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今日も今日とて定時上がり。
別にブラック企業でもない、かと言ってホワイトというほどでもない。
「でも給料は微妙かなぁ……」
生きていく上では食うに困らない、結婚とかを考えるとやや不安のある収入。
(まぁ結婚するような出会いもないんだけどね)
べ、別に出会いがほしいわけでもないし?
飲み会とか男同士のほうが楽しいし?
同級生の子供がそろそろ中学生……なんて話を聞いたときはちょっと焦ったけど。
「独身貴族も悪くないしな、焦ったところでしょうがなッ―――」
突如として視界が真っ白になる。
(あっ、これはきっと天からのお迎え……じゃないッ!!)
最後に見えたのは気持ちよさそうに眠るトラックの運転手だった。
「うっ、眩しい……」
目を覚ますと、そこには見知らぬ天井が……
(ま、まさかそんな……これがみんな夢にまでみる異世界転生……)
「されてねぇッ!!」
普通に病院のベッドの上だった……しかも全身がめちゃくちゃ痛い。
「あら綾部さん、目を覚まされたんですか? いま先生を呼びますので少々お待ちくださいね」
(キレイな看護師さん……)
ははーん、なるほど……ついに俺にもこういった出会いの機会が訪れたわけだ。
―3ヶ月後―
「それじゃあお世話になりました」
特に看護師さんと仲が進展するわけもなく退院しました。
(おかしい、こんなはずでは……)
「結局今まで通りの生活に戻るわけか」
何の楽しみもない、面白みもない。
この空のようにお先真っ暗な日常に逆戻り……昼なのに真っ暗?
空を見上げたはずが、目の間に長髪の女性の顔面が迫っていた……怖ッ!
・綾部良太 享年36歳・
死因 頭部強打による頭蓋内損傷
えっ? 結局俺死んだの?
退院初日に自殺に巻き込まれたとか……笑えねぇ。
◇ ◇ ◇ ◇
「えぇ……誰? もう一人とか聞いてないけど」
真っ白な空間で、真っ白な長髪のナイスボインにいきなり問われた。
まず自分から名乗るべきでは?
「ボインて……まぁこちらから名乗るのはたしかにそうじゃな。我は創造神、この世界を創造、管理している」
騒々しい? たしかにうるさそうなオッパイだ……けしからん。
「ええい! 胸ばかり見るな俗物め! これだから男の魂はめんどくさい。この世界、星を創造! 作った神様! おわかり?」
声は出ないけど意思は伝わってしまうようだ。
この星というと地球のことだろうか、月とか火星とかじゃないよな?
「ちきゅう? つき? かせい? すまんがキミのいた世界の星のことはよう知らんぞ、我には我の世界があるからな」
そうか、異世界には異世界の星があるんだな……大変勉強になりました。
それにしても随分と意識がはっきりした夢だな。
「たしかに、死んだ者は大体この空間を夢と思うようだな。だが安心せい、紛れもなくお主は死んでおる」
死亡を保証されてしまった。
「しかしおかしいのう、こちらへの転生は一人だけの予定だったはずだが」
ということは俺の前に誰かここに?
「うむ、悲惨な人生を歩んでいた者でな、最後は自殺という道を選んでしまった。可哀想じゃから色々優遇してやったのだ」
あれ?
じゃあ俺の死因は?
「お主か、どれどれ……自殺に巻き込まれ頭部強打? ……んん? 死亡日時も場所も同じのようじゃな」
なんてこった……じゃああの時のホラー映像が自殺した娘だったのか。
「なるほどのう、それで魂がこんがらがって一緒にこっちに渡ってきてしもうたのか。しかし今更戻せるわけでもないし…」
ということは?
つまり俺も色々と優遇されて転生……?
「優遇のう……お主の魂を見るに、そこそこの才能があり、不遇の扱いを受けてたわけでもないやつを、優遇するわけにもいかんのじゃ」
たしかに不遇というよりは、ただただ虚しい人生だったな。
でも俺に才能……?
ま、まさかたまに右眼が疼いていたのはそういう……。
「それは単なる眼精疲労ではないか? 見るに、お主は空間把握能力に優れていて射撃の才能があったようじゃな」
射撃か……自衛隊や警察になってれば活かせたのかな?
でも訓練とかきつそうで嫌だな。
進路でもそんなの選択肢にすら入れてなかったし。
あーそれに転生したらどうせ記憶も消えるんだろうし、次の人生でも活かせないんだろうなぁ。
「ふむ、記憶か……優遇はできんが、ちと頼まれ事を聞いてくれるなら記憶は抹消しないでやってもよいぞ?」
な、なんやて?
「先に転生した娘だがな、ちょっと心に闇を抱え過ぎというか……優遇はしたものの、力に振り回されやせんかと思うてな。あんなのが魔王にでもなったら人類が滅びかねん」
ふーん、そりゃ大変……魔王?
えっ、ちょっ…そんなのがいる世界なの?
「もし見かけたら気にかけてやってくれ、それじゃあ頼んだぞ」
ちょっ、人の話を…うおっまぶし!