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翌朝、伊織は目覚めても、昨夜の藤堂の支配的な愛の痕跡と、再び藤堂の独占的な世界に戻ってしまった現実から逃れられずにいた。伊織が自分の意思で藤堂に縋り付いた瞬間、渚とのすべてが終わったことを悟っていた。藤堂は、伊織に朝食を与え、キスで何度も「俺のもの」であることを再確認させた後、ホテルに伊織を残して、一人で外出した。
「伊織はここで大人しく俺を待っていろ。俺の可愛い子を傷つけた報いを、はっきりつけに行ってくる」
藤堂の目は冷徹だった。伊織の逃亡計画を完全に打ち砕いた今、彼の最後の目的は、伊織の心にまだ残る渚の痕跡を完全に消し去ることだった。
藤堂は、伊織が隠し持っていた紙ナプキンの住所を頼りに、藤井渚が住んでいるところの近くのシェアハウスへと向かった。
藤井がドアを開けると、目の前には、伊織を失った怒りと、勝利の確信に満ちた、冷酷な表情の藤堂が立っていた。
「久しぶりだな、転校生」
藤堂のその声には、一切の温かさがなかった。藤井は、ドアを開けた瞬間に、自分の敗北が決定づけられたことを悟った。
「何の用だ、藤堂くん。もう、私には用はないはずだろ」
藤井は、気丈に振る舞おうとしたが、声が震える。
藤堂は、強引にドアを押し開け、藤井の部屋に足を踏み入れた。
「用があるさ。俺の可愛い伊織に、二度と連絡しないという、宣誓書を書いてもらおうと思ってな」
藤堂は、藤井の部屋を見渡し、乱暴に藤井の腕を掴んだ。
「お前は、俺の伊織に『自由』などという、くだらない幻想を植え付け、俺たちの愛を壊そうとした。その罪は重い」
藤堂は、藤井の華奢な体を容赦なく壁に押し付けた。
「俺は、女だからと手加減はしない。お前が伊織にしたことは、俺にとって最大の裏切りだ」
藤堂の力は凄まじく、藤井は抵抗する間もなく、藤堂の力に支配された。
「やめろ……もう、伊織くんは、君の元に戻ったんだろ!」
「戻った? 違う。俺が戻してやったんだ。お前のくれた『自由』が、いかに薄っぺらなものか、伊織にわからせてやった。そして、お前がどれだけ、伊織の人生の邪魔だったか、今からお前にわからせる」
藤堂は、藤井の胸倉を掴んだまま、顔を近づけた。藤井は、藤堂の瞳の中に渦巻く、純粋な狂気を見て、恐怖に目を見開いた。
「もう一度、伊織に連絡してみろ。お前のすべてを、この街から消し去る。お前が二度と、伊織の記憶にすら上らないようにしてやる」
藤堂の威圧は、肉体的にも精神的にも限界を超えていた。藤井は、伊織への想いも、自尊心も、全てを藤堂の力に粉砕された。
「わかった……もう、しない。二度と、伊織くんには会わない。連絡もしない」
藤井の瞳から、諦めの涙がこぼれ落ちた。
「もう……本当に、やめてくれ。私の負けだ。伊織くんは、君のものだ」
藤堂は、藤井の降参の言葉を聞くと、冷酷な笑みを浮かべ、ようやく藤井の胸倉から手を離した。
「最初から、そうしていればよかったんだ。これで、伊織の心の中から、お前という毒は完全に消え去る」
藤堂は、乱暴に部屋を出て行った。残された藤井渚は、壁にもたれかかり、ただ静かに泣き続けた。藤堂の復讐は完遂され、伊織を巡る三角関係は、藤堂の絶対的な支配によって、終結したのだった。