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ゆき
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格安生姜
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#M!
yomi
242
attention
・夢要素あり
・悲恋
・no×〇〇
・nmmn
上記の意味がわからない人はブラウザバックお願いします。
#no’s friend side
「本日、午後二十時から始まる一分間、東京の夜空をお楽しみください」
テレビから聞こえるそんな声。有名な俳優さんや女優さんがコメントを返している。本当に楽しみです、みたいな、中身があんまりない言葉。でも、それでいいんだ。
東京の若者に、自然に触れて欲しい。
そんな願いが伝わって、今日決行される「東京夜空計画」。東京中のありとあらゆう電気を消して、星空をはっきりと見えるようにする計画だ。
こんな特別な日に幼馴染で、好きな人の家にお泊まりできるなんて。もう2度とないような東京の星空がはっきりと見える日に、2人で空を見上げる。恋人の擬似体験ができることに気分が高揚する。
それでも昼間はそんな風情なんてなくて。電車に揺られている中で思ったのは、意外と面倒そうな表情の人が多いということだ。私みたいに浮かれている人なんてごく少数。その雰囲気がいかにも「東京の人」って感じで、つい手元の小さな電子機器に目を向ける。
「#東京夜空計画」
前向きな呟きよりも、後ろ向きのものの方が圧倒的に多い。たったの一分間。それだけの短い時間でも誰かに縛られることが嫌な人がこんなにいることに嫌気が差す。
「おじゃましまぁす」
ほんの少し、お気持ち程度高い声を出して、少しでも可愛く見せる。あなたが私のことを恋愛対象として見ていないことは知っているけれど。それでも悪足掻きしてしまうの。せっかく私だけを見てくれる日なんだから。
n「外暑かったでしょ。お風呂入りますか?」
「うん!借りるね」
私が恋愛感情を持っていることなんて想像すらしていないから、こんな態度もできちゃうあなた。
着替えは持ってきているけれど、黙っておく。そうしたら、服を貸してもらえる。彼女っぽいことができる。やっぱり、変態だ。でも、仕方がないじゃんか。こんなにも惚れさせたあなたが悪いんだから。
浴室の鏡を見ると、そこにいるのは貧相な体の、痩せっぽち。胸なんて無いし、くびれも無い。顔は良い方だと思ってたけど、高校に入ってからは自信が無くなった。周りを見れば可愛い子、綺麗な子、ふわふわした子、元気な子、素直な子。そして、彼の好みは「自立した人」。正直ガキっぽい私は完全にタイプから外れている。
初めて知ったときは、この世が終わったと思う程絶望したし、冗談抜きで一日中泣いて目を真っ赤に腫らした。それでも立ち直れたのは、せめて幼馴染としての立場を最大限利用してやろうと、色々と真面目すぎるこの人を堕としてやろうという目標を立てたからだ。結局知る前とやっていることは変わっていないのだが、こんなことでも立ち直れるのだから人間は不思議だ。
「なお兄、お風呂ありがと!」
私の服よりもちょっとだけ大きな、昔使ってたような部屋着。相変わらず青が好きなのか、上下で青のセットアップらしい。ここで高校時代のジャージとか、ダル着のパーカーとかが出てこないあたりは流石だと思う。
n「いえいえ笑」
n「この後時間ありますけど…何します?」
「ゲームやろうよ!」
n「受験生の夏休みなのに?笑」
「今日くらいいいじゃん」
n「それもそっか」
そこからは本当に楽しかった。大学生になってしまった彼は、もう気軽に遊べるような人ではなくなってしまった。でも、今だけは昔のようにたくさんはしゃいで、軽口を叩き合った。
「もう10分前じゃん」
n「ほんとだ」
n「4時間経ったかな?あっという間だね」
おいで、とベランダへ手招きする彼はそれだけで有名な絵画のように美しい画になった。流石地域で1番のイケメン紳士。
la la la…
「……電話鳴ってるけど」
呼び出しの画面には可愛い、と男子に人気な可愛いあの子。噂によると、なおきりさんのことが好きらしい。言ってしまえば、ライバルのようなものだ。尤も、私が勝手に意識しているだけなのだけれど。
n「ほんとだ。気付かなかったなぁ」
そう言いながら迷わずに通話を拒否する彼。
「出なくていいの?」
n「今はゆあんくんとの時間ですから」
y「そ、」
そんなことを言われたら、誰でも勘違いしてしまうじゃないか。でも、知ってる。なおきりさんは”私”のことが好きなのではない。誰にでも同じ対応をするんだ。”私”が今さっき電話をかけてきた彼女と同じ境遇に遭ったこともあるから。
ふっ、と東京中の電気が消えた。
y「きれい…」
n「本当ですねぇ」
真っ直ぐに星を見上げるその横顔が愛おしい。ずっと、ずぅっと眺めていたい。でも、”俺”にはそんな権利なんて無いから。
10分間なんてあっという間で、束の間の感動は一瞬でいつもの東京に戻ってしまった。
y「なお兄、じゃあね」
n「受験頑張ってね」
y「頑張る!笑」
y「…それじゃ、ばいばい」
顔にぐっと力を込めて、自分が勝手に動いてしまうのを抑える。大好きな彼にはもう、受験が終わるまで会いにこないと決めている。
曲がり角を曲がったところで、涙が溢れた。ああ、俺が女の子だったら。あなたと、もっと別の出会い方ができていれば。こんな性格じゃなくて、もっと大人しい子だったなら。止まることをまるで知らないとでも言うような涙がとめどなく流れて行く。地面にぽたり、ぽたりと円形の染みを作って行く。
ずっと騙しててごめんね、なお兄。
今日を機に、”私”を捨てて、心も”俺”にしようと思います。
「ちょっと補足」
長々とわかりにくい文章になってしまい申し訳ございません🙇♀️
物語について少しだけ補足をさせてください。
読み飛ばしていただいても構いません。
お風呂を借りたシーンで胸もくびれもない、と言っていたのはyaくんが男の子だから。noさんがお風呂を貸したのも、男の子だから。この立場でいれるのは男の特権だと気付いていないyaくん。
そもそもyaくんは性別違和で、身体は男、心は女。
最後までずっと「彼女らしさ」に拘っていた理由は、今日で自分を捨てるつもりだから。
私を捨てる、心も俺になる、というのは、性自認のことやnoさんへの恋心などをひっくるめて、自分の「心」を捨て、周りが望むような、本当の意味での男の子に変わって行く、ということです。
今日を境に、yaくんは「普通の」男の子として生きて行くと決めたというわけです。
コメント
1件
うわ……これ、読み終わったあと、しばらく動けなかった。 最初は甘くて切ない幼馴染のお泊まり話だと思ってたのに、まさか“身体は男、心は女”の子だったなんて。 しかも今日を境に“私”を捨てて“普通の男の子”になろうとしてるっていうラスト…胸が苦しくなったよ。 なお兄が何も知らずに「ゆあんくん」って呼ぶたびに、彼女の心がギュッと縮まるのが伝わってきた。 こんなに誠実で美しい“告白”と“お別れ”があるんだね。 静かに書ききった雑草さんの文章の強さに、ただただ尊敬です。 続き、気になるけど…この終わり方だからこそ輝く物語でもあると思う。 ありがとうございました。大事に読みます🤍🥀