[文也目線]
喫茶店に入るとすでにボックス席で律と卯月が待っていた
「久しぶりだね」
「よ」
声をかけると俺達が来たことに気づいたらしい律と卯月が顔をあげる
「よう!文也、氷雨」
「久しぶり」
目が合うと律は快活な、卯月はシンプルな挨拶が帰ってきた
彼らは同じ黒創の仲間だ
俺たちは律と卯月が座っている所の向かいに二人で腰をおろす
二人を見てすぐに相変わらずだなぁと思わず苦笑する
「卯月また律のYシャツ来てるのw?」
「大きめサイズが好きなんよ」
なぜ律のだと分かったかと聞かれれば見ればわかると言える
律と卯月は身長は7cm程しか変わらないが細身で華奢な卯月が骨格がしっかりした骨太の律のYシャツを切ればぶかぶかなのは見なくても想像がつくだろう
ボタンをしっかり上まで閉めていても鎖骨まで見えてしまうようなぶかぶか具合はYシャツの上にパーカーを羽織っていても彼の中性的な可愛らしさも相まってよく襲われないなと思う
「律も大変だねw」
「もう24時間煽ってくるこの人」
律に同情の声をかけると律も苦笑混じりに卯月を指差しながら軽口をたたく
とうの卯月はそ知らぬ顔でドリンクを飲んでいる
「お前よく襲われないなw」
さっきまさに俺が思っていたことを氷雨が卯月に聞くと卯月はニヤリと笑う
「俺、口では負けないからね。すぐに諦めるよ」
彼は華奢な体型を裏切らず力量や身体能力はあまり高くないが分析力や語彙力に長けているため、持ち前の毒舌で割りとなんとかなるらしい
「律は気が気じゃなさそうだけどな」
「ほんとによ。こっちはヒヤヒヤしておちつかねぇつうの。外でこんな格好しないで欲しいわ」
律の半ば隣の本人に聞かせるような愚痴に氷雨も苦笑している
「卯月わざとやってるのw?それ」
「おしえなーい 」
俺の質問にものらりくらりと答えるが、あのいたずらっぽい笑みは多分確信犯だろう
「というか今日は雑談するために集まってるんじゃないでしよ」
すると話題の中心だったはずの卯月の一言で忘れられかけていた本来の目的を思い出す
「そうだそうだ忘れる所だったね」
「久々の共同の依頼だな 」
そう。今回は基本ツーマンセルでの行動である依頼の、二組共同ミッション。フォーマンセルで依頼のミッションをこなすための打ち合わせなのだ
[氷雨目線]
今日は、色々と情報共有などをして解散した日から5日。決行の日だ
「じゃあ卯月は車で待機。無線で情報たのんだぞ。俺達は二手に別れる。文也はターゲットを殺る。俺と律は東棟から資料をパクってくるぞ」
俺の指示に皆理解した様子を見せる
「ターゲットは西棟の会議室に一人だよ」
「りょーかい」
建物内の監視カメラを見ている卯月の情報に文也が頷き、一応サイレンサー付きの銃をすっとしまう
任務とはいえ信頼があり砕けた雰囲気のこのメンバーは割と好きだ
「監視カメラはハッキング済みやから写っても問題ないよ。管理室には何の異常もない時の映像を流しておくから。敵きたら教えるからイヤホンはずさんでな。あと目線カメラて三人の状況確認もするから付けてってな」
卯月の補足に頷く
卯月は車で待機とはいえハッキングなどが得意で情報収集やこういった場面で居なくてはならない存在だ
「行くぞ」
イヤホンと目線カメラを装着し、車を出る
「変なことすんなよ文也。」
「今回はしないよw 」
「言ったからな」
俺達は軽く言葉を交わしてそれぞれの方向に二手に別れた
俺と律は東棟の裏口の前に立つ
『東棟は大丈夫だよ。入っちゃって。西棟は中1人ノックアウトさせればいける』
イヤホンから聞こえる卯月の指示に従って律と視線で会話し、中へ入る
薄暗い廊下を足音を押さえて進む
