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反響する。「……ねぇ、みこちゃん」
「ん……?」
「ここから出られたら、なにしたい?」
少し考える間。
「……まだ、わかんないかな」
正直な答えだった。
すちは小さく笑う。
「そっか」
数段、階段を上る。
「……こさめちゃんのことさ」
みことの体がわずかに強張る。
「みこちゃんのせいじゃないよ」
静かな声。
「こさめちゃんは、このゲームに
殺されたんだ」
足を止めずに続ける。
「だからさ。胸張って、
元の生活に戻っていい」
「……ぇ?」
みことの声が震える。
「みこちゃんは、もっと不真面目
でもいいんだよ」
一段、また一段。
「誰かのためじゃなくて、
自分のためにさ」
みことは何も言えない。
ただ、背中で小さく息を呑む。
「……ほら、少しくらい卑怯な方が、
人として深み出るよ」
冗談みたいな口調。
でも、どこか本気だった。
「……そうかな?」
「うん。きっとそうだよ」
長い沈黙のあと。
みことが、小さく笑った気配がした。
「じゃあ……生きて帰れたら、
そうなれるよう頑張るね」
「うん」
すちは短く返す。
階段はまだ終わらない。
けれどさっきまでより、
ほんの少しだけ――
重さが軽くなった気がした。
ーーー
長い階段を登りきった先。
そこには――出口があった。
重厚な金属扉。
外の光が、わずかな隙間から
差し込んでいる。
誰もが、息を止めた。
「……やっと」
みことが小さく呟く。
その瞬間。
――ビーッ、ビーッ、ビーッ
警報が鳴り響いた。
赤いランプが天井で回転する。
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「……うそだろ?」
なつの声が、乾いている。
冗談であってほしい、という響き。
出口の上。
人の形をした看板が取り付けられていた。
シルエットがいくつか並び、
そのうち――二つだけが光っている。
すちは目を細める。
「……ただ人の形してるだけ、
ってわけじゃなさそうだね」
低く呟く。
「今回も、なんか“うまいやり方”が
あるんだろうな」
いるまが周囲を見回しながら言う。
「……障害の数とかじゃね?
六角形の部屋と、さっきのエレベーター。
それで二つ」
自分で言いながら、考えを組み立てていく。
「どっか見落とした障害があってさ……
引き返してクリアすれば——」
「引き返してる時間なんて……ないだろ」
なつの声が震える。
警報音が焦りを煽る。
いるまも落ち着かせようとするが、
呼吸が少し乱れている。
「きっとこのエリアにもなんかあるって……落ち着けなつ。
このドアも、壊すとかで——」
そして、すちを見る。
「……すち!どうにかしろよ!!」
沈黙。
警報音だけが鳴り続ける。
すちは、看板をじっと見上げたまま
動かない。
光っている“二つ”。
人の形。
(……数じゃない)
ゆっくり息を吐く。
「いるまちゃん」
静かな声。
「これ、“障害クリア数”じゃないよ」
全員の視線が集まる。
「……じゃあなんだよ」
すちは少しだけ笑った。
「たぶんこれ――」
一拍。
「ここを通れる人数だね」
警報音が、さらに大きく鳴った気がした。
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