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#デジタルイラスト
ライ
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1件
うわあ、すごく切ない回だった……。名前が薄れるっていう設定がもう、世界ごと彼の存在を消そうとしてるみたいでゾッとした。でも「触ったら分からない」のに「今ここにいるって思える」って言うロウの優しさが、余計に胸に来たね。呪いを終わらせるって宣言したところ、めちゃくちゃ熱かった。最後の朝、名前がはっきり残ってたのも希望の光。続きがすごく気になるよ。
紙に書いた名前は、朝には薄れていた。
何度書いても。
何枚書いても。
翌朝には、少しずつ色を失っていく。
まるで世界が、
その名前をなかったことにしようとしているみたいだった。
「……また?」
伊波ライが、机の上の紙を見る。
そこには何度も書かれた文字。
――伊波ライ。
小柳ロウは紙を握りしめた。
「何か知ってるだろ」
伊波は目を逸らした。
「知らない」
「嘘」
「……」
「お前、最初から知ってた」
小柳の声は責めるものではなかった。
ただ、確かめるようだった。
「俺が忘れない理由も」
「お前が消えていく理由も」
「全部」
伊波はしばらく黙っていた。
やがて。
「ロウってさ」
「何」
「諦めが悪いね」
そう言って笑った。
でも、その笑顔はいつもの明るいものではなかった。
二人は森の奥へ向かった。
林檎売りの一族が残した、古い屋敷があるらしい。
誰も近づかない場所。
忘れられた場所。
伊波は歩きながら話した。
「昔ね」
「林檎売りは、みんなから必要とされてたんだ」
「病気の人には元気を」
「苦しんでる人には希望を」
「林檎を食べた人は、少しだけ幸せになれた」
「じゃあいいものだったんじゃないか」
伊波は首を振った。
「代わりに」
「林檎売りは、大切なものを失う」
木々が揺れる。
「最初は記憶」
「次に名前」
「最後には存在」
「誰かを救うほど」
「自分が薄くなる」
古い屋敷の中には、一冊の日記が残されていた。
埃を払いながら、小柳が開く。
そこには昔の林檎売りの言葉があった。
『人を救うことと、自分を犠牲にすることは違う』
『誰かのために消えることは、優しさではない』
『残された人は、救われたままではいられない』
小柳の指が止まった。
「……」
伊波は黙っていた。
その言葉が、自分に向けられていることを分かっていた。
「お前さ」
小柳が言う。
「本当は怖いんじゃないのか」
伊波の肩が少し揺れる。
「何が」
「消えること」
沈黙。
長い沈黙。
そして。
「……怖いよ」
小さな声だった。
「ずっと怖かった」
伊波は笑おうとした。
でも、うまく笑えなかった。
「朝起きて」
「昨日のことを覚えてる人がいない」
「自分がここにいた証拠がなくなる」
「それってさ」
「思ってたより、寂しいんだよ」
小柳は何も言わなかった。
ただ。
初めて。
伊波の頭に手を置いた。
「……何してるの」
「確認」
「何の」
「いるかどうか」
伊波が目を丸くする。
「触ったら分かる?」
「分からない」
「じゃあ意味ないじゃん」
「でも」
小柳は言った。
「今ここにいるって思える」
伊波は目を伏せた。
そして。
「……ずるいなあ」
小さく呟いた。
屋敷の一番奥。
古い鏡が置かれていた。
鏡に映った伊波の姿は。
少しだけ透けていた。
「……」
小柳の表情が変わる。
「いつから」
「最近」
「嘘」
「……」
「もっと前からだろ」
伊波は答えなかった。
代わりに鏡を見る。
「俺ね」
「最後の林檎売りなんだ」
「だから」
「俺が消えたら」
「もう誰も、林檎を売れない」
小柳は拳を握った。
「じゃあ」
「終わらせればいい」
「え?」
「その呪い」
「なくせばいい」
伊波は悲しそうに笑った。
「簡単に言うね」
「簡単じゃない」
「でも」
小柳は伊波を見る。
「お前が消える未来を受け入れるよりは」
「ずっとマシだ」
その夜。
二人は屋敷を出た。
帰り道。
伊波が突然立ち止まる。
「ロウ」
「何」
「もし」
「俺のこと、忘れたら」
小柳を見る。
「その時は誤魔化さないで教えて」
小柳は眉を寄せる。
「忘れない」
「約束できる?」
少しだけ間があった。
「……できる」
「じゃあ信じる」
その翌朝。
小柳は目を覚ました。
机の上の紙を見る。
そこには。
昨日まで何度書いても薄れていた文字が。
はっきり残っていた。
――伊波ライ。
小柳は息を止める。
その瞬間。
森の奥から。
木の実が落ちる音がした。