テラーノベル
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「今日は残業か?才木」
「ええ」
デスクでパソコンとにらめっこしていた才木の背後から声が落ちる。
振り向くと、帰り支度をした陣内が立っていた。
「まだ終わってねぇのか」
「想像以上に資料が多くて」
「要領悪いな」
ため息混じりに言いながら、陣内はデスクの横に立つ。
「では、そんなかわいそうな後輩には良いものをあげましょう」
「良いもの?」
ふと、ふわりと甘い香りがする。香りの元は陣内が手にしている紙袋からしているようだ。
「ほれ」
陣内から乱暴に紙袋を手渡される。
「…これは」
「今日バレンタインだろ。…まあ、あん時色々世話かけたからな」
紙袋を覗くと、チョコがかかったドーナツが三つ入っていた。
チョコレートの甘い匂いが、静かなオフィスに広がった。
「いいんですか?ありがとうございます」
「おう。じゃあ俺は帰るわ」
「はい。また明日」
陣内は手をひらひら振って、そのままさっさとオフィスを出ていった。
静かになったデスクで、才木は袋を机に置く。
すると、腹の音が鳴る。ちょうど陣内からもらったチョコドーナツがあったので食べようとした
その時、才木の能力——サイコメトリーが発動する。
視界に映像が流れ込んできた。
黒いエプロンをつけた陣内が、キッチンでドーナツを揚げている。
出来上がったものを… あ、つまみ食いしてる。
映像に思わず笑みがもれる。
「いただきます」
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