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「メリークリスマス!涼介くん!」
「ん〜…、わっ、雪乃!?」
「プレゼントくれないと悪戯しちゃうぞ!」
「それ、ハロウィンじゃ…」
「まぁいいじゃんっ!」
「早く起きて、プレゼント買って!」
「はいはい…」
雪乃の優しい声。可愛らしい顔。憎めない性格。
全てが好きだった。
雪の日の朝はよく冷える。
朝に煙草を吸う事を日課にしていたが、外は寒くてベランダには出ていられない。
「う…さっぶ…」
冬になると、よく雪乃の夢を見る。
毎朝キッチンには雪乃がいて、よく珈琲を差し出してくれる。
…嗚呼、なんていい夢なのだろう。
「ゴミ出しの日…、今日だったな……」
昨夜サボっていたせいで、朝出す羽目になってしまっていた。
こんな時、雪乃ならどんなことを言うだろうか。
「バチが当たったね」か、「一緒に出しに行こう。」か。
そんなことを思いながら、上着を着て、サンダルを履いて外に出た。
「あっ、齋藤さぁん!」
気持ち悪い声が、背中の方から聞こえる。
「…小峠さん。おはようございます。」
「もうっ、‘愛’って呼んでくださいよぉ」
「嗚呼、ごめんね、愛さん。」
「‘愛ちゃん’、でちょっ?…あっ、あたしってば噛んじゃったぁ!」
苦笑いで返すと、僕はそそくさと道を歩いた。
僕は浮気なんかしない。そう決めている。
「涼介くん、ピアス開けない?」
その話はいきなり始まった。
「なんで。」
「お揃いのつけたいから!」
そんなことを言いながら上目遣いする彼女には勝てなかった。
1回だけな。と僕は何度も何度も何度も何度も彼女を甘やかしていた。
なのに、彼女は僕を甘やかしてはくれなかった。
よく寒かったあの日から、彼女は僕に姿を見せないままだ。
「よし、ゴミ出し完了…」
そういうと僕は部屋へ戻る。
今日は祝日。行けるところまで寝てしまおう。
そんなことを考えていると…
「あの…」
後ろから、聞きなれない声がした。
「はい?」
僕は首だけを後ろに振り向いた。
「今だけ、助けてくれませんか」
女の子は僕に助けを求めてきた。
「今、知らない男の人に追われてて…!」
祝日の朝だっていうのに、世間は忙しい。
そんなことを言えるわけがなく、中へ入れることにした。
「いいですよ。中へ。」
「ありがとうございます…」
彼女は少し震えていた。
「…大丈夫ですか?もしかして、寒いとか…」
「あ、いえ…、少し、怖くて…」
それもそうだろう。知らない男なんかに追われて、怖がらない女の人はそうそういないだろう。
「珈琲、飲めますか?他に希望とかあれば出しますよ。」
「え、あの…お気遣いなく…」
「そういう訳にも行きませんよ。女の子を察するのが、男の務めです。」
そんなダサいことを言って、しゃがむ。
「さ、なんでも。」
「…チョコレートが、いいです。」
僕は少し驚いた。
雪乃と好きな物が同じだったから。
「…分かりました。今、出しますね」
僕は、一つ一つ袋に丁寧に包められたチョコレートを何個も取りだし、女の子に出した。
「君の名前は?」
「…雪那、です。」
「ゆき…な…?」
「…どうかしましたか?」
「…あー、ううん。なんでもない。」
驚きが隠せなかった。
ユキナという名前は、ユキノを関連づける名前だったからだ。
「…もう行ったと思います。」
「そう?なら、よかった」
「あの…お礼をさせてください、!」
「え、あー、いや、大丈夫だよ」
「そういう訳にも行きませんので!」
強気で僕のことを押したあと、雪那は自分のスマホを取りだし、メッセージアプリのQRコードを見せてきた。
「はい、読み取ってください!」
そう言われるがままに、しぶしぶ読み取った。
「じゃあ、私はこれで。」
そういうと彼女は、ありがとうございました。と行って彼女は部屋を出た。
「…ごめん、雪乃。」
そう言いながら、俺はスマホを強く握った。
「でも、浮気なんてしないよ。約束、だろ。」
窓の外では、しんしんと雪が降っている。