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その週末、Kaynaの呼びかけで、小さな交流イベントが開かれることになった。場所は広めの市民ホール。特に目的はないけれど、気軽にお茶をしながらおしゃべりしたり、音楽を聴いたり、ボードゲームを楽しんだり……そんな、ゆるく楽しい時間。
「……edamimi、来てるかな」
ホールの扉を開けながら、Candelavraは小さく呟いた。胸の奥が少しざわつくのは、Edamimiがそこにいるかもしれないと思うから。いや、いてほしいと願ってしまっているから。
中に入ると、奥のソファ席で、Kaynaがみんなと談笑しているのが見えた。
「おっ、来たね〜Candelavra!こっちおいで!」
「うん。ありがと、Kayna」
ふと目を横にやると――いた。
壁際のスツールに、Edamimiが静かに座っていた。大きなヘッドホンを外し、少し毛をかきあげながら、紅茶を口に運んでいる。その仕草が、Candelavraの目にはとても綺麗に映った。
(……行かなきゃ。今日こそ、ちゃんと話したい)
ゆっくり、歩みを進める。
そのとき。
「お、オレの出番か?」
どこからか、ニヤッと笑うGnarlsが現れて、Candelavraの背中をぽんっと押した。
「ひゃっ……ちょ、ちょっと!」
「大丈夫だって、落ち着けって!」と笑うGnarlsの後押しに、なぜか勇気をもらって、CandelavraはゆっくりとEdamimiに声をかけた。
「Edamimi……あの、一緒にボードゲーム、しない?」
その一言で、Edamimiの動きがぴたりと止まった。瞬間、頬が染まる。
「えっ……あ、う、うん、いい…けど……」
ぎこちない返事。でも、断られなかっただけで、Candelavraの心は少し跳ねた。
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ボードゲームは、定番の「ジェンガ」。
二人きりのテーブルに向かい合って座ると、最初に緊張を破ったのはCandelavraだった。
「……Edamimiって、こういうの得意?」
「えっ?あ、あたし? う、うーん……まぁ、そこそこ?」
「ふふっ。……なんか可愛いな」
その言葉に、Edamimiは目を見開き、思わず手元のブロックを落としかけた。
「っ……! い、いまの……」
「え、なにが?」
「なっ、なんでもないっ!」
(ああ、ダメだ。近すぎて、視線合わせらんない……!)
けれど、どこかで安心している自分もいた。目の前のCandelavraが、笑ってくれている。それだけで、心がふわっと軽くなる気がした。
ゲームが進むにつれて、ふたりの会話は少しずつほぐれていった。時々ふと目が合って、どちらかが笑って、もう片方が照れる。そのたびに、空気が少しずつ、甘く、あたたかく変わっていく。
そしてふいに、ふたりの指先が――重なった。
最後の一手で、同じブロックに手を伸ばしたのだ。
「……あっ」
「……」
沈黙。
でも、その沈黙を破ったのは、静かな笑い声だった。
「……Edamimi、手、あったかいね」
Candelavraの声は、小さくて、でも優しくて。
Edamimiの鼓動は、耳の奥でドクンと跳ねた。
「あたしのほうこそ……びっくりした」
その一言に、Candelavraはふっと微笑んだ。
その笑顔は、Edamimiが今まで見た中で、いちばん近くて、いちばん綺麗だった。
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