テラーノベル
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〜前話のあらすじ〜
空腹が故に少し軽食を取ることにしたアムネシアとカーパス。そうして食べ終えカーパスは謎解きを始めると言った。謎解きのカギはアムネシアが何者か。カーパスの推測ではアムネシアは神様の子共だという。そしてアムネシアの記憶喪失の原因は神様の死ではないかとも言った。それに理解が追いつかなかったアムネシアだが、カーパスに言われはっとし、次に何故アムネシアをここに連れてきたのかを考えることにした2人だった。
「まず大前提、俺は関係ないと思う」
「僕だけをここに連れてくるつもりだったってこと?」
「多分な」
まぁ確かにそうか。ハチスはカーパスを連れて行くことを僕がよければいいと言った。だからカーパスを連れて行こうが行くまいが変わらないのだろう。
「でも、なんで僕だけを?」
「そこはよくわからないが、今1番可能性高いのはやっぱお前に用がある。これじゃないか?他にあるとしたら…」
そしてカーパスは少し黙り込んでから言った。
「お前だけが、この迷宮を出れるからとか?」
「僕だけが?」
どういうことだろうか。こんな迷宮を僕だけが出れるってなんだ?
「どれも根拠はないし、俺もよくわかってない。ただ、こんな脱出不可能に思えるレベルの迷宮に息子を突き落とすなんて、何かお前に用がある可能性が高いのは確かだ。ならここから出れなきゃ意味がない。だとしたらお前はここから出れるんじゃないか?」
「でも、僕記憶ないし…」
「多分記憶がなくても平気だと思うぞ」
「え?」
カーパスは最初に閉じたあの床のところを指差しながら言った。
「まずここを守っているはずの、あの女の天使がお前を知らなかった。てことはお前はここに来たことがないってことだ。初めて来たとするなら恐らく記憶がなくても出れるようになってるはずだと思うぞ」
「でもそんなのどうやって?」
「…知らねっ」
カーパスは苦笑しながら言った。そうして頭の後ろを掻きながら「神様の子なら何かないのかよ」と呆れた…というより、考えるのに疲れたような目で僕を見ながら呟くように言った。
「うーん…あ、強いていうならこのネックレスとか?」
「そういえば、それずっとつけてるよな」
そうだねと返事をしながら僕は首にかけているネックレスを手に乗せるように触った。これはペンダントトップが十字架の形をしたネックレスで、花の香りが漂うものだった。
カーパスもこっちに寄りながらそのネックレスを見ていた。
「で、それはなんなんだ?」
「僕にもよくわかってなくて…ただ、これは最初に目が覚めた時には首にかけてたんだよね」
「え?外したりしてなかったのかよ」
「これ取り外しが難しいというか…」
なぜ神様はこんなものを僕に渡したのだろうか。
「はぁ?…これちょっと触っても、平気か?」
「平気だよ」
カーパスは困惑のような表情を浮かべそう聞くと、僕の背後に回りネックレスのチェーンの部分を持ちながら自分の方に寄せ、まじまじと見ていた。
「これ、留め具ついてねえじゃん!それにこのチェーン、普通の素材じゃない…?」
そう驚嘆するようかのようにカーパスは言った。
「ねえっ、ちょっと、首、絞まる…っ」
「あ‥ごめん」
僕がそう言うと、カーパスは持っていたチェーンをパッと離した。そんなにこのネックレスが気になったのだろうか。
「これ、留め具とかついてないけどどうやって外してたんだ?」
「水つけると外せたかな」
「水?」
「うん。でも普通の水じゃ外せなくてさ。僕が作った水でしか外せないんだよね。刃物とかで切ってみようとしたけど傷一つつかないし。それでいちいち取り外すのも大変だからつけっぱなんだけど…」
「そんなの絶対重要なものだろ…」
「でもよくわかってないしさ」
カーパスは僕と会話しながら今度は僕の正面に来て、十字架のペンダントトップを軽く手に取って言った。
「これなんかの花の匂いがするけど…バラか…?」
「多分そうだと思うけど、なんでバラなんだろう?」
「単純に神様が好きだったとか」
「そっか」
結局このネックレスはなんなのだろう。なんで僕にこんなものを渡したのかも謎だ。
「バラ…そういえばここの床の模様もバラだよね」
僕がそう言うとカーパスは、確かにと言わんばかりに驚いていた。
床には、一本のオレンジのスプレーバラだと思われるものと、一本の黄色のバラだと思われるものが対角に描かれていた。
「…棘のような針、バラの香り、バラの模様…なんか、バラ関連のもの多いよね」
「確かに。少し異様だな」
いくらバラが好きだとしてもここまでバラが関係しているものを作るだろうか。
「でも、そこからどうするかだ。もしもバラがここから出るヒントだとしても、一体…」
そうしてカーパスは黙って考え込んでいた。
バラ、と言われても僕は花の知識があるわけじゃないから特に何かわかるわけではない。バラの知識もゼロだ。
ただ一つ知ってるのは…。
「なら、この床に水かけてみない?」
「え?」
知ってることは、僕のこのネックレスは水をかけることで取り外しが可能になること。具体的には水をつけると留め具が現れるようになっているのだ。
同じく神様が作り、バラという共通点があるのならば水をかけることで何か変わるのではないか。僕はこの仮説をカーパスに話した。
「カーパスはどう思う?」
「可能性は全然あるし、やってみて損はないからやってみるか」
「なら、ちょっと空中に飛ぼ!濡れる可能性あるし!」
「わかった」
そして空中に少し飛び、僕は能力を使った。
この床に満遍なく水がかかるように、円を描くように水を順に出現させた。そして水は出現した途端から重力に抗えず床に落ちていく。落ちた水が床に当たると、少し、うるさく耳障りなくらいに、水の床に打ち付けられ弾ける音が静寂なこの場に鳴った。
「カーパス水かかってない?」
「ああ、平気だ。それよりも…」
カーパスは僕に返事をすると、床へ目を向けた。
数秒待ち何も起こらないかと疑いかけたとき、通路の反対側にある壁の下の中心から1秒もかからずつるバラが伸び、通路を目指すかのように横の壁にも伸びていった。
「!?」
僕らが振り返った時には、いくつもの青色のバラが花を咲かせ、白色だけだった空間は一瞬にして緑と青に覆われた。
コメント
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今回もいい話やな