テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
##『諸君、狂いたまえ』
「普通は、こうするんだよ」
その言葉が、俺は嫌いだった。
何かを選ぶたびに。
何かを夢見るたびに。
誰かが言う。
普通はこう。
みんなはこう。
そんなことしても無駄。
だから、やめたほうがいい。
いつからだろう。
俺は、自分の「やりたい」より、誰かの「こうしたほうがいい」を選ぶようになっていた。
失敗しないように。
嫌われないように。
笑われないように。
そうやって選んだ道は、確かに安全だった。
でも。
少しも楽しくなかった。
rn「……これが、生きるってことなのかな」
返事はない。
静かな部屋に、自分の声だけが落ちる。
rn「違うよね」
その夜。
俺は一冊の本を開いた。
何気なくページをめくっていた。
そして、ある言葉の前で手が止まった。
『諸君、狂いたまえ』
rn「……狂いたまえ?」
思わず笑った。
rn「なんだよ、それ」
でも、不思議だった。
その言葉から、目を離せなかった。
普通から外れる。
誰かに笑われるかもしれない。
誰かに否定されるかもしれない。
それでも、自分が信じたものを選ぶ。
rn「……それでいいじゃん」
初めて。
俺は、誰かの「普通」じゃなくて、自分の「こうしたい」を選んでもいい気がした。
次の日。
俺は、自分のやりたいことを話した。
やっぱり、笑われた。
「そんなの無理じゃない?」
「現実見たほうがいいよ」
聞き慣れた言葉だった。
昔の俺なら、そこで諦めていた。
でも。
rn「……無理かどうかなんて、やってみないと分からないじゃん」
꒰ঌ.𝓜𝓪𝓻𝓮໒꒱.+
224
#暗い
すみれ🪐✿@猫化
601
「でも失敗したら?」
rn「失敗するかもしれない」
怖かった。
正直、怖かった。
それでも、言葉は止まらなかった。
rn「でも、何もしないで後悔するほうが嫌だ」
「変なの」
rn「うん」
少しだけ笑った。
rn「俺、変なのかもね」
でも、それでいい。
誰かに理解されなくても。
笑われても。
馬鹿にされても。
俺が選んだ道なら、最後まで歩いてみたい。
夜。
俺はまた本を開いた。
あの言葉を見る。
昨日とは、少し違って見えた。
rn「諸君、狂いたまえ……か」
普通じゃなくていい。
正解じゃなくてもいい。
誰かに決められた人生じゃなくていい。
rn「俺は、俺のままでいい」
そう言って、本を閉じる。
きっとこれからも、俺は迷う。
怖くなる。
諦めたくなる。
それでも。
rn「それでも、俺は俺の好きなものを好きって言うよ」
俺は、誰かに笑われないように生きるために生まれてきたわけじゃない。
誰かの「普通」に合わせるために、生きているわけでもない。
俺が信じたものを。
俺が好きだと思ったものを。
胸を張って追いかける。
それを「狂っている」と言うのなら。
それでもいい。
rn「……じゃあ、狂ってやるよ」
小さく笑った。
今度は、誰かの言葉じゃない。
俺自身の言葉で。
rn「諸君、狂いたまえ」
その言葉を、もう一度だけ胸に刻んだ。
〜END〜
コメント
1件
「普通はこう」って呪い、主人公が最初から抱えてたのがすごく伝わってきた。“普通”が具体化されずにずっと主語のない圧力として描かれてるのが、逆にリアルだなと思った。冒頭の「その言葉が、俺は嫌いだった」で一気に引き込まれたよ。それでいて、本の一文から「狂いたまえ」って自分を取り戻す流れ、静かだけど熱量があって好き。「何もしない後悔よりマシ」って最後の決意のセリフ、すごく響いた。設定としては“社会の空気”という見えない構造を、一人の内面だけで描き切ったのが秀逸だね。続き、読みたいな。