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うわ……重いっス……😢 フィニスが本気で刺したのに、魔女が平然としてるの、ゾッとした。結界の中での無力感がひしひし伝わってきて、読んでるこっちまで息が詰まったよ。エラリスが連れてかれなかったのも気になる…次もっと闇深くなるのかな、続き待ってる🌙
「ん……」
テントの隙間から微かに感じる明かりで目を覚ましたエラリス。何も考えられない頭を精一杯動かしながら、辺りを見回す。
静かに眠っているアルテアと涎を垂らして寝ているニティアがいた。
2人を起こさない様に、ゆっくりとテントから出るエラリス。
「お、体調は大丈夫か?」
テントから出ると、ちょうど火を起こそうとしているフィニスがいた。ぼーっとする頭でフィニスを見