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目が覚めた時、真っ白な天井が目に入った。

ここどこ?

首を動かしてあたりを見ると、ドラマに出てくるような緊急治療室にいた。

「そうだ….、確かトラックに….。」

撥ねられた?その瞬間、ぶわっと恐怖が押し寄せてきた。

(い、生きてるっ。生きてるんだっ。)

心拍数が上がったからか、機械から警報に似た音が鳴り響いた。

慌てて看護師さんがやって来る。

「大丈夫ですか?!」

「は、はい。」

震える唇で何とか返事をする。

「名前言えますか?」

「ふ、ふじさ、わりょうか、です。」

「どこか痛いところありますか?」

「い、いえ、だいじょ、ぶです。ちょっとおも、おもいだして….。」

看護師さんたちが”PTSDかもしれない”と話している。なんだっけ?トラウマによるストレス障害だっけ。

「藤澤さん。関係者の方が来られてるんですが、お会いになりますか?」

関係者?お父さんとお母さんだろうか。とりあえずコクコクと頷くと、しばらくして看護師さんが一人の男性を連れて来た。

「…..誰?」

僕の言葉に、”え?”と看護師さんが疑わしそうに男性を見る。男性は慌てて

「え!?マネージャーの藻部ですよ!冗談はやめてくださいよ!」

男性は慌てて名刺と身分証を看護師に見せる。

「マネージャー?何のマネージャーですか?」

ここで僕の様子を見ていた看護師さんが

「もしかして解離性障害….?」

その後すぐに色んな検査や問診が行われた。

その後、なぜかめちゃくちゃ豪勢な病室に移され、お医者さんがやってきた。

「藤澤さん、解離性健忘の症状が見受けられます。」

「かいりせいけんぼう?」

「ストレスやトラウマによって引き起こされる精神疾患で、簡単に言えば記憶が抜け落ちてしまう病気です。その中でも藤澤さんは選択的健忘、または限局性健忘と思われます。」

なるほどわからん。

「つまり、ストレスやトラウマから自分の心を守るための防衛機能として一部の記憶に蓋をしている状態です。」

「ストレス….トラウマ….。」

「藤澤さんは特殊なお仕事をされていますし、我々では計り知れない重圧もおありでしょう。なので、決してマイナスの原因というわけではないんですよ。」

何故かフォローするお医者さん。そう言えばなんとなくバンドしてるのは覚えてた。詳しくは思い出せないけど、売れなくて苦労してたんだろうか?

「藤澤さん達に救われた人はきっと大勢いいます。かくいう私もその一人でして。」

「そうなんですか?」

「焦らずゆっくり治していきましょう。」

「よろしくお願いします。」


お医者さんが出て行ってから、急激に眠くなってきた。

「あの、マネージャーの….。」

近くに立っていた男性を呼ぶ。名前なんだっけ?

「どうかしましたか?藤澤さん。」

「ちょっと眠くって…. 。」

「分かりました。部屋の外に居ますので、何かあったらお声がけください。」

「え….?」

もう夜も遅いし帰っていいよって言いたかったけど、駄目だ眠くて仕方ない。そこで意識が途絶えた。





「だからごめん。」


なんだか懐かしい声が聞こえてきた

誰の声?思い出せない


「離してあげられそうにないや….。」


とても苦しそうな声が聞こえてきて、胸がギュッとなる。

僕のせいでキミは苦しんでいるの?

謝りたいのに意識はまた深く潜っていく


頬に触れていたぬくもりが離れ、冷たい空気に包まれる。

人の気配が遠ざかり、部屋の外へと出て行った。


「….ごめ….なさ….。」


傷つけてしまってごめんなさい….






朝目覚めるとそこには

「見知らぬ天井だ….。」

エ〇ァが反射的に出てきた。

「夢じゃなかったんだ….。」

トラックに撥ねられた?けど、それにしては怪我も軽いし骨折してる風でもない。昨日思い出しただけでガクブルだったのに、一晩経って落ち着いたのか昔に見たドラマの映像のように客観的に思い出せた。しかし、蓋がされた記憶はまだ戻っていないようだ。

その時、部屋の外が何やら騒がしくなった。

「「涼!!??」

血相を変えた両親が部屋に飛び込んできた。

「お父さん!お母さん!」

久しぶりに見る二人は、憔悴しきった顔をしていた。

「大丈夫なの?!怪我は?!」

「心配したんだぞ!!」

「ごめんなさい。」

そう言われても、僕のせいじゃないしなぁ。

「お取込み中、失礼します。」

昨日のマネージャーさんとスーツを着た知らない女性が部屋の入口に立っていた。

「まぁ、ご無沙汰しております。」

お母さんとお父さんは女性にぺこぺことお辞儀をしている。二人の知り合い?

