テラーノベル
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風で花びらが舞う桜並木を僕は自転車に乗り、
ゆっくりと眺めながら走る。
「風が気持ちいいなあ」
今日は、学校が半日で終わった為、少し遠回りをしてみた。
声には出さないが、遠回りしてよかったと心で思う。
すると、後ろから僕を呼ぶ声が聞こえる。
振り向くと、長い髪をなびかせてやってきたのは、後輩の女子だ。
「先輩!」
「ああ、レミちゃん」
やってきたのは、同じ高校で後輩そして同じアルバイトで先輩のレミだ。
「先輩、今からアルバイト行きますか?」
「うん。この後、予定ないからね」
「じゃあ、私も行こうかな」
僕は、自転車から降り、押しながらレミと桜並木を眺めながらアルバイト先に向かった。
人通りは少なく、海が見える景色が良い所に建っている3階建てのビル。
その2階に僕とレミがアルバイトをさせてもらっている事務所がある。
ちなみに、1階は喫茶店。3階は事務所の所長が住んでいる。
階段を上り、2階にある『相楽(さがら)探偵事務所』と掲げている扉を開ける。
「ああ、おかえり。庵、レミ」
ソファーに座り、優雅にコーヒーを飲んでいる男性が僕達に声をかける。
この人は、相楽探偵事務所所長の相楽青輝(さがらあおき)先生。
有名大学を卒業後、弁護士の資格を取り、この探偵事務所を立ち上げたんだとか。
「あ、そうだ。庵、1つ頼みたいことがあるんだ」
「はい。何ですか?」
「それは……、行ってからのお楽しみだ」
「は?……はぁ!?」
「さあ、行くぞ!」
「ま、待ってくださいよ!」
「レミ、この前、頼んでいたのよろしくな」
「らじゃー」
「ついてこい、庵!」
僕、萩原庵(はぎわらいおり)はこの相楽探偵事務所でどんなドタバタな依頼に巻き込まれていくのか。
この時の僕はまだ知らない。
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