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#成長
ももは
551
#女体化
足将軍
1,306
11
―――六年前のあの日。
肌を刺すような冷たい春の夜。
あの満月に照らされ、バドは“道”を誤った。
六年前。
まだバドが、殺し屋になって間もない頃のことだ。
「……いないな」
バドは小さく呟き、夜の街を歩いていた。
新米の彼が追っている標的は、 決まった拠点を持たない厄介な男だった。
その上、単独行動。
居場所を掴むのは想像以上に難しかった。
「今日はもう帰るか……」
二、三時間探し回ったが、手がかり一つ掴めない。
さすがに諦めようとした、その時だった。
ふと視線が、あるものに吸い寄せられる。
街並みから少し離れた場所に佇む、古びた廃墟だ。
その姿は、青白い満月の光を浴びて静かに浮かび上がっていた。
「最後に……あそこだけ見てみるか」
もともと目を付けていた場所ではない。
ただの思いつき。
いわゆるダメ元だった。
しかし、妙な胸騒ぎが彼の足をそこへと引っ張っていく。
まるで最初からそこにいくことが決まっていたように。
バドは抗うことなく、廃墟への道に足を進めていた。
軋む音を立てながら、バドは廃墟の中へ足を踏み入れた。
建物の中。
そこには、薄暗く、湿った空気が漂っていた。
窓には、ヒビが入っていて、そこから差し込む月明かりだけが、廃墟の内部を照らしている。
バドは、深く息を吐き藍色の瞳を閉じて、神経を研ぎ澄ませる。
(…人の気配がする)
息を呑んだ。
(…標的の男…かもしれない)
バドは、気配がする方に向かって歩き出す。
静に。
一歩ずつ。
「……いた」
崩れた柱の陰に、人影が見えた。
それは、バドが探していた標的の男であった。
相手はこちらに気付いていない。
バドは、男の死角へ回り込む。
そして――。
一瞬だった。
鋭く、正確に。
ターゲットを仕留める。
男の体が、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
バドは男の死を確かめ、背を向ける。
自分の役目は終わった。
あとは、この冷たい闇に紛れて立ち去るだけ。
そう思って、 バドが一歩、足を踏み出そうとした、その刹那――。
…………コツ。
凍りついた静寂を破って、小さな音が響いた。
バドの足が、ピタリと止まる。
「……っ!」
バドは反射的に振り向いた。
彼が振り向いた先にいたのは———
一人の少女だった。
少女は怯えた様子で、暗闇の奥でしゃがみ込んでいる。
艶のある黒髪に、紫色の丸い瞳。
見た目からして十歳くらいだろう。
身に纏う白いワンピースは、薄汚れていたが、上質なものであると見て取れる。
こんな廃墟に、これほど育ちの良さそうな少女が、一人でいるはずがない。
状況からして、誘拐でもされていたのだろう。
そして彼女は、運悪く———
バドの「仕事」を目撃してしまった。
「…………」
バドは無言で彼女に銃を向けた。
組織の鉄則。
万が一「仕事」を目撃された場合、そのものを生かしておいてはならない。
これは、黒崎蓮が口酸っぱく言っていた言葉だった。
迷う理由などない。
ガチャ。
バドは、引き金に指をかける。
少女の肩がびくんと震える。
だが少女は、必死に震える口を開いた。
「…あっ、ありがとう……」
「助けて……くれて……」
掠れていて今にも消え入りそうな小さな声。
だが、その言葉に、
バドの指が止まった。
引き金に指がかかったまま。
(……はやく…引き金を引け)
バドは自分の行動が理解できなかった。
今までなら迷わなかった。
命令に従い、淡々と引き金を引いていたはずだ。
だが、バドの瞳は揺れていた。
組織の鉄則。
絶対のルール。
情けなど、必要ない。
それなのに。
少女を見ると、胸が苦しくなる。
少女の紫色の瞳は、 恐怖に震えているはずなのに、 消えない光があった。
まるで———
忘れていた何かを呼び起こすような強い光が。
(……はやく…殺さなければ )
バドの額を汗が伝う。
指先が震える。
(俺は……何を迷っている!!)
少女の瞳に溜まっていた涙が一粒、零れ落ちた。
――違う。
心のどこかで、バドはそう思った。
この少女は 殺すべき相手なんかじゃない。
この少女は俺の……
バドの胸に浮かんだ感情は一つだった。
「守りたい人だ」
自分でも理解できない。
理解したくもない。
それでも、その想いだけははっきりしていた。
バドはゆっくりと銃を下ろし、出口を指差した。
そして、少女に告げた。
「……ここは危ない」
「早く家に帰りな」
できる限り優しく。
不慣れな言葉を絞り出すように。
少女は驚いた顔で彼を見つめ、 やがて小さく頷く。
少女は、出口へ向かって笑顔で走っていった。
「ありがとう!お兄さん!!」
最後にそう言い残して。
少女の姿が見えなくなると同時に、バドもまた誰にも気付かれぬよう夜の闇へと消えた。
(あの子の笑顔…昔から知っているような、どこか懐かしい)
「ばかばかしい…らしくないな」
バドは夜の闇の中で、息をはいた。
だが、その口元には微かに笑みが浮かんでいた。
六年前の夜。
――それは、 殺し屋バドが殺し屋としての道を間違えた日。
そして。
彼の運命を大きく変える、乃愛との出会いの日でもあった。
『華に咲く』bud×hana
第十話を読んでいただきありがとうございます! 最近、フォロワーや♡が増えてきていて嬉しいです!
これからも、『華に咲く』をよろしくお願いします!! byなつぱ
コメント
7件
第10話、めっちゃ良かった…!六年前の出会いがこんなに重いエピソードだったとは。バドが鉄則を破ってまで少女を見逃した理由が「守りたい人だ」っていう直感ってのが、♡♡♡屋としてのキャラを壊さずに人間味を見せててグッと来たわ。乃愛の「ありがとう」の一言で引き金が止まるシーン、震えた。この出会いが今にどう繋がるのか、続きがマジで気になる🔥 投稿お疲れさまです!