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「どこでしたっけ?マエダ電気」

「たしか南口出てすぐですよ」

「あぁ〜」

「ピンと来てないでしょ」

「はい」

そう笑っていると改札が迫り、2人隣同士で交通系電子マネーをあて

改札を通りエスカレーターに乗る。

妃馬さんが前で僕が後ろ。僕が妃馬さんを見下ろす形になる。

柔らかそうだけど、艶がありしっかりとした綺麗な髪が僕の胸の高さにあり

「妃馬さんて髪染めてるんですか?」

と聞いた。妃馬さんが体を横に向け、顔だけをこちらに向けて

「はい。元は黒です」

僕は黒髪の妃馬さんを想像した。

「あぁ〜黒も似合いそうですね」

「そうですか?」

少し上目遣いでこちらを見る妃馬さんに思い出したように心臓が高鳴った。

するといつの間にかエスカレーターが終わりに近づいていたらしく

前の妃馬さんがこちらを向いたままで躓いてしまった。

僕は咄嗟に転ばないように妃馬さんの手首を掴んだ。

そして2人とも無事にエスカレーターを降り、動かない地面で落ち着き

自分の手が妃馬さんの手首を掴んでいることを思い出し、妃馬さんの手首から手を離す。

「すいません。大丈夫でしたか?」

そう聞く。すると

「はい。ありがとうございます」

と妃馬さんが言うので

「すいません。僕が話し掛けちゃったせいで」

そう言うと妃馬さんが

「いえ、全然大丈夫ですよ」

「すいません…」

と申し訳なくなり表情を曇らせている僕に

「なんで謝るんですか。ちゃんと助けてくれたし、それでいいじゃないですか」

少し不機嫌そうに言う。その不機嫌そうな顔を見て、つい笑ってしまった。

「なんで笑ってるんですか」

そう変わらず不機嫌そうな顔で言う妃馬さんに

「いや、すいませんすいません。躓いたこととか腕掴まれたことに怒ってるんじゃなく

助けてくれたのに。ってとこで怒ってるって思ったらなんかおかしくて」

と笑いながら言うと

「だって別に怜夢さん悪くないのに」

と顔を右下に向け、今度は不機嫌な子供から不貞腐れた子供のようになる妃馬さんに

「ありがとうございます。もう謝りません」

と言うと妃馬さんもこちらを向き、不貞腐れた顔が見る見るうちに晴れていった。

「でもほんとに大丈夫でした?」

と言いながら2人で歩き出す。

「はい。怜夢さんのアシストのお陰で転けませんでしたし」

「まぁ転ける原因も僕だったりするのですが…」

妃馬さんのキリッっと鋭い視線が飛んできて

「あっ…。はい」

とその空気を一蹴する。そして僕は続けて

「腕も大丈夫でした?あぁ腕というか手首らへんかな?

