ある雨の夜、俺は残業でいつもより遅くなり家路を急いでいた。
『腹減ったなぁ。しかも雨降ってるし最悪。』
夕飯を店で食べるという選択肢もあったが、雨が降り続いているので、誰が待っている訳でもないが一刻も早くアパートに帰りたかった。
自宅のある最寄駅についた頃にはすっかり雨もあがり、傘をささずに歩くことができた。
空腹のせいもあって、いつもと違う近道を急ぐ。何やら背筋がゾクッとした。
視線を感じて振り向くが誰もいない。
コツコツコツ…
革靴が歩調に合わせて音を立てる…。
ヒタヒタヒタ…
何かがついてくる音!?
振り向くが、やっぱり誰もいない。
コツコツコツ…
ヒタヒタヒタ…
『なんか嫌だな。暗いし怖いな。』
怖さで思わず声に出していた。
声に出せば幾分恐怖も薄れる気がしたからだ。
コツコツコツ…
ヒタヒタヒタ…
やっぱり誰かが後をついてきている気配を感じる。
コツコツコツ…
ヒタヒタヒタ…
怖いな怖いな。嫌だな嫌だな。
心の中で呟いていた。
やっとアパートが見えてきたので、内心ホッとして、鍵を用意する。
コツコツコツ…
ヒタヒタヒタ…
まだ気配は消えない。
立ち止まり周囲を見回しても、もちろん誰もいない。
自室のドアの前に立ち鍵を開ける。
つい気が緩み口走ってしまった。
『はあ、気のせいか…』
耳元で
『気のせいかい?』
つづく
コメント
3件
初めまして! とても、面白かったです! 次回も楽しみにしてます!