テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

消滅

一覧ページ

「消滅」のメインビジュアル

消滅

7 - まとめ

♥

39

2025年09月15日

シェアするシェアする
報告する

第一章:監禁 目が覚めたとき、部屋は白かった。

どこからか差し込む光も、壁も天井も、すべて均一で冷たい白。

身体を動かすと、硬い床に背中が触れた。

……ここはどこだろう。

頭がまだぼんやりして、状況を理解できない。

声を出そうとしたが、喉がぎこちなく震えた。

「……誰か、いる?」

答えはなかった。

足元を見ると、机も椅子もない。壁も天井も白一色。

――閉じ込められている。

その直感だけは、はっきりしていた。

小窓からパンと水が滑り込む。

見慣れた光景でも、どう扱えばいいのかわからない。

手を伸ばして受け取り、口に押し込む。

味は、ほとんど感じなかった。

最初の夜、天井を見つめながら、思った。

ここから出られるのだろうか。

けれど、考えるだけで疲れた。

手足は自由なのに、身体は重く、心は鉛のようだった。

第二章:時間の摩耗

いったいどれほどの日が経ったのか。

十日か、一か月か、それ以上か。

時計もなく、窓もなく、光も届かない。

差し入れられる食事が、唯一の時間の印だった。

しかし同じパンと水の繰り返しに、時間感覚は曖昧になっていく。

言葉も出なくなった。

最初は「おい」「出して」と声を出していた。

だが無視され続け、やがて口を開くことすら億劫になった。

目を閉じ、床に横たわる。

夢と現実の境界も、薄れていく。

名前を呼ぼうとしても、思い出せない。

食事はただの作業になり、噛む、飲み込む、の反射だけが残った。

空腹も満腹も感じず、時間の経過も無意味になった。

第三章:自分の喪失

目を覚ました。けれど、目を開けたのか閉じたのかもわからない。

夢か現か、判別する気力は消えていた。

小窓からパンを受け取り、口に押し込む。

噛む。飲み込む。味はない。

それでも身体は動き、呼吸は反射する。

夢では校舎の窓際に座っている自分。

顔はぼやけ、制服も曖昧。誰かが名前を呼ぶが、途切れる。

自分という存在の輪郭が、少しずつ消えていく。

思考も言葉も、名前も、一人称も、すべてが霧散した。

壁に爪を立て、血がにじむ。

痛みはあるのに、反応する気力はない。

ただ受け入れるだけ。

第四章:抵抗の消失

呼吸しているのか、心臓が動いているのか。

もはや確認する必要すら感じない。

かつては出口を求め、名前を思い出そうとし、声を出した。

今はそれらすべてが消え、残るのは反射のような動作だけ。

パンを受け取り、噛み、飲み込む。

味も感覚も、意味もない。

ただ身体が動く。

夢も現実も、時間も空間も、すべてが一体化している。

抵抗も恐怖もない。

ただ存在するかのように動き、消えていく感覚だけがある。

第五章:存在の希薄化

呼吸も、鼓動も、区別がつかない。

目を閉じても、開けても、同じ白が広がる。

夢では身体が透け、空と混ざり、指先から波紋のように溶けていく。

現実でも、壁も床も天井も、そして自分も、同じように曖昧になった。

「ボク」という感覚は消えた。

名前も、一人称も、感情も、思考も、すべて溶けていった。

存在しているのかどうかも疑わない。

ただ身体が動き、パンを口に運び、呼吸は反射し続けるだけ。

第六章:消滅

呼吸の感覚も、鼓動も、意識も、すべて消えかけていた。

壁も天井も床も、白一色。

区別はなく、時間も空間も消えた。

夢と現実は溶け合い、すべては「今」という無限だけになった。

パンを受け取り、噛み、飲み込む。

それだけが残った。

味も意味も、意識もない。

身体だけが動く。

自分という存在も、名前も、記憶も、感情も、すべて溶けて消えた。

最後に意識は消え、声も音も、空間も時間も、すべて霧散した。

残るのは――白と静寂だけ。

存在していたものは、もうどこにもいない。

終わりも、始まりもない。

ただ、消滅の後に広がる無。

この作品はいかがでしたか?

39

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