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あらすじ?
・すでにミスは数回来店していて、すんきちとは軽口を交わすくらいの関係に
・この日のミスはやけに飲んでいて、明らかに酔っている
店を閉めたのは、午前1時を回ったころだった。
いつもならすぐ帰るのにひとりで飲みに来たと思ったら、ぐいぐい酒をあおり、珍しくテンションが低かった。
すんきちは片付けをしながら、カウンターで頬杖をミスをちらりと見た。
「……帰れるんですか?」
「んー?帰る気はあるよ。でも、足がついてこない…」
「えぇ……」
頭を抱えたくなった。大人の男が泥酔するまで飲むなよ、とは思う。ミスがこんなに飲むのは初めてだった。
「タクシー、呼びますか?」
「……いや、財布落としたかも、なーんも入ってなかったや(笑)」
「えぇ….笑い事じゃないですよ….」
無理だ。この人多分今夜帰れない。
すんきちは静かにため息をついた。頭の中に浮かぶ選択肢はひとつしかない。
「……うち、来ます?」
ミスが顔を上げた。目がすわっているのに、なぜか悪い笑みだけはハッキリ浮かべていた。
「いいの?誘ったね、今。俺、聞き逃さなかったよ」
「そ、そういう意味じゃなくて…..!」
「んーでも、すんきちくんち行くの、楽しそう」
楽しくない。絶対楽しくない。
そう思いながらも、すんきちは断れなかった。結局、終電のない街を2人で歩き、自分の玄関の前に立っていた。
「……ここ、入るんだ?」
「入らないと、外で寝ることになりますけど」
「じゃあ遠慮なく」
まるで当然のように、ミスは先に上がり込む、靴はそこそこに脱ぎ散らかし、ソファに崩れ落ちるように座った。
「っはー、なんか…すげー落ち着くわー(笑)すんきちってこういう部屋すんでそうな顔してるもんな」
「どんな顔ですか…..」
すんきちはは自分の家に他人がいるという状況に落ち着かず、キッチンで水を用意した。
「ありがと。やさしいな、おまえ」
ぽつんと、そんな一言が落ちた。
すんきちはふいに胸の奥がチクリとしたのを感じた。酔っているから、何でも軽く言う。そう思って受け流そうとしたけれど、なぜかそれができなかった。
「あの….床で寝てもらっていいですか?布団、ひとつしかないので」
「いやいや、それは冷たくない?!?!ふたりで寝ようよ狭いけどくっつけばいけるでしょ?」
「絶対無理です!!!!」
「あはは、そう言うと思った」
笑いながらも、ミスは床に素直に寝転んだ。すんきちは、布団に入ってからもしばらく目を閉じられずにいた。
隣で寝息が聞こえる。本当に、知らない人が隣にいる。なのに、なぜか不快じゃなかった。
むしろわ少しだけーー安心している自分がいた。
コメント
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天才すぎいいいいい