「こちらこそ、ご無沙汰して申し訳ありません。落ち着かれたらで結構ですので、涼架さんの状態についてお話したいことがあります。」

その後、僕が表面的な怪我以外はほぼない事、事故処理対応は事務所がしてくれること、僕の記憶が一部亡くなってることを女性が両親に話していた。っていうか、事務所の人だったんだ。

「本当なの?涼。」

お母さんがこちらを見る。

「うん。なんとなくバンドしてたってのは覚えてるんだけど紙の上に書かれた文字みたいにそれしか思い出せないんだ。」

「そう….。」

「まぁ涼が無事だったんだ。それでいいじゃないか。」

「それもそうね。」

笑う二人に、僕も笑った。両親を悲しませないで本当に良かった。

「もちろん、涼架さんの記憶が戻るサポートと日常生活のサポートは責任をもってやらせていただきます。それと、お二人がこちらに滞在している間のサポートも事務所がさせていただきます。」

「いや、我々の世話までさせるわけにはいきませんので、どうぞお構いなく。」

慌てて断るお父さんに、女性は微笑み

「涼架さんはうちの事務所になくてはならない存在です。なので、お気になさらず。」

マネージャーさんと事務所の人が帰っていった後、お母さんは改めて聞いてきた。

「本当に思い出せないの?」

「うん。」

「日常生活は大丈夫?」

「全然問題ない。けど、住んでるところとかボヤっとしてる。」

何かを考えこんでいる二人。

「あのさ、お父さん、お母さん。」

「どうした?」

「僕がいたバンドってどんなんだったの?」

「どんな….。まず元貴君ってすごいVo.の子がいて、Gt.の若井君。で涼がkey。」

「キーボード?」

最初僕がVo.と思ってたけど違った。でもkey.って….。

「元貴君の考えるバンドに当時の涼の雰囲気がマッチして誘われたんだよ。」

「僕キーボードなんて弾いたことないけど?」

「見た目先行だったらしいわよ。」

「そうなんだ?てか、事務所の対応すごいね。ただの所属タレントにここまでする?」

「チーフマネージャーさんも言ってたでしょ?涼は事務所になくてはならない存在って。」

「あの女の人チーフマネージャーだったんだ。でもお世辞でしょ?」

「稼ぎ頭だもの。本当でしょうよ。」

「稼ぎ頭?」

え?売れないバンドマンじゃないの?

「あー、安心したらお腹減ったわね。涼、近くに美味しいご飯屋さんない?」

「ここら辺は知らないよ。」

「しょうがない、ちょっくら病院の食堂行ってくるわ。」

荷物を置いて、二人は食事に行ってしまった。色々聞きたかったけど、多分ご飯も食べずに駆けつけてくれたんだろう。戻って来てから聞けばいいか。

『コンコン』

音がした後扉が開き、知らない男の子が入ってきた。え?誰?

しかし、その男の子は僕を見るなり

「涼ちゃん?!」

嬉しそうに叫んだが、その声量にビビる。

「えっと….どちら様ですか?」

聞いた瞬間、男の子は悲しそうな表情になった。

僕の知り合い?記憶障害話した方がいいのかな?

そんなことを考えていると、男の子の後ろに居たマネージャーさんに何か言い、マネージャーさんは部屋を出て行った。超気まずい….。

「藤澤さん。」

「は、はい….。」

「俺は大森って言います。」

話していく内に彼がすごいVo.の元貴君であることが分かり、僕の記憶障害についても把握していた。そして僕をバンドに誘った時の話になり

「一目惚れだった。」

ふんわりと笑った彼があまりにも綺麗で、ドキッとしてしまう。

「金髪でふわふわした雰囲気の年上がよかったから、藤澤さん見て”この人だ!!”って。いやーあれはマジで運命を感じたね。」

「なんだ、そっか….。」

お母さんが言ってた”見た目先行”ってこの事だったんだ。そっか…..。

「どうしたの?」

思わず笑ってしまった。

「一目惚れとか言われたからびっくりしちゃった。」

でも、こんな綺麗な男の子にそんなこと言われたら誰だってびっくりするよね。

その後、ちょっとだけ話して元貴君は帰って行った。

ご飯から帰って来た二人に元貴君が来たことを伝えると

「挨拶したかったけど忙しいからしょうがないわね。」

お母さんの言葉にお父さんもうんうんと頷いている。

「ねぇ、バンドってどんな感じだったの?」

「動画チャンネルあったわよ。見る?」

「え?病院で携帯駄目なんじゃ….。」

「看護師さんに確認したけど、今この階には涼しか患者いないし、携帯使っちゃ駄目な精密機械ないから今のところ使っていいって。」

そう言うとお母さんは自分の携帯で動画サイトを見せてくれた。

「うわぁ….。」

そこはまさに煌めく世界。でも、

「….これ本当に僕?」

なんか違う気がする。

「化粧してるし衣装も曲や場面に合わせてド派手なものもあるからね。」

記憶がないからか実感がわかないし、なんか自分じゃない全く知らない人みたい。

「僕彼女とかいたのかな?」

「これだけ人気なんだから彼女の一人や二人はいたでしょ。この歳の息子にいちいち”彼女できた?”とか聞かないからお相手の情報は知らないけど。」

そこへ、お父さんがニヤッと笑い

「近々紹介したい子がいるって言ってたぞ。」

「え?」

「私聞いてない?!」

「男同士だから話せることもあるんだよ。」

「えーズルいー。」

彼女いたんだ….。どんな子だろう。その内お見舞い来てくれるかな?


”一目惚れだった”


何故か元貴君を思い出してしまった。元貴君も彼女とかいるよね。いや、いない方がおかしい。

”ズキッ”と胸が痛む理由は、記憶が戻ったら分かるんだろうか?

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