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ローside
それから数日、おれはジェイデンと過ごした。最初はただの気まぐれで助けたはずなのに、今ではあいつがいないと落ち着かない自分がいる。
ペンギンたちと戯れているジェイデンを見て〝ずっとこうだったらいいのに〟なんて柄にもないことを考えてしまったりもする。
あいつが自分のことを愛称で呼んでくれと頼み、名前を、ジェディと呼んだ日は、なぜだかこちらまで嬉しくなった。赤子のようにころころと笑うあいつがあまりにも綺麗に映ったからだろう。
そして、島から発つ日。おれは意を決してジェディにブレスレットを渡した。あいつは最初、上がる口角を必死に抑えようとしていたが、おれがブレスレットをつけてやると、ジェディは陽の光にブレスレットをかざし、だらしない笑みを零した。その姿に思わず目を奪われる。それと同時におれの体は動いていた。
ジェディの腕を掴んだ。ジェディが何か言う前におれはあいつの手の平にキスを落とした。
あいつの宝石のような青い瞳が零れ落ちるんじゃないかというほど見開かれていて、はくはくと口を動かし続けている。
「ろ、ロー? あの、」
また何か言おうとしているあいつの言葉を遮って、先におれが口を開く。
「またいつか」
そう言っておれはその場を去った。振り返らなかった。
少し前から、少しずつ自覚し、理解していたあいつへのこの感情。それがなんなのかわかったが、おれがそれを言葉にすることはなかった。
おれにはやらなくてはいけないことがある。恩人であるあの人の本懐を成し遂げること。そのためには、おれ個人の感情など邪魔でしかない。成し遂げるためにおれの命が必要だというのなら、きっとおれは迷わずこの命を捧げるだろう。
だが、あの人の本懐を遂げ、全てが終わってもなお、おれが生きていて〝本当の自由〟を手に入れた時は、その時はしっかりと伝えることにしよう。
好きだ――と。