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合戦でこの世を離れて幾許経つだろうか。気が付いたら天上人のような格好をした男の後ろに立っていた。どうやら仏様に守護霊として遣わされたらしい。
しかし俺が護るこの男、太り過ぎだ。こんな奴は戦ですぐおっ死んじまうだろうな。守護霊としての仕事は案内人みたいなもんだ。霊としての現世の勝手は俺にも分からぬが、導きはどうやら出来るようになっている。不思議なもんだ。
この日も、俺が看ているこの男は迷い上げた。牛要らずの動く箱に乗るだけのことを俺が随分と骨を折った。俺の方がこの時代でじゃないかと生きていけると錯覚するぐれえだ。ブツブツと独り言を言っちまってるが、それは俺にも周りの人間にも向けられてない。
しかし、この箱の乗物ってのは便利だ。何人もの人様が中に入って、しかも動いてる。その中でも、俺が憑いてる男は浮いていた。隣の女子が明らかに嫌な顔をしているのに、おもむろに臭い飯を取り出し汚え食い方してやがる。作法がなっちゃいねえ。
俺は腹は空かないように出来ているが、匂いや暖かさ冷たさは分かる。この箱の中は冷てえ。おそらく駅家だろう。
箱は止まり、ちょいとばかしの暇みてえだ。俺は男から離れられないからついていく。ところがこの男がまた飯を食らう食らう。戦もねえのに何俵食うんだ。
次第に苛立った俺は頃合いを見て、こいつの頭を叩き戻るようぶっ叩いた。そしたら男は何やら腕の方の数珠みたいなのを見て慌てて戻ってった。再び箱の中に戻り椅子に腰掛ける。
しかし、鉄砲の弾も出ねえぐらいの時間が経ったうちに男の様子がおかしくなった。顔が青く、馬のように震えてる。何事だと俺が見当もつかないうちに男は叫び声を上げた。
「もぉダメェ!!我慢できないナリ!!漏れちゃうナリィィィィィ!!(ブリブリブリドバドビュパッブブブブゥ!!!!!ジョボボボボジョボボボ!!!!!!!ブバッババブッチッパッパッパパ!!!!!!」
俺が生きていた時に居た戦場ですら聞いたことのない叫び声がこだました。