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「はあ…」
卓上カレンダーに目を落とす。
「5年前、か…よし、行こう」
私は術師の制服に着替え外に出る。
「セリ」
「松田?」
「…どこか行くのか?」
「ん、ちょっとね」
「そうか…気をつけて行ってこいよ。この後、雨らしいから」
「ありがとう」
着いたのは、天内と黒井さんが居る墓地。毎年、命日に墓参りをしている。静かにあの日を思い出す。
「…ごめん」
1人、天内と向き合う。雨が降って来た。無下限で雨を遮ることも出来るけど、あえてしなかった。1人、雨に打たれる。
「灰原にも会いに行こう」
雨に打たれながらまた別の墓地を目指す。
「セリちゃん?」
「萩原…どうしたの?」
「買い物の帰りなんだけど…セリちゃん、びしょびしょじゃん」
傘に入れてくれる。
「まだ行くとこあるからいいよ。ありがとう」
「傘は?」
「要らない。じゃあね」
「待って!」
「ん?」
「俺も行くよ」
「…いいよ。1人で行く」
「でもっ」
「大丈夫だから。じゃあ」
「ちょっ!セリちゃん!!」
萩原から逃げるように早足でその場を去る。
着いたのは灰原の居る墓地。
灰原の前まで行く。
「灰原…ごめんね」
あの日、私に別の任務がなければ付き添いで行くはずだった。
『ごめんね、付き添い出来なくなって』
『大丈夫ですよ!二級なんて俺と七海で一瞬です!』
『油断は禁物ですが、芹那さんが来るまでもないですよ』
『期待してるぞ2人共!』
任務から戻ってみれば、居たのはボロボロの七海と下半身がない灰原。
「…もう二度と会えないなんて思わなかったよ」
「お、萩じゃねえか」
「萩原、何してんの?」
「お、諸伏ちゃんに陣平ちゃん。いやーね、さっきセリちゃんに会ったんだけど傘さしてなくてね。一緒に行くよって言ったんだけど断られちゃって。ついて行くのも野暮かなって思ったから、せめて帰ってくるの待ってんの」
「こんな雨の中出掛けたのか?」
「俺は買い物して来たんだけど、セリちゃんは何だろうね?手ぶらだったし」
「そうなんだ」
「セリまだ帰ってねえのか」
「まだ?」
「さっき出てった時に会ったんだよ。なんか、喪服見てえな服着てたな」
「喪服…」
「セリちゃんってちょっと不思議な子だよね」
「ん?」
「上手く手の内を隠されるって言うか」
「あー」
「分かる。長年一緒にいるけど、セリのことは知らないことの方が多い。家とか行ったことないし」
「え、無いの?!」
「うん。双子のお兄さんだっているのは知ってたけど、会ったのはこないだが初めましてだしね」
「ふうん。あ、帰って来、たぜ?」
そこには金髪の長身の男と一緒に傘に入るセリだった。
「セリ!」
「よー、セリ」
「セリちゃん?」
「あ、3人共」
「私はここまでのようですね」
長身の男が言う。
「送ってくれてありがとう七海」
「いえ。頑張ってください」
「ありがとう。七海も頑張りすぎは良く無いからね。適度に休みなね」
「ありがとうございます。では」
「バイバイ」
「セリ、さっきの奴は誰だ?」
「ああ、高専の後輩」
「そうなんだ。俺の傘は拒否したのに、あの男の傘には入るんだね」
「そんなつもりじゃ無いけど、ごめんね」
「どこ行ってたの?」
「ちょっとね」
そう言うセリの瞳は寂しげに揺らいでいた。