咄嗟のことでつい力加減出来ずにグッっと掴んじゃいましたけど」

「はい。全然大丈夫でしたよ」

と言い手首をクルクルと回す。何気ない会話をしながらマエダ電気までの道を歩く。

繁華街なだけあってそこそこ多い人が行き交い、駅構内も駅を出て歩道を歩いていても

人の会話や人の歩く音などが合わさったざわめきが聞こえてはいたが

妃馬さんと歩き、妃馬さんと話していると2人だけの世界にいる感覚に陥る。

しっかりと周りも見えているし、そのざわめきも聞こえているはずなのに

どこか遠く感じるというか妃馬さんにフォーカスが合い

妃馬さん以外がボヤけて見える感覚がする。

そんな現実だけど夢のような感覚でいると

いつの間にかマエダ電気のガラス製の自動ドアの前に立っていた。

見上げると圧迫感のあるくらい迫力のある大きな建物で

ここが丸々マエダ電気だと思うと下世話にも「儲かってんなぁ〜」と思ってしまった。

当たり前だが僕ら以外にもお客さんはいて自動ドアが開き

中から出てくる人、これから中に入る人が行き交う。

「自動ドア」だけど閉まっている時間のほうが少ないくらいだった。

僕と妃馬さんもほぼ開きっぱなしの自動ドアを通り、案内板のところへ行く。

案内板には1階に陳列されている商品のジャンルや

その置いてある場所が事細かく記されていた。

その横には各階にはなにが置いてあるかが記された案内板があり

その案内板を見てから僕と妃馬さんはエレベーター前に行き

上の矢印がついた丸いボタンを押す。

カチッっと押されたボタンはボタンの縁が赤く光っていた。

「結構賑わってますね」

そう右側でエレベーターを一緒に待つ妃馬さんに話しかける。

「そうですねぇ〜」

と周りをキョロキョロ見渡す妃馬さん。

「平日のこの時間の割にお客さん多いですよね」

「たしかに。でも平日だからこの時間にお客さんが多いのかも」

「あぁ、なるほど。お仕事帰りとか学校帰りとかか」

「そうですそうです」

そんな話をしていると左側のエレベーターが開く。中から10人いかないほどの人が出てくる。

電車とは違いエレベーターの扉の左右で分かれて出てくる人を待つことはなく

ボタンを押しそのボタンの前付近で待って、そのまま出てくる人を待ち

エレベーターに乗り込んだ。僕は一番初めに入り、5階のボタンを押した。

その押されたボタンも先程の上の矢印のボタンと同じく丸く縁が赤く光った。

僕の後すぐに妃馬さんが乗った。僕と妃馬さんの他にスーツ姿で鞄を持った男性

大学生らしいカジュアルな服を着た男性が乗り込んできた。

僕と妃馬さんはエレベーターの奥の壁のほうに寄る。

僕の前にスーツ姿の男性。妃馬さんの斜め左前に白いパーカーの男性がいる。

僕の前のスーツ姿の男性の前のボタンをチラッと見ると

僕が押した5階に追加で4階のボタンが光っていた。

なぜかエレベーター内では話す雰囲気にならず

4人静かに上からの圧迫感に頭を押さえ付けられながら

エレベーターのモーター音を聞いていた。

頭を押さえ付けていた圧迫感がなくなると扉が開く。4階。

スーツ姿の男性が降りて行った。

僕はボタンの前に移動し、少しエレベーターの外を見てから閉まるボタンを押した。

妃馬さんも僕の後ろに移動していた。

扉が閉まってすぐ圧迫感に頭を押さえ付けられ、すぐになくなり扉が開く。

僕は開くボタンを押す。白いパーカーの男性が軽く頭を下げ出ていく。

僕は後ろの妃馬さんのほうを向き

「どうぞ」

と言いながらエレベーターボーイのように振る舞う。

妃馬さんは右手を握り、その右手で口元を隠すようにし笑い

「ありがとうございます」

と言ってエレベーターを降りる。

妃馬さんの背中を追うようにして僕もエレベーターから降りた。

白い綺麗な床に天井のライトが当たり、まるで床にもライトがあるように見える。

広い売り場に陳列棚が無数にある。

僕と妃馬さんは一緒に売り場を周りゲームのコーナーを見つけた。

神殿堂のサティスフィー本体や

パスタイム スポット シリーズの本体がガラスケースに入っている。

その付近にゲームのソフトがずらーっと並んでいた。

「さて、あるかなぁ〜」

と言いながら僕はパスタイム スポット 4のソフトのところで

ソフトの名前を流れるように見ていく。序盤で50音順だと気づき1つずつ見るのをやめ

ソフトのタイトルの頭文字だけを見て流し

「F」か「ふ」から始まるソフトのところまで一気に流す。

するとすぐに「ファンタジア フィナーレ」シリーズのソフトが現れ

そこから「XIV」を手に取り、妃馬さんに手渡す。

「ありがとうございます。私なんにもしてなかった」

と少し笑う妃馬さんに

「思ったよりソフト多くてビックリしました。

これじゃあ1人で探すのは大変だったかもしれませんね」

と言い僕も笑う。

「たしかに。怜夢さんが一緒に来てくれて良かったです」

そう笑顔で言う妃馬さんに忘れていた鼓動がまた高鳴り出した。

妃馬さんのその言葉が胸に入り込んでくる感覚があり、笑顔の妃馬さんが光り輝いて見えた。

僕は妃馬さんに引き寄せられそうになり、妃馬さんから目を逸らし右を見る。

たまたまパスタイム スポット 4の「獣が躍る7」のソフトと目が合う。

その前には歴代の「獣が躍る」シリーズが並んでいた。しかし2と4だけが無かった。

そんなことに気を向けていると

「じゃあ買ってきますね」

と言いレジのほうへ歩き出す妃馬さん。僕も妃馬さんの後を2歩ほど下がりついていく。

僕たちが乗ってきたエレベーターとエスカレーターの近くにあるレジに行き

妃馬さんが店員さんにソフトを手渡している。

その様子をジッっと見るのもどうかと思い、なにをする訳でもないのにスマホの電源をつける。

商品のバーコードを読み取るピッっという音が鳴り響き

妃馬さんと店員さんのやり取りが聞こえる。

すべてのやり取りが終わり妃馬さんが商品を受け取り、こちらに歩いて来る。

「すいません。お待たせしました」

そう言う妃馬さん。僕は特になにもしていないスマホの電源を切り、ポケットにしまう。

「いえいえ。じゃ、あ、どうしますか」

と言いながら妃馬さんがお会計している間、考えておけばよかったと思いながら考える。

「ワクデイジーでも行きますか?」

と妃馬さんから提案してくれた。


ワクデイジーとは世界的に展開されている大人気ファーストフードストアであり

赤いベースに黄色い大きな「W」の文字の看板が象徴的で愛称は「ワック」。

関西圏では「ワクデ」などと呼ばれている。


僕はその提案に対し

「まぁあんま雰囲気ないですけど、妃馬さんさえ良ければ行きますか」

となぜか雰囲気を気にしている自分に少し疑問を抱きながらも言うと

「はい」

と笑顔をくれた。

僕と妃馬さんはエレベーター前に行き、今度は下矢印のボタンを押し、2人で待つ。

そしてエレベーターが来て僕が先に乗り、ボタン前に行く。

1階のボタンを押し、次に開くボタンを押したまま

周囲に人がいないことを確認してから閉まるボタンを押す。

上りとは違い上からの圧迫感はなく下からの浮遊感。

例えるならゆったりしたジェットコースターのような

内臓を空気の手で優しく持ち上げられている感覚がする。

1階に着くまでに4階と3階で止まり、お客さんが乗り込んできた。

1階に着き、僕は開くボタンを押したままにする。

頭を軽く下げてから降りる人や、なにもこちらに感心を向けず降りる人もいた。

僕はまたエレベーターボーイをしようとしたが

1階でエレベーターを待っている人がいて恥ずかしかったのでやめた。

2人でエレベーターを降り、マエダ電気を出る。

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