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『第五部』
俺、リクは翌日、雨の中しのさんにお願いして病院に連れて行ってもらった。
俺と涼が入院していた病院。
肩につかないくらい短い髪の看護師さんに声をかけると、中庭に案内された。そこには、雨に濡れる涼の墓石があって。
涼は昔から両親に見捨てられていたから、迷った末ここにお墓を作ったらしい。
一歩踏み出して、雨に濡れながらも手を合わせて、目を閉じて。
「涼、久しぶり。帰ってきたよ」
鼻の奥がつんとして。
「今までずっと忘れててごめん。涼のこと苦しませてごめん。1人で悩ませてごめん。もっと相談、してほしかった。何で俺のことなんて助けたの。涼の方が俺なんかよりもっと大切なんだよ。涼はいつもそうやって、もうどうせ助からないからなんて、そんなの分かんないじゃん。生きててほしかった。もっと一緒に遊びたかった。もっと一緒に話したかった。嬉しかったことも楽しかったことも、辛かったことも悔しかったことも全部、話したかった。もっと一緒に笑い合いたかった。もっと傍にいてほしかった」
足に力が入らなくなって、その場にへたり込んだ。
「俺なんかのために死ぬことなかったよ、涼は。俺のことなんて見捨ててくれてよかった。その後涼がもし死んじゃっても、また会えたはずなのに。なのに何で涼は、俺だけ生かしたの?それなら俺も、いっそのこと死にたかった。一人になってすぐのときもずっと言ってたけどさ、俺、涼がいないとしんどい。ずっとどうやって死のうかって、そればっかり考えてた」
つうっと涙が頬を伝って、地面に落ちた。
雨が少し弱くなる。
「今までありがとう。あの日孤独だった俺に話しかけてくれてありがとう。たくさん話して、笑って、傍にいて、思い出作ってくれてありがとう。気にかけてくれてありがとう。優しくしてくれてありがとう。助けてくれてありがとう。親友でいてくれてありがとう。涼の親友でよかった。涼が褒めてくれた積極性で、ちゃんと友だちもできたよ。これからはちゃんと、涼の分まで生きるから。ずっと、見守ってて。いつか会いに行くね。涼のこと、大好きだよ」
そう涼に話して、目を開ける。
雨はほとんど止んでいて。
涼の墓石から、涙みたいに雫が滴る。
雨上がりの空に架かった虹が、風に揺れるブルースターを静かに照らしていた。
『エピローグ』
帰りの車の中、俺はみんなに話しかけた。
「色々ありがとう。取り乱しちゃってごめんね」
「そんなことないよ」
「こっちこそありがとう」
重なったハルとなぎさの声に驚いて、2人の方をむく。
「話してくれたから。人に話すのって勇気いると思うし、話してくれてありがとう」
ハルが遠くを見て呟いて、なぎさも頷いた。
「旅行はこれで終わりなの?」
ゆうの声になぜか慰められた気がして、自分の口元に笑みが浮かんだのがわかった。
「ううん。どうせなら色んなところ行こう」
かなが今までにないくらい、優しく笑ったのが嬉しかった。
「そういえば、ずっと聞こうと思ってたんだけどさ」
帰りの新幹線が、ちょうど発車したときだった。
「何?」
ハルの言葉に疑問を返したリク。
「何で自分たちのこと誘ったの?」
「それ思ってた。僕らクラスでは浮いてる方だもんね」
「⋯んー⋯」
少し考え込んだリクは、
「クラスでは浮いてるって言ったじゃん?だから、何か悩んでそうだなあって⋯俺も、涼のことは忘れても多分、どこかで寂しさを感じてたんだと思う。だから、同じような仲間が欲しかったのかも」
写真フォルダを見返すと、高校生の頃の自分がそこにいた。
後ろから聞こえた懐かしい声に振り向いて、もはや恒例の旅行に向かった。
見上げると、限りなく広がる冬色の空があって。
君のことを思い出した。
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