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任務帰りの柱たちは、久々に揃って蝶屋敷に戻ってきた。
その晩、体の汚れを落とそうと皆で交代で風呂に入っていたが――
「おーい!誰か風呂焚いてくれってさ!水ぬるいらしい!」
宇髄の声が廊下に響く。
「……また煉獄か?」
実弥がぼやく。
案の定、風呂場から「熱湯のようで熱湯ではない!!実に中途半端だ!」という熱血ボイスが聞こえた。
「しょーがねえな…」
と、実弥はふらりと立ち上がり、風呂場へ向かった。
薪をくべ、風呂釜に火を入れながら、温度計をじっと見つめる実弥。
しばらくすると――
「お、いい湯加減じゃないか。さすが不死川!」
今度は伊黒がやってきて、湯に肩まで浸かりながらうなずく。
「お前ら、加減もわかんねェで湯に突っ込むんじゃねえ。火傷しても知らねえぞ」
と実弥が言えば、
「でも不死川が焚いた風呂は、ちょうどいい」
伊黒がぽそりと漏らす。
その後、義勇もふらっと現れて風呂へ。
「……ぬるくもなく、熱すぎず、いい」
と短く言ったその顔は、少し嬉しそうだった。
「あァもう……俺は何だ、湯加減担当かよ」
ぶつぶつ言いつつ、実弥は結局、柱たちが全員入り終えるまで見届けたのだった。
みんなが寝静まった頃――
台所でこっそり自分の湯を沸かして入っている実弥の背中を、義勇と伊黒がそっと見守っていた。
「不死川、今日もごくろうさま」
口には出さないが、柱たちはその気遣いにちゃんと気づいていた。