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第10話、めっちゃ良かった…!六年前の出会いがこんなに重いエピソードだったとは。バドが鉄則を破ってまで少女を見逃した理由が「守りたい人だ」っていう直感ってのが、♡♡♡屋としてのキャラを壊さずに人間味を見せててグッと来たわ。乃愛の「ありがとう」の一言で引き金が止まるシーン、震えた。この出会いが今にどう繋がるのか、続きがマジで気になる🔥 投稿お疲れさまです!
―――六年前のあの日。
肌を刺すような冷たい春の夜。
あの満月に照らされ、バドは“道”を誤った。
六年前。
まだバドが、殺し屋になって間もない頃のことだ。
「……いないな」
バドは小さく呟き、夜の街を歩いていた。
新米の彼が追っている標的は、 決まった拠点を持たない厄介な男だった。
その上、単独行動。
居場所を掴むのは想像以上に難しかった。
「今日はもう帰るか……」
二、三時間探し回ったが、手がかり一つ掴めない。
さすがに諦めようとした、その時だった。
ふと視線が、あるものに吸い寄せられる。
街並みから少し離れた場所に佇む、古びた廃墟だ。
その姿は、青白い満月の光を浴びて静かに浮かび上がっていた。
「最後に……あそこだけ見てみるか」
もともと目を付けていた場所ではない。
ただの思いつき。
いわゆるダメ元だった。
しかし、妙な胸騒ぎが彼の足をそこへと引っ張っていく。
まるで最初からそこにいくことが決まっていたように。
バドは抗うことなく、廃墟への道に足を進めていた。
軋む音を立てながら、バドは廃墟の中へ足を踏み入れた。
建物の中。
そこには、薄暗く、湿った空気が漂っていた。
窓には、ヒビが入っていて、そこから差し込む月明かりだけが、廃墟の内部を照らしている。
バドは、深く息を吐き藍色の瞳を閉じて、神経を研ぎ澄ませる。
(…人の気配がする)
息を呑んだ。
(…標的の男…かもしれない)
バドは、気配がする方に向かって歩き出す。
静に。
一歩ずつ。
「……いた」
崩れた柱の陰に、人影が見えた。
それは、バドが探していた標的の男であった。
相手はこちらに気付いていない。
バドは、男の死角へ回り込む。
そして――。
一瞬だった。
鋭く、正確に。
ターゲットを仕留める。
男の体が、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
バドは男の死を確かめ、背を向ける。
自分の役目は終わった。
あとは、この冷たい闇に紛れて立ち去るだけ。
そう思って、 バドが一歩、足を踏み出そうとした、その刹那――。
…………コツ。
凍りついた静寂を破って、小さな音が響いた。
バドの足が、ピタリと止まる。
「……っ!」
バドは反射的に振り向いた。
彼が振り向いた先にいたのは———
一人の少女だった。
少女は怯えた様子で、暗闇の奥でしゃがみ込んでいる。
艶のある黒髪に、紫色の丸い瞳。
見た目からして十歳くらいだろう。
身に纏う白いワンピースは、薄汚れていたが、上質なものであると見て取れる。
こんな廃墟に、これほど育ちの良さそうな少女が、一人でいるはずがない。
状況からして、誘拐でもされていたのだろう。
そして彼女は、運悪く———
バドの「仕事」を目撃してしまった。
「…………」
バドは無言で彼女に銃を向けた。
組織の鉄則。
万が一「仕事」を目撃された場合、そのものを生かしておいてはならない。
これは、黒崎蓮が口酸っぱく言っていた言葉だった。
迷う理由などない。
ガチャ。
バドは、引き金に指をかける。
少女の肩がびくんと震える。
だが少女は、必死に震える口を開いた。
「…あっ、ありがとう……」
「助けて……くれて……」
掠れていて今にも消え入りそうな小さな声。
だが、その言葉に、
バドの指が止まった。
引き金に指がかかったまま。
(……はやく…引き金を引け)
バドは自分の行動が理解できなかった。
今までなら迷わなかった。
命令に従い、淡々と引き金を引いていたはずだ。
だが、バドの瞳は揺れていた。
組織の鉄則。
絶対のルール。
情けなど、必要ない。
それなのに。
少女を見ると、胸が苦しくなる。
少女の紫色の瞳は、 恐怖に震えているはずなのに、 消えない光があった。
まるで———
忘れていた何かを呼び起こすような強い光が。
(……はやく…殺さなければ )
バドの額を汗が伝う。
指先が震える。
(俺は……何を迷っている!!)
少女の瞳に溜まっていた涙が一粒、零れ落ちた。
――違う。
心のどこかで、バドはそう思った。
この少女は 殺すべき相手なんかじゃない。
この少女は俺の……
バドの胸に浮かんだ感情は一つだった。
「守りたい人だ」
自分でも理解できない。
理解したくもない。
それでも、その想いだけははっきりしていた。
バドはゆっくりと銃を下ろし、出口を指差した。
そして、少女に告げた。
「……ここは危ない」
「早く家に帰りな」
できる限り優しく。
不慣れな言葉を絞り出すように。
少女は驚いた顔で彼を見つめ、 やがて小さく頷く。
少女は、出口へ向かって笑顔で走っていった。
「ありがとう!お兄さん!!」
最後にそう言い残して。
少女の姿が見えなくなると同時に、バドもまた誰にも気付かれぬよう夜の闇へと消えた。
(あの子の笑顔…昔から知っているような、どこか懐かしい)
「ばかばかしい…らしくないな」
バドは夜の闇の中で、息をはいた。
だが、その口元には微かに笑みが浮かんでいた。
六年前の夜。
――それは、 殺し屋バドが殺し屋としての道を間違えた日。
そして。
彼の運命を大きく変える、乃愛との出会いの日でもあった。
『華に咲く』bud×hana
これからも『華に咲く』をよろしくお願いします!! byなつぱ