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放課後の教室。静かな窓際で、無一郎は頬杖をつきながらぼんやりと外を眺めている。
「……まだいるの?」
不意に投げかけられた言葉に私は思わず肩をすくめる。
無一郎は面倒くさそうに君を見ると
またすぐに視線を外した。
「……うん、ちょっと」
そう答えても彼は興味なさそうに「ふーん」とだけ返す。沈黙。
私が勇気を出して話しかけようとした瞬間——
「ねえ」
急に口を開いた無一郎が、薄く目を細めてこちらを見る。
「さっきから、じっと見てるけど……なに?」
刺さるような視線。胸がドキッと跳ねる。
「え、えっと……」
言葉を探していると
無一郎はつまらなさそうにため息をついた。
「……別に、用がないなら話しかけないでほしいんだけど」
冷たい声音。彼はそのまままた窓の外に視線を戻す。
「……でも」
私が何か言おうとすると
無一郎は小さく息をつきながら、指先で机をトントンと叩く。
「しつこい」
呆れたように言いながらも、その指の動きはどこか気だるげで、完全に無視するわけでもない。
「……そんなに僕と話したいの?」
ぽつりと落とされた言葉に、心臓が跳ねる。
からかうような口調でもなく、ただ淡々とした問いかけ。
「ち、違うよ……!」
思わず否定すると、無一郎はふっと小さく笑った。
「じゃあ、帰れば?」
そう言ってまた窓の外を見る。
突き放されてるのに、胸の奥が熱くなる。
(ずるい……)
悔しいのに、やっぱり帰る気になれなくて、私はぎゅっとスカートの裾を握りしめた。