st side
春めく暖かな日
桜はまだ来ず、梅の花が開花する。
自室として使っている蔵からも
その姿を見ることが出来る
自身と違って自由なその身が
どうも羨ましいが、
近い内に散るその姿に烏滸がましい限りにも
自身を重ねてしまう
それは自分が短命故か、
はたまた“見た目だけ”と罵られてきたせいか
きっと両方だ。
そういえば梅の花には散る以外にもこぼれる
と散命の表現があるそうで、興味深い
出来ることなら自分は菊のように終わりたい
まぁでも、
こんなことを考えたところでなんの意味もないただの拗れた人間の妄想に過ぎない、
見てくれだけ寄せたところで
あの美しさは手にできない
自由なんてない
そう、今から“私”絵鳩スミレは結婚をする。
だけど、
そのままの咲かない自分でいるつもりはない
この呪縛から逃げるために何年も待った
今を変えるために、今を足掻こうと思う。
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父「やぁ、二人とも調子はどうだ?」
mk「あぁ、お義父様!……
これまでに無いほど緊張しています」
そう朗らかに父と話す男には
そこまで緊張の色が見えない、
st「……」
これから式が始まる
きっと最近流行りの無駄に飾り
顔もよく知らない親族をたくさん集めた
モダンな式をするのだと思っていたけれど
案外こぢんまりとした式を開くらしい
婚約者のmktさん、右京財閥の次男坊
正確には現社長の愛人とか間にできた子
西洋人の血が流れるハーフ
汚れた血の人間なんて言う人もいるとか
自分と同じで“望まれない人間”
そんな厄介者同士の結婚
お荷物の消費
歪んだ捉え方をしなくてもそう分かる。
st「………」
mk「…さぁ、そろそろですから。」
そう言い笑いかけてくるmktさんの顔が
どうも不気味に感じれた。
きっと本当の笑みではない。
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mk「ここが貴方の部屋です。」
洋造の一室
ガラスのシャンデリアが目に刺さる
いつもの蔵ではありえない光景
良く言えば煌びやか
悪く言えば派手
mk「式の後でお疲れでしょうから今日はもう お休みください、それでは僕はこれで。」
式での笑顔はどこへやら
無の顔でそう伝え、部屋を出ようとする。
st「…どうもありがとうございました」
mk「…?!」
バッと勢いよく目の前の彼が振り返る
st「驚きますよね、今日嫁に来た人間が
本当は男だったなんて…」
自分は淡々と話し出す
mk「意味がわかりません…!」
頭に手を当て変な顔をする彼を横目に
st「そうですよね、でも決まったことだったのでそれに従ってます。」
mk「だとしてなんでこんなことを…?
絵鳩家の長女として生を受けたと存じていましたが…?何故こんなこと、」
st「案外話を聞いてくださるのですね」
mk「…一応は夫婦になりますから、」
無骨な印象だが思っていたよりは、人の話を聞く人だ、これなら話も早く進むだろう。
mk「…明かして良かったんですか?」
st「こんな設定無理がありますから」
もういい歳した大人だし、どこかで明るみになる事をずっと隠すよりは良いと思った。
と言うか
さっきから質問ばかり…まぁそれはそうか。
mk「命じたのは、お義父様ですか?」
st「…えぇ、党首の才が無かったから、
おまけに病弱…すぐ 見限られました。」
mk「………」
自分もそんな経験があるのか何なのか、
目線を外し下を向くmktさん。
st「だから私は自分らしく生きたいのです。
今よりずっと好きなように」
mk「…はぁ、急になんです?」
st「海の近い土地に小さな家を持って
ハイカラな洋服に身を包んで過ごす、
あと、個展なんかも行きたいですね
私大好きな画家さんが居るんです!
パアラアにも行きたいです、
アイスクリイム!氷菓なんて食べた
ことないですから…
全部自分で決めて、歩いて、食べて」
mk「……子供のような夢ですね。」
馬鹿にした様な口ぶりだが
案外おだやかな顔をする
st「馬鹿にしないでください、
子供でいられなかった自分の夢なので」
mk「…結局は何が言いたいんですか?」
st「……契約して欲しいのです。」
mk「契約…?」
片眉をピクリと動かしこちらを見つめる。
st「はい、契約です。
私と“貴方が”この地獄から抜け出す
“同盟”となる為の契約ー 」
mk「…っ!」
貴方がやっとこちらを真っ直ぐ見つめ
口を開いた。
きっと返事は______
【設定】
絵鳩スミレ(偽名)
・家では顔しか取り柄のない見掛け倒しの出来損ないと呼ばれている
・病気がちで蔵にこもって絵を描いている
唯一の趣味
・妹とは仲良しだが、自身のせいで生きたいように生きれていないのを気にしている
・長男だが財政業の才能はないため跡取りには妹が推薦されている(そのため2人とも戸籍や表では別の性別を名乗っている)
・背丈など男と思われる要素を少なくするため足が不自由だと言う設定で暮らしているので外では常に車椅子(本当は歩ける)
・海の見える場所で平 和に暮らすのが夢
「絵鳩…スミレ、です。
ここにいては私達の幸せは存在しない」
右京尊
・右京財閥の社長の愛人の子供
子宝に恵まれなかったため長男(次期当主)の何かあった時の代わりとして養子で引き取られた。
・外国との貿易相で通訳などの役割を果たす
一度イギリスに留学していた。
・長男のことは尊敬こそすれどどうせこいつの代わりなんだと痛感させられ疎外感を感じている(長男の方は仲良し兄弟だと思っている)
・外国の血が流れているハーフなため年配の人からは汚れた血の持ち主として煙たがられているが女性人気は高い
・家を出て自然派な暮らしをするのが夢
「……右京尊、この生活を終わらせるための一縷の望み、やから___!」
絵鳩家と右京家は戦後でそれぞれ銀行、鉄道業などで名を馳せた華族。
どっ、どうでしたかね…?
これからも頑張って連載していくつもりなので緩めに待っていてください!
おまけ
2時間クオリティ…
私は小説もイラストも筆が遅いです。
それでも良いなら
また見てね。
続きますからね、
コメント
12件
新作じゃん!!! 絶対見ます...!!✨✨
これちゃんと歴史学んでる人じゃないと書けない文章だ……スゴすぎる…!!! 絵を白黒で描けるのも凄すぎます!! ほんと、誰ですか?!(いい意味で)
新作ありがとうございます!! これからどんな物語になっていくのか楽しみです(*ˊᗜˋ*) イラストも雰囲気ありありですごく好きです!!