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登場人物
サクラ(ナレーション兼):天に住む、花が大好きな少女。
門番:地上へと続く階段の番人。
【天の上・花壇】
(穏やかな風の音。じょうろで水を撒く音)
サクラ(N):天に住む少女は、お花が大好きでした。自分の家の花壇に小さな種を植え、雲にじょうろを差し込んで水を汲み、毎日せっせとお世話をします。
やがて時間が経つと、芽が顔を出し、だんだん大きくなり、やがて美しい花を咲かせました。
サクラ:「やった、綺麗に咲いたぞ!」
サクラ(N):少女はとても嬉しくて、この花を誰かに見てもらいたくなりました。そこで、何本かの花を花束にして抱えると、そのまま地上へと続く長い階段に向かいました。
(足音。階段の門に到着する)
サクラ(N):階段の手前には門番が立っていました。
門番:「もしもし、お嬢さん。地上へ行くなら名前が必要ですよ」
サクラ:「私の名前?」
サクラ(N):生まれてから今まで名前のなかった少女は、少し悩みました。でも、名前を持たなければ地上へ降りることはできません。少女はそっと、自分の抱えている花束を見つめました。
サクラ:「私の名前は、サクラです」
サクラ(N):門番はその名前を手帳に書き留めると、にっこり笑って地上へ行く許可をくれました。
(長い階段を下りていく足音)
サクラ(N):サクラは意気揚々と階段を下りていきます。やがて階段の先に見えてきた地上は、何の変哲もない小さな公園でした。
サクラ:「ここなら、誰かに見てもらえるかもしれない」
サクラ(N):サクラは自分の育てた花を見てもらおうと、公園の中を走り回りました。
(走る足音。風が吹き抜け、花が開くような音)
サクラ(N):すると、サクラが持つ花束の黄金の香りに気づいたのか、周囲の木々も次々と花を咲かせ始めました。
今年の桜前線は、少しだけ落ち着きのない少女のせいかもしれません。
でも、その花は確かに、誰かの心に輝きを解き放っているのです。