に極悪非道だと思う。
……どうしよう、誘拐とかされちゃったら。
蒼井に限ってそれはないという気持ちと、身体は子供だから有り得てしまうという気持ちが混同する。
「会長?なんか顔やばいですよ」
「ああ、いや、なんでも……。蒼井も気をつけてね」
「はい。ちゃんと防犯ブザーも持ってますし大丈夫です」
ずい、と僕の目の前に防犯ブザーを突き出して、心做しか誇らしげな顔をしている蒼井を見て更に不安になる。もし中身年齢の高い自分は大丈夫と高を括っていたりしたら……。……有り得るな。蒼井はそもそも自身の容姿に自信がある方ではないし、自分は狙われないだろうとか思ってるかもしれない。ああ、考えれば考えるだけ不安になってきた。
「……ねえ蒼井、僕学校まで送ろうか?」
「は?いや要りませんよそんなん」
「危ないじゃん、もし誘拐されたりしたらさあ……」
「可能性は勿論ありますけど……でも嫌です」
「ええ〜……」
拒否されてしまった。まあ大丈夫かなあ、蒼井だし。うん、大丈夫。大丈夫だと信じよう。
午後3時半頃。会長の家に行くために家を出て、5分ほど歩いたところで、知らないおじさんに声をかけられた。最近言われてた不審者コイツだな、絶対。
「ね、ねえ僕、おじさんトイレ行きたくてさ、み、みみ、道案内してくれない?」
「ごめんなさい、知らない人と話すのは駄目って言われてるので、他の人に聞い……」
「そんなこといわないで、お願い。き、君しか頼めないんだよ。おお、おじさんのこと助けて」
「……っ、離してください!そ、そこらへんのコンビニにでも行けばありますよ!」
腕をガシッと思い切り掴まれて結構痛い。顔を見ると、なんだか僕の顔ではなく身体を見ているような気がして、それがさらに気色悪さを掻き立てる。どうせトイレに連れ込むか何かするんだろ。気持ち悪いな。
「……ああもうめんどくさいヤツだな。大人しく着いて来いよ」
「いっ……。行きません、嫌です!」
防犯ブザーの紐を引っ張る。が、すぐに止められてしまって意味が無い。
「家に行けば君の友達も沢山いるんだから、ね?大人しくしろよ」
「そ、それってどういう」
「言葉通りだよ。向こうにおじさんの車あるんだ。車の中に君の好きなお菓子やゲームたくさんあるから大丈夫だって。ね、行こ?」
腕を乱雑に引っ張られる。痛いけど、絶対行っちゃいけない。そう思って耐えていると、段々男の語気が荒くなって、腕を握る力も引っ張る力も強くなっていく。
「……蒼井?」
「か、かいちょ、っ」
「あ?誰だよ」
「その子に何してるんですか?痛がってるように見えますけど」
「いや、その、……チッ、」
「いたっ、!」
腕が解放され、その弾みで地面に吹き飛ばされた。男は走って逃げていった。あの言い草、きっと行方不明だという子もアイツの家にいるのだろう。
「……逃げたか。蒼井、大丈夫だった?」
「はい、なんとか……。あの、アイツ逃げちゃったけど大丈夫でしたか?」
僕は会長に、行方不明の子はアイツのところにいる可能性があることを話した。そうすると会長は貼り付けたいつもの笑顔でスマホを取り出し、僕に画面を見せてきた。液晶に映っていたのは、先程の連れ去られそうになった僕の映像。音声もバッチリ入っている。成程、これを警察に見せるのか。
「取り敢えず、警察行こっか。そこで手当もしてもらおう。」
「はい」
警察に行って事情聴取を受けた後日、男は逮捕されたそう。誘拐された子は特段大きな怪我もなく無事だと言われ、心底安心した。男は余罪も多かったらしく、僕らが大人になるまでは出て来れないそう。ハッ、ざまあみろ。
僕はと言うと、事情聴取が終わった後病院に送られ、あと少し助けるのが遅れていたら脱臼していたかもしれない、と言われた。危なかった。それを話した時の、会長の苦虫を噛み潰したような顔が、あまりにも珍しくて忘れられない。
だからなのか帰り道に、もっと早く助けてあげられたらよかったのに、と何回も言われるから参ってしまった。心配してくれているのはありがたいけどさ。
後日。
「ねえ蒼井〜、やっぱり僕車で学校まで送り迎えするからさあ」
「嫌です。あれはたまたまですから」
「そう言って油断してるから、この前だって危ない目にあったんでしょ?」
「う……と、とにかく!そんなの目立つから嫌です!」
「え〜…。じゃあせめてGPS……」
「キモい方向に行ってますよ。傍から見たらアンタが不審者です」
コメント
4件
確かにそれは源輝が不審者だわ 血縁でも義理の家族でも無いのにGPSは普通に草過ぎる てか防犯ブザー見せ付けてる小学生姿の蒼井茜尊過ぎて⚪︎ぬんだけど 中身変わって無いな〜とか思いながら見てたから中身も少し幼くなってると知って心打たれた…きっと学校の子達と話してるうちに少しずつ小学生のように中身が矯正されていってるのだろう… ん?蒼井茜が大人になると源輝はどうなっているんだ… それに源輝の老人姿は想像付かん 葬送のフリーレンのヒンメルの様にイケた老人になるのだろうか それはそれで嫌だな 老人になるぐらいなら今のイケメンのうちに美しく朽ち果てて欲しいものだ 蒼井茜が高校生になって成人した頃に犯人が釈放されるのだとしたら蒼井茜は護身術を身に付けて犯人に勝ってしまい会長はもう要らない、次は僕が会長を守る側だって立場逆転してしまうのだろうか…苦しい やっぱり三十路というまだ誰にもおじさんなんて呼ばれないうちに朽ち果てて欲しいものだ 蒼井茜はそのことをずっと忘れないで高校生になって苦しくなり自⚪︎して源輝は蒼井茜の一つ年上で転生しかもめ学園でもう一回生徒会をしてまた蒼井茜が死んでってループしてしまう世界線だと面白いな 気付いたらこんな長文にっ 誠に申し訳ございませんでした 次の作品待ってます面白かったです尊いです。