よくあるパターン。涼ちゃん体調不良。
なんだか頭がボーっとする。
妙なダルさを感じ、体温計で測ってみると38.7℃と表示される。
急に寒くなったから風邪ひいちゃったかな。とりあえず寝よう、とベッドに潜り込む。
明日は確かレコーディングの打ち合わせが入っていたはず。
俺が風邪だとわかったら元貴はお見舞いにくるとか言い出しそうだ。元貴に風邪なんかうつしたりしたら大変な事になってしまう。
明日までに回復してるといいんだけどなぁ。そう思いながらうつらうつらと眠りについた。
「あれ?涼ちゃんまだ来てないの?」
集合時間を15分過ぎて慌てて仕事場に飛び込んだ俺は、全員の顔を確認してからそうたずねる。
「ああ、涼ちゃん風邪ひいたから今日は参加できないってさ」
「今風邪流行ってますもんね〜」
涼ちゃんが風邪…。でも俺には何の連絡もきていない。
なんとなくムッとする。
恋人なんだから一番最初に連絡くれてもおかしくないのに。
「まぁ今日は打ち合わせだけだし、ゆっくり休んで早く元気になってもらいましょ。さぁ、さっさと始めるよ」
なんとなく気分が乗らないまま打ち合わせは進んでいった。
「おい、元貴」
こんっと後ろ頭を軽く小突かれる。振り返ると若井が苦笑いしながら立っていた。
「お前、涼ちゃんいないからって機嫌悪過ぎ」
「だって…」
「風邪なんだから仕方ないだろ」
「でもさぁ、俺に何の連絡もなかったんだよね。恋人なんだから一番に頼ってくれてもいいのに」
俺はそんなに頼りにならないと思われてるんだろうか。
「ああ、それで機嫌悪かったのね。元貴に言ったらお見舞いに来ちゃうと思ったんじゃない?元貴にうつったら…ってさ」
確かに涼ちゃんが考えそうな事だ。
『風邪ってきいたけど大丈夫?』と休憩の間にLINEを送ってみるとしばらくして『大丈夫だよ。心配してくれてありがとう』と返事がきた。
『熱酷いの?』『昨日38.7℃だった。もう今はずいぶんマシになってきたんだけど念のため休ませてもらったんだ』『お見舞いに行こうか?』『うつったら大変だから元貴は来ちゃダメだからね』
LINEのやり取りは続く。『俺、身体丈夫だから大丈夫だよ』『元貴にうつったら仕事進まないでしょ。絶対来ちゃダメだよ』
そのままLINEは終わってしまった。
でも、来るな来るなと言われるとよけいに行きたくなってしまう。
熱もたいした事ないって言ってたし…。俺は仕事終わりに勝手に突撃をかける事に決めた。
「涼ちゃん〜。入るよ〜」
そう声をかけながら渡されていた合鍵を使って勝手に涼ちゃんの部屋に乱入する。
「えっ、元貴?…やっぱり来ちゃったか」
涼ちゃんは額に手を当てて、あちゃ〜とつぶやく。
「へへっ、お見舞いに来ちゃった」
「あれだけ来ちゃダメって言ったのに。風邪うつっても知らないよ」
「大丈夫。俺、体力には自信あるんだって」
体力がなければあんな長時間ライブで歌い続けられるわけがない。
「涼ちゃんは寝ててね」
俺はキッチンに向かい、冷蔵庫にコンビニで買ってきたものを入れていく。
「食べやすそうなプリンとかゼリー買ってきたから食べられそうなら食べて」
「ありがとう。今は食欲ないから後で食べるよ」
涼ちゃんはお礼を言いながらベッドに腰掛けた。
「寝てなくて大丈夫?」
「うん。朝よりずいぶん熱も下がってきたし、もうほぼ復活なんだけど、みんなにうつしても悪いし、無理して長引くのもやだから休ませてもらったんだよ」
「じゃあ、お見舞いに来ても良かったんじゃん」
「俺ならともかく元貴にうつったら被害甚大!仕事進まなくなってみんなに迷惑かけるだろ」
そうため息をつく。
俺の心配、と言うよりスタッフやみんなに迷惑をかける事を心配していたようだ。
「俺の事心配してくれたんじゃないんだね。それに俺には体調悪いなんて連絡もくれないしさ。俺ってそんなに頼りない?」
「ちっ違うって」
「やっぱり誰よりも一番先に連絡して欲しかったよ」
「…ごめん」
ちょっとすねてみせる俺にシュンと凹んでいる涼ちゃん。
「じゃあ、もし俺が病気で寝込んだら看病してくれる?」
「もちろん付きっきりで看病するよ。ってかそんな縁起でもない事言わないの!」
涼ちゃんのその言葉に満足して機嫌をなおす。
風邪なのにいちゃついてていいのかという突っ込みは見逃してください😅
コメント
5件
風邪の時は甘えたくなるし、甘えさせたくなる…(*´﹃`*)
風邪ひいても可愛いჱ̒✧°́⌳ー́)੭ 拗ねちゃうもっくんも良き