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名前で呼び合うようになってから、あきらくんとも配達に来てくれたときに軽い会話もするようになった。
でも特にそれ以上なにかあるわけでもなかった。
手越さんが配達に来てくれる時と同じ感じだ。
今日の配達もあきらくんだった。軽く話をして「どうもありがとう!」とドアをしめた。
家に入り、パソコンに向かって仕事を再開しようかと思った時に携帯が鳴った。
…知らない番号だ。
普段知らない番号からの電話には基本でないのだが、なぜかわからないが出ようという気になった。
「…もしもし?」
『あ!もしもし!』
…聞き覚えのある声だ。
『杉田さんの携帯ですか?宅配便会社〇〇センターの寺田です!』
「あきらくん?!」
『はい!すみません、これ会社の携帯です!』
何かあったのだろうか。
『実はさっきお伝えし忘れた事がありまして…』
『僕、明後日から連休入るんです。そのあと別のコースの日が続いててゆうさんのとこのコース2週間くらい入れなくて…。それさっき配達のとき伝え忘れてて』
「あ、そうなんだ!わざわざありがとう。どこか行くの?なんかさみしいね〜(笑)」
『いや、全然何の予定もなくてこの辺にはいるんですけど(笑)有休消化しなきゃいけなくて』
「そうなんだね〜」
「じゃあ……バレンタインにチョコ渡したかったんだけど…残念っ。」
実はバレンタインにちょっとした差し入れをしたいなとチョコを買っていた。手越さんにも買っていたが、あきらくんのと少し差をつけた。
あきらくんにだけ用意して“…え、この人俺のこと好きなの?やだなこんなおばさんに好かれてるなんて”と思われても嫌だと思って手越さんにも用意した。
でも、あきらくんのほうが特別だというのもちょっと分かってほしくて違うものを用意した。
そもそも受け取ってもらえるかもわからないし迷惑かもしれないが…。
連休を伝えられても「そうなんだね」以外ほかに返事のしようがなくて余計なチョコのことまで話してしまった。
『え?!?!チョコほしいです!!!!!』
『今日受け取りに行ってもいいですか?!?!』
『もういま午前中の配達終えてセンター戻るので午後行かせてもらいます!!』
と矢継ぎ早に言われて電話が切れた。
お得意さんにはわざわざ連休前に連絡してるんだな、ほんとに真面目だな。大変だな。と思った。
それと同時に一気に緊張が高まった。
チョコ渡したいなんて好意があるの丸出しみたいだと。でも口から出た言葉は戻らない。
軽くチョコを渡そう。
そう思ってチョコを用意した。
午後になり、まだかまだかと思っているとインターホンが鳴った。
彼が来た…!
「はーい!」
といつも通りに出る。
『丁度午後も荷物あったんで持ってきました!』
「ありがと〜!」
お互いちょっと緊張してるのがわかる。
「…これ、チョコ!よかったら休憩中にでも食べてね」
『ありがとうございます!!何作ってくれたんですか??』
「え!手作りじゃないよ〜!ちゃんと買ったやつだよー!!」
『…手作りが良かったなぁ…』
えっ。
本気か冗談か分からなかったからとりあえず笑って誤魔化した。
すると、
『これ、お返しです♪俺の好きなやつです!』
と差し出された袋にはコンビニスイーツが2つ入っていた。生チョコとミルクレープ。
「わー!どっちも大好き〜!嬉しい!ありがとー!!」
『これ美味しいですよね!!』
そのあと少し話したがなかなかあきらくんがトラックに戻ろうとしない。
「ありがと、わざわざ来てくれて!忙しいだろうからもう仕事戻って〜!ごめんね、こさせて。ありがとう!」
『いえ、ほんとにありがとうございます!』
とはいうものの、なかなか戻らない…。なんだろう…。
まだ時間あるのかな?
「連休も教えてくれてありがとう。お得意さんには言ってるの?色んなお客さんいるだろうから大変だよね」
『こないだ変な女の人いて!俺普通に配達してたんですけど、“勘違いさせるような笑顔向けるな”ってクレーム入って』
「え。…若い人?」
『いや、ほんとにおばさんです』
…これは…牽制されてる…?
推しではあるけど、好きって勘違いされてたら痛いしなんか恥ずかしい…!
「接客だもんみんなに愛想よくするよねえ。大丈夫、勘違いしないからね!(笑)(笑)」
『…俺ゆうさんになら勘違いされてもいいな〜…』
「何言ってんの〜!(笑)」
と、ここで彼の会社の携帯がなった。再配達依頼の電話だったようだ。
なのでバイバイしたが彼の言った勘違いされてもいいという言葉が頭から離れなかった。
こういう事他の人にももし言っているならそりゃ勘違いするだろう…と思った。
それと同時に変に浮かれないようにしようとも思った。
手作りが良かったという言葉もどう受けとっていいか分からなかった。
彼からもらった生チョコを食べながら言われた言葉と彼の笑顔を反芻していた。