テラーノベル
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翌朝、カーテンの隙間から差し込む強烈な朝日に目を覚ました。
昨夜の凌先輩との出来事、そして先生の含みのある言葉。色々なことが頭の中を駆け巡って、結局あまり眠れなかった。
「……おはよう、紗南ちゃん。あら、あんた随分と隈がひどいわね」
食堂へ向かうと、成瀬先輩が大きなトレイを持って立っていた。
驚いたのはその様子だ。いつもなら「先生、おはようございます!」と一番に駆け寄るはずの彼女が、遠くで部員に指示を出している先生をチラッと見ただけで、すぐに視線を逸らしてしまった。
(やっぱり、昨日の夜、何かあったんだ……)
成瀬先輩はどこか上の空で、お味噌汁を自分のトレイではなくテーブルに置きそうになっている。
「……おい、紗南」
背後から、低くて機嫌の悪そうな声がした。
振り返ると、髪を乱したままの遥が、ジャージのポケットに手を突っ込んで立っている。その目は、明らかに寝不足の私を不審げに睨んでいた。
「昨日、あの後……兄貴と何話してたんだよ。なかなか部屋に戻ってこなかっただろ」
「あ、えっと……それは、先生に仕事のミスを怒られてて……」
「嘘つけ。先生の後は、兄貴と一緒にいただろ。踊り場にココアの空き缶が二つ置いてあったぞ」
遥の洞察力は、こういう時だけ無駄に鋭い。
言い淀んでいると、そこへユニフォームに着替えた凌先輩が、爽やかな足取りでやってきた。
「おはよう、二人とも。遥、朝から紗南ちゃんを困らせちゃダメだよ」
凌先輩は昨日と変わらない笑顔で、私の肩をポンと叩いた。
「さあ、今日は遠征組との練習試合だ。紗南ちゃん、僕たちのサポート、よろしくね」
凌先輩の余裕のある態度に、遥はさらに顔をしかめる。
その時、食堂に先生の鋭い笛の音が響いた。
「全員整列! 朝食後、15分でコートに集合だ。遅れた奴は試合に出さん!」
先生の怒声。動揺を隠せない成瀬先輩。そして、火花を散らす兄弟。
合宿二日目。波乱の練習試合が始まろうとしていた。