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続き
kzsm
地雷さん回れ右
夜、家に戻る。
扉を開けると、靴も揃えずに置かれた一足のスニーカー。
「……帰ってきてたのか」
台所から、カップにコーヒーを注ぐ音が聞こえる。
その音が、やけに優しく響いた。
「おかえり、志摩ちゃん」
久住は、あいかわらず他人の家に居るって感覚がない。
勝手に風呂に入り、勝手に飯を作る。
勝手に――俺の心の中まで、入り込んでくる。
「今日も、何もなかったん?」
「……あぁ。何も、ない」
嘘だった。
久住の居場所を問い詰める声が、今日も耳に残ってる。
だけど、口には出さない。
出せなかった。
ソファに座ると、久住が自然と隣に腰かけてくる。
すぐに身体が触れる距離。
「……なあ」
「ん?」
「なんで…お前を警察に突き出せないんだろうな、俺」
久住は少し笑った。悪びれもせずに、ただ笑った。
「そら、もう堕ちとるからやろ。俺に、じゃなくて――自分にや」
志摩はその言葉に、思わず目を伏せた。
何よりも鋭い凶器みたいなその一言が、胸の奥を貫いた。
「……いつから、だと思う?」
「さぁ? 最初からちゃう?」
久住は冗談のように言うけど、どこか本気だった。
「警察なんかやってても、何も守れてへん。
正義振りかざして、誰一人救えた試しもない。
そうやろ、志摩ちゃん?」
反論できなかった。
久住の言うことは正しくて、だからこそ悔しい。
そして、何より――
その正しさに惹かれてしまっている自分が、恐ろしかった。
「……俺、おかしくなってるのか?」
「おかしくなってるんやない。やっと、正直になってるだけや。
ずっと抑えてたやろ? “普通の人間”でおろうとして」
「……っ」
久住の手が、ゆっくりと志摩の頬に触れた。
「もうええねん。全部捨てて、俺の方に来たらええ」
その指先が熱くて、優しくて、冷たい皮膚の奥にまで染みてくる。
気づけば、志摩は目を閉じていた。
抵抗も、拒絶もなかった。
「もう……逃げられないな、俺」
「せやろ。せやから言うたやん。堕ちるんは、あんたの方やって」
久住がゆっくりと唇を重ねてくる。
そのぬくもりの中に、罪と快楽と破滅の匂いが混ざっていた。
志摩はそれを、何のためらいもなく、受け入れた。
自分用すぎる!!!!こーゆーの大好きさ!!
めっちゃ溜め込んでるからたくさん投稿できる!