階段を上り極秘資料がある部屋の前に立つ
『中に二人。出来るだけ同時にノックアウトして。見られたら殺しても問題ないよ』
「室内の立ち位置は?」
小声で卯月に問う
『中央の机の、入り口から向かって左に一人。もう一人は奥の窓際。どっちも入り口は見てないから奇襲は可能』
「ん。じゃあ律は左の奴を頼む俺が窓際の奴の近くまでいったら合図するから同時にやる 」
「分かった」
頷きあい、扉をそっと開けて中に入る
しゃがんだまま中央の机にそって歩き窓際の奴の足元にきたと同時に目を合わせて頷く
瞬間同時に立ち上がってそれぞれ相手の首を締める
殺さない程度に相手が気を失ったタイミングで力を緩めると相手はそのまま崩れ落ちた
律を見ると律もノックアウトさせたようで目があった
そして極秘資料を回収する
ノックアウトした奴らに三十分程の記憶を失くす薬を飲ませ部屋をあとにした
「資料回収完了した」
『おっけ』
[文也目線]
『東棟は大丈夫だよ。入っちゃって。西棟は中1人ノックアウトさせればいける』
「りょ。」
卯月の指示に短く答え、早速建物の中に入る
入ってすぐは誰もいなかったが、廊下を曲がった所に一人いた
殺しちゃまずいかなw
さっき変なことをするなと氷雨にとがめられたばかりだしなと思う
仕方なくそろそろと近付いて首を叩いて気絶させる
脱力した敵を壁にもたれさせてから目的の部屋に進む
「室内にはターゲット一人?」
『うん。机で呑気に昼寝中やね。仕留めやすくていいじゃん』
「分かった」
扉を開けて室内に入ると卯月の言った通り呑気に寝ているターゲットが見えた
どんな殺しかたがいいかなぁ
ターゲットの間抜けな寝顔を眺めながらそんな事を考えていると急にターゲットが目を覚ました
「っ貴様···」
「おっと。ちょっと黙って?」
ターゲットが叫びかけた瞬間銃を見せびらかす様にターゲットに突きつける
「···馬鹿が···ハハッ···こんなところで撃ったら銃声ですぐに人がくるぞ······っ!?」
目線だけを動かして余裕そうに喋りだしたターゲットは俺が銃で撃ち抜いたペットボトルを見て言葉を詰まらせた
“音もなく”撃ち抜かれたペットボトルは机から落ちて開いた穴から出た液体で床を濡らしている
俺が使った銃はサイレンサー付きだから派手な銃声などしない
「うるせぇよ?黙れって言ったよね?」
淡々としつつも逆らえない圧のある二度目の命令にターゲットは今度こそ黙る
俺は銃口をターゲットに突きつけながら歩いてターゲットの背後にまわり少しずつ距離をつめる
「この前の任務もお前の関係だったよ。」
コツコツと足音がなる
振り向けない状態で背後から脅威がじわじわと近付いてくるのは大層怖いだろうね
「いい加減飽きた 」
「ひっ···」
ターゲットの後頭部に銃口を押し付ける
「さっさと朽ちろゴミ野郎」
静かに引き金を引く。カチャリという僅かな金属音とともにターゲットが崩れ落ちる
流し目ぎみにターゲットの死亡を確認して、サイレンサー付きの銃をしまう
「ターゲットを排除。任務完了」
無線で卯月に伝えると苦笑混じりの返事が帰ってきた
『鮮やかだったよ。さすがw。でも殺しかたは相変わらずやなぁ。残酷で綺麗。氷雨には見せられないね』
「ふふっ。つい意地悪したくなっちゃうの。氷雨には言っちゃ駄目だからね?」
不敵な笑みを浮かべて返す
『言わないよ。言えないw』
卯月の言葉に頷いて、部屋の窓枠に手を掛ける
帰りはこっちの方が効率がいいので窓から部屋をあとにした
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