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心の傷は

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心の傷は

1 - 第1話

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2024年10月12日

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辛くなっちゃうファイナルと慰めるボスのお話

※finlはまだ構成員じゃない設定です。





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大型も終わり、もうそろそろ寝ようかなと思っていたところ、少し遠くから怒号のような声が聞こえてきた。

うわっ、と思いつつも好奇心には逆らえず、声が聞こえた方へとバイクを走らせる。

声がはっきりと聞こえるくらいまで近付き、近くの建物の影に隠れて様子を疑うと、そこにはガラの悪いギャング達に囲まれたぐちつぼがいた。


「お前があそこで警察を助けなかったら俺らは逃げきれたんだけど?」

「個人医なら警察なんか治療すんじゃねぇよゴミが」

「お前のせいで失敗したんだけど」


男たちが口々にした言葉でだいたい何があったのかは察した。

さすがにやばい、そう思って助けに行こうとしたが、俺が助けに行くより先にぐちつぼは、すみませんでした、と一言謝り、バイクで去っていってしまった。


あんな奴らに謝る必要は無いのに。

今すぐにでも殺してやりたい位には怒ってるけど、今はぐちつぼのメンタルケアの方が大事。

チラッと見えた顔が、いつものぐちつぼからは信じられないほど暗い顔だった。

でも俺は知ってる。

あいつは意外と、普段からメンタルが弱くて、皆にバレないように泣いてるんだ。

だからこそ、ボスである俺が助ける必要があった。


急いで自分もバイクに乗り込み、ぐちつぼが行った方向にバイクをとばした。


着いた先は俺らのアジトだった。

別に無線とかでなんにも言ってないから、子供たちが怪我してるとかそんなことはなさそう。

ただ辛くなったから帰ってきた。

もしそうなら尚更俺が助けてやらないと。


しかし、そう簡単にも行かず、無線で「ぐちつぼ寝ます」と、何時もより少し暗い声が聞こえてきた。

すぐに待って、と無線で言ったがその声が届く前にぐちつぼは寝てしまった。


もう少し早くバイクを走らせていれば。

法定速度を余裕で超えた速度ではあったが、追いつこうなどとは考えておらず、ぐちつぼが着いた先で話せたらいいなと思っていたが、その考えが甘かった。


明日ぐちつぼが起きてきたらメンケアしよう。

終わってしまったことはしょうがない。

気持ちを切り替えて次のことを考えよう。


さてと、やることもないしアイツらボコリに行くかぁ




次の日、目を覚ましてすぐ、無線に挨拶をしたらもう既にぐちつぼは起きていた。


「”ぐちつぼ今どこいる〜?”」


「”今は客船強盗のとこいるけど、何かある?”」

「”今日個人医も多いし向かえるけど”」


「”あ〜大丈夫、急ぎじゃないし、今からそっち向かうわ”」


りょーかい、という声が聞こえてから無線をしまい、昨日と同じようにバイクに股がった。

客船のとこならヘリで行けばよかったな、と後悔したがぐちつぼが海の方へ言ってないことを願って、目的地へとバイクを走らせた。


砂浜あたりに着いた時、遠くにいつもの見慣れたバイクとパトカーが止まっているのが見えた。

あー、また公務執行妨害とか言われてんのかな。

そんな事を考えながら向かうと、何やらそんな呑気なことでは無いようだった。

丁度、遠くからでは俺の死角になっていたパトカーの後ろで、ぐちつぼが手錠をかけられていた。

今から捕まりそうなら助けられっかな、とも思ったが、さっき起きたばっかで、ぐちつぼと話に来ただけというのもあって武器は何一つ持っていなかった。

1人ならまだしも、複数人いる銃を装備した警察官に素手で勝とうなんて馬鹿でしかないだろう。

だから今回はさすがに助けてやれないな、と思っていたらデジャブ。

昨日と同じように、怒鳴り声が聞こえてきた。


「貴方が治療したせいで犯人が逃げたんですけど」

「まじで邪魔しないでください」

「せっかく初めて捕まえられそうだったのに!」


圧のある責めるような口調でそんなことを言われていた。

でも、さすがにぐちつぼでもこんな警察なんかの言葉を真に受けたりしないだろ、そう思っていたが、警察に拘束されたぐちつぼの方に目をやると、今にも泣きそうな表情をしていた。

