テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「え、ゲイ…?」
「まあ色々あってさ、恋愛観変わったんよな」
「えっ、そ、そうなの…?」
何年かぶりの再会に、妙に胸がドキドキしつつ
コソコソ話でもする距離まで、ぐっと顔を近づけられた。
そのとき、担任が咳払いをして「積もる話ならあとでするように」と注意されてしまった。
樹くんは「はーいすみませーん!」と慣れたように笑って席に座り直した。
「とりま、続きはまた昼休みに話すか…!」
「う、うん」
◇◆◆◇
「てかさ、龍星垢抜けたよな?」
「え、そうかな…なにも変わってないと思うんだけど」
「絶対変わったって!名前聞くまで気が付かなかったし、なんか、可愛くなったよな?」
「えっ」
〝可愛くなった〟
その短い褒め言葉は、胸に突き刺さるように響いた。
初恋相手から向けられるその甘い響きに
過去のトラウマと今の感覚が混ざり合って脳内が痺れた。
そんなとき───
「おいりゅう、急がねぇと今日のキーマカレーパン売り切れちまうぞ?」
上から声がして顔を上げると、そこには財布を持った圭ちゃんが立っていた。
「あっ!すっかり忘れてた…!!早く行かないと…!」
ハッとして席を立ち、樹くんに「ごめん、また後で話そ」と言って、俺と圭ちゃんは購買に向かった。
◆◇◆◇
購買部はいつも通りの戦場だった。
人混みと熱気が渦巻く廊下。
パンを求める生徒たちの間を縫うように進む圭ちゃんの背中を、俺は必死で追いかけた。
彼が一歩進むたびに生じる人波の隙間を、迷子にならないよう必死で辿る。
なんとか間に合ったのか
というよりそんな急ぐ必要もなかったのか、まだパンは何個も残っていた。
俺は安咄しつつ、売店のおじさんに声をかける。
「キーマカレーパン2個お願いします!」
「あいよ!そっちのきみは?」
「焼きそばパンひとつで」
お互い代金を払ってパンを貰うと、いつもの空き教室に向かった。
埃の匂いと、静寂が満ちるその部屋へ。
「はあ…走って疲れた」
適当に席に座って、息を吐く。
肩を大きく上下させ、荒れた呼吸を整えようとする。
「バテんの早すぎだろ」
「圭ちゃんが急かすからだよ…!」
そんなときだった。
不自然なほど静まり返った室内で、刺すような言葉が落ちてきた。
「そういやさ、さっきアイツとなに話してた?」
「ん?あぁ…樹くん?」
圭ちゃんは首を縦に振り、俺の目を見据えた。
その瞳の奥にある真っ黒な感情に射抜かれ、動悸が跳ね上がる。
まるで事情聴取でもされるような緊張感が走った。されたことないけど。
「あ、なんかね、圭ちゃんはクラス違ったから知らなかったって前に言ってた樹くんだったんだよ」
「は?それって……中学のころにお前のこと振った、あの…?」
圭ちゃんの声が少しだけ低くなる。
「うん。びっくりしたよね……まさかあの樹くんが転校してくるなんて」
「それで、またなんか言われたとかじゃないんだよな?」
もしかして嫉妬させちゃったのかな、と思っていたが、杞憂だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ありあ
400
#普通
野々さくら
768
45
#幼馴染
猫塚ルイ

3,373