…見ている場合じゃない。

ハッとなってぐちつぼの方へ全速力で向かったが、何故か突然姿が消えてしまった。


「え…?さっきまでここに居たぐちつぼってどこいったか分かります?」


「あ〜、あいつなら今プリズンに送ったよ」


「は?」


思わずそんな声も出てしまった。

警察が牢屋以外でプリズンに送る?そんなことしていいのか?

絶対に犯人に逃げられた私怨が含まれているだろ。


俺の返答が意外だったのか、目の前の警察は困惑したような表情をしていたが、睨みつけてすぐに乗ってきたバイクに乗り込む。




昨日の反省を生かし、プリズンまではバイクの出せる最高速度で向かった。

駐車場にバイクを停めたあとも、走ってプリズン内へと入っていった。


どこにいるのかと見渡すと、部屋の角で体育座りをして、膝に顔を埋めているぐちつぼがいた。

他に人はいないようで、静かなプリズンにぐちつぼの押し殺した泣き声だけが響く。

いつも人の気配に敏感で、寝ていたとしても部屋に入るだけで起きてしまうが、今は俺の気配に気づいていないようだ。


「ぐちつぼ?」


そう声をかけると、驚いたように肩を揺らして、顔をあげた。

そして、目から溢れていた涙を乱雑に腕で拭って、無理に作ったような引きつった笑顔で、


「ごめん、ここ邪魔だったよな?」


と言ってきた。

俺が刑務作業をしに来たとでも思っているのだろうか。

周りを見れて気を使えるのがぐちつぼのいい所でもあるが、今くらいは自分の心配をして俺を頼って欲しかった。


ぐちつぼはゆっくりと立ち上がり、少しフラフラしながら歩いて出ていこうとしていた。


「ねぇ、」


言った後に後悔した。

少し圧があったかもしれない。

案の定、今の精神状態のぐちつぼには圧がかかって聞こえてしまったようで、大袈裟なほどに肩を揺らした。

それからぐちつぼは振り返りもせずに言った。


「ごめん、俺ちょっと用事あるから、」


なんでそうやって隠し通そうとするの?

なんで俺をもっと頼ってくれないの?

ぐちつぼにとって俺ってそんなに頼りない存在なの?


言いたいことは沢山あったが、今はそんなことを考えている暇は無い。

急いでぐちつぼの方へと向かい、その勢いのまま後ろからぐちつぼを抱きしめる。


「よく頑張ったな」


そう声をかけると、ぐちつぼの綺麗な瞳から大粒の涙が溢れ出てきた。

ぐちつぼの前に回って、前から思いっきり抱きしめると、肩に顔をうめてきた。


「…っ、っ…ふっ、……っ、…ぅ……」


ぐちつぼが泣いているのなんか初めて見た。

本当は俺もめっちゃ動揺してるけど、俺がぐちつぼを落ち着かせないといけない。

少し呼吸の乱れているぐちつぼに焦りを感じながらも、強く抱き締めながら背中を擦る。

数分も経つと、今まで声を抑えて泣いていたが、安心したのか、声を上げて泣くようになった。


「…やだっ、…ぅ…もぅこわ、ぃ…っ…」


「…大丈夫、思う存分泣きな、俺らはずっとお前の味方だよ」


そっから数十分が経ち、ぐちつぼも随分落ち着いた頃、プリズンに赤いスーツを来た人が送られてきた。

そっか、ここは人が来るんだ。

すっかり忘れていた。

ここに来たのが仲良くしてるギャングで良かった。


「えっ!どうしたの!?、大丈夫?」


泣いてるぐちつぼを見て心配してくれているようだった。

信じられないという表情をして、焦った口調で尋ねてきた。


「ぐちつぼは大丈夫、ちょっと疲れちゃったみたい」

「ありがとね、心配してくれて」


「あっ、そうだったんですね」

「いつもぐちつぼさんには良くしてもらっているので…」

「無理しないで下さいね!何か嫌な奴いたら俺らも参戦してぶっ飛ばすんで!」


「wありがとね」


気を遣ってか、泣いている理由については言及せず、ぐちつぼを慰めてくれた。

ぐちつぼも、顔は上げずとも話はしっかりと聞こえているようだった。


「ぐちつぼ、やっぱここ人来るかも知れないし俺ん家行こ」


ぐちつぼが頷いたのを見て、抱き上げてバイクの後ろに乗せた。

たまたま家がプリズンから近かったため、すぐに着いた。

バイクに乗っている間も、俺のお腹にしっかりと手を回し、背中に顔を埋めていた。


家に入ってすぐ、ソファーに座らせて俺も横に座った。


「とり、みだして、ごめん」


もう涙はほとんど止まっているようだが、すごく申し訳なさそうな表情で謝ってきた。


「謝るようなことなんて全然してないよ」

「俺はぐちつぼが俺の前で泣いてくれて嬉しかった」


そう伝えると少し安心したのか、俺の手をそっと握ってきた。

不器用な彼なりの甘え方なのだろう。

本当はもっと頼って欲しいし、気持ちを全部さらけ出して欲しいけど、今はこのままでいい。

握られていない方の手で頭を撫でると、無意識なのか頭を擦り付けてくるような動きをした。

それが可愛くて、ずっとワシャワシャと撫でてしまう。

すると、ぐちつぼが俯きながら俺の服をつまんで少し引っ張ってきたため、思いっきり抱きしめてやった。


ずっとそうしていると、ぐちつぼが口を開いた。


「…はなし、聞いてくれる?」


正直何があったのかは全部知っていた。

なんなら全部見ていた。

でも、ぐちつぼ目線での状況や感情も聞きたかったため、最初から全て話してもらうことにした。


「…きのう、ユニオンやってるギャングがいて、」

「ギャングの人が、たおれてたから」

「治療、したんだけど、けいさつも、たおれてて」

「いしゃ、すくなかったから、その人も」

「治療したら、その後、その人にギャングが」

「たおされて、つかまった、みたいで」

「プリズンおわった後、めっちゃ、おこられてッ」

「じゃまッって、いわれて」

「きょうも、客船で、たおれてた人、治療したら」

「けいさつの人に、おこ、られて、」

「こわかった、」


ぐちつぼからは聞いた事のないほどの弱々しい声だった。

思い出してしまったのか体も少し震えてきていた。


「ギャングからも、けいさつからも、いらないっていわれてッ、」

「もうッ、なんで個人医やってるかわかんなくてッ、」

「怒鳴られる、のもこわくて」

「なんもできないおれがぜんぶ悪い、けど」

「もう、おこられるのこわくて、…仕事、やりたくないッ」

「おれには、個人医、むいてなかった」

「いつもじゃまばっかしててッ」

「ほかにも、有能な医者なんて、いっぱいいるし」

「おれなんか、いらないよなってッ…」


いつもの考えてから発していた言葉とは裏腹に、今は頭にでてきた言葉をそのまま吐き出しているようだった。

いつものぐちつぼは、考えるフェーズで自分の気持ちにストッパーが入ってしまう。

これを言ったら、迷惑になってしまうかもしれないとかそんな考えなくてもいいようなことを考えてしまうから。

だからこそ、これがぐちつぼの本心だということがわかった。

また泣き出してしまったぐちつぼをさっきより強く抱きしめる。

絶対にお前は離さんという気持ちを込めて。


「話してくれてありがとね」

「お前は昨日も今日も、本当によく頑張った」

「そんな奴らの声なんか聞かないで大丈夫だから」

「だって今までどうだった?」

「褒められたことの方が断然多くない?」

「たまたま、今回だけ昨日と今日で怒ってくるような変な人にあたっちゃっただけだから、大丈夫」

「それに、ゆぐどらしるにとってもぐちつぼはめちゃくちゃ大事な存在なんだよ」

「うちの子供たちはめっちゃ元気だから、その分ダウンとかしちゃって大変だけど、」

「ぐちつぼがいてくれてるおかげで子供たちも目一杯楽しめてるんだよ?」

「邪魔なんかじゃない、まじで助かってる」

「ぐちつぼじゃなきゃだめ」


ぐちつぼが自分の気持ちを全部吐き出してくれたから、俺もぐちつぼへの気持ちを全て伝える。

抱きしめているぐちつぼの肩が時々揺れ、すすり泣く泣き声が聞こえるが、これは良い方の涙のはず。

少しして、ぐちつぼの泣き声が聞こえなくなったと同時にぐちつぼの体重が俺にのしかかってきて、代わりに寝息が聞こえてきた。

昨日は寝れなかったのだろうか。

泣き疲れて寝てしまったことや、のしかかってきた体重が軽すぎることなど、色々と聞きたいことはあったが、今安らかに寝ているなら一旦はそれでいい。

そのまま俺の部屋のベッドで寝かせておくのもいいが、アジトにいる子供たちを放っておく訳には行かなかったため、寝ているぐちつぼを抱き抱え、アジトへと向かった。




アジトについたはいいものの、ぐちつぼを抱っこしたままではドアが開けられなかったため、無線で開けるように頼むと、すぐに子供たちが飛び出してきた。


「どうしたの、ボス…ってぐちつぼさん!?」


「え!?どういう状況?」


「ぐちーつ!?どうしたの?らっだぁなんかした?」


馬鹿でかい声で皆口々に叫ぶが、幸いにもぐちつぼは起きていないようだった。


「ちょっと色々あってね」

「後で話すから一旦ぐちつぼ寝かせてくるね?」


心配そうな声をした皆の返事を聞きつつ、俺の部屋のベットへと運ぶ。

ぐちつぼの部屋でもよかったのだが、前に俺の部屋に入ってきた時『俺の部屋より落ち着くわ』と言っていた為、今は一旦俺の部屋で寝かせる。

布団もかけて、ぐちつぼの頭を撫でてから、心配している子供たちの元へと向かう。


「えっと、話すとちょっと長くなるんだけど…」


話し出すと、いつもの雰囲気とは一変して、真面目な顔をして話を聞いていた。

話終わると、普段は笑顔で元気な子供たちも、怒ったような表情に変わった。

犯罪をしてる時にも見ないような、ブチ切れたような表情。


「…そんな奴ら俺らが倒してやる」


今まで聞いた事のないくらい低い声でふわっちが言い、皆が賛同してギャングの組織名や警察の名前を聞いてくる。

流石に俺も遠かったため、そこまで分からなかったが、できる限りの特徴を伝える。

この話を聞いて、より警察や他ギャングを嫌いになったようで、もう既に作戦さえ立て始めている。


そんな中、俺はそっと抜け出しぐちつぼの元へと向かう。

起きた時に1人だったらまた思考が落ちていってしまうかもしれないから。

ぐちつぼは、まだすやすやと寝ていたため、さっきのように頭を撫でる。


「…お前はいつも頑張ってるな」


ぐちつぼが起きないような小さな声で囁く。

誰も知らないところでいっぱい考えて、努力して。

いつもいつもずっと頑張っている。

それなのに、警察やギャングには心無いことを言われ、こうやって傷ついている。

警察とギャングがゴミなのは勿論だが、ぐちつぼはなんでこんなにも自分を犠牲にしてしまうのか。

辛いことは辛いって、助けてって俺らに言ってくれれば、何だってするのに。

だってぐちつぼは大切な仲間だから。

たしかに、ぐちつぼの意志を尊重して、構成員ではない。

それでもぐちつぼは、確かに仲間なのだ。

それをぐちつぼ本人はわかっていない。

頼りたい時に頼っていい存在だとわかっていない。

どうしたものか。

さっきの俺の話で少しは仲間だと認識してくれていたら嬉しいものだが。


そんなことを考えてつつ、寝ているぐちつぼを見ていると、数十分後にはうっすらと目を開けた。


「…らっだぁ?」


寝起き特有の枯れた声で、まだ状況が掴めていないようだった。


「ここアジトの俺の部屋」

「ぐちつぼさっき寝ちゃったから帰ってきちゃった」


軽く状況を説明すると、段々と頭が冴えてきたのか、申し訳そうな顔をしてガチですまん、と謝ってくる。

謝らなくて大丈夫なのに、という思いを込めて頭を撫で、立ち上がる。


「子供たち呼んできちゃっても大丈夫?」

「みんな心配してるけど…」


寝たからか幾分かさっきよりも顔色が良くなった気がする。

しかし、俺がそう伝えると瞳が不安定に揺れ、不安そうな表情になった。

そんなぐちつぼを見て直ぐに、隣に座って抱き寄せた。


「大丈夫だよ、皆もぐちつぼのこと大好きだから」

「誰も迷惑だなんて思ってない」


「…ほんとに?、」


絞り出されたようなか細い声には、やはり不安な気持ちが乗っていた。


「うん、本当」

「皆来たらすぐわかるよ、何の心配も要らない」


「…じゃあ、みんなと会いたい」


「ん、わかった、呼んでくる」





皆を呼びにリビングに行くと、次の犯罪の作戦会議をしているようだった。

俺が部屋に入ると、心配だったのか、ぐちつぼの様子について口々に尋ねられる。

今は生憎、一人一人に答えている時間はないため、全員にまとめて答える。


「みんな、ぐちつぼが起きたから俺の部屋に来てほしい」


「おぉ!ぐちつぼさん元気になった?」


心配が晴れたのか、さっきより、明らかに元気になった声で尋ねられる。


「うーん、どーだろ、皆次第かな」


「俺ら次第?、そんなん速攻元気になるわ」


「そうだよ、俺らがいつもの元気を取り戻す!」


ぺいんとやふわっちでさえも、さっきは不安そうな表情をしていたが、今は慰めに行く気満々で、少し皆の雰囲気も明るくなった。


「それはありがたいわ」

「あ、あと、今ぐちつぼちょっと弱ってるからみんなで慰めて欲しい」


「わかった!ぐちーつなんて褒めるとこだらけでしょ!」


「ん、じゃあ行こ」






「ぐちつぼ?入るよ?」


「…おう」


ぐちつぼの返事を聞き、扉を開ける。

ぐちつぼは布団は腰まで被ったまま、体を置きあげて、ベットに座っていて、やはり表情はやや曇っていた。


「……ぅおッ」


俺が入るや否や、後ろから子供たちが飛び出して、ぐちつぼに飛びついた。


「ぐっち〜、そんな顔してないでいつもみたいに笑ってよ」

「いつもめちゃくちゃ助かってるんだから」


「ぐちーつ、俺ぐちーつがいないと楽しくないよ」

「いつも、ふざけてダウンとかしちゃってもすぐ駆けつけてくれるし」


「そうだよ、つぼさんがいなきゃ俺とぺんちゃんこんなに楽しく遊べてないよ」


飛びついたまま、口々にぐちつぼに話しかけると、ぐちつぼの曇っていた表情も晴れてきた。

皆が一通りぐちつぼを褒め終わったあと、ぐちつぼは少し照れたような表情で、


「ありがとう」


と言った。

それに対してみんなも


「こちらこそ、いつもありがとう!」


と返したため、ぐちつぼも笑顔になってきた。

そこで俺から一つ提案をした。


「ぐちつぼ、ゆぐどらしるの正式な構成員にならない?」

「もし、今回みたいに絡まれることがあったら直ぐ助けに行けるし」


それに対して子供たちは、いいじゃん!、おいでよ!と大盛り上がりだったが、ぐちつぼも嬉しそうな表情をしていた。


「ゆぐどらしる、入りたいです」


いつもの声量よりもやや小さめだが、はっきりとした声で俺の目を真っ直ぐに見つめてきた。

その返答を聞いた皆は大喜びでぐちつぼも巻き込んで大はしゃぎしているようだった。

ぐちつぼにもいつもの笑顔が戻ってきていて、はしゃぎ過ぎてダウンした子供たちの治療も嬉しそうにしてくれている。

これでやっといつものぐちつぼが戻ってきた。


いつもありがとう俺らのヒーロー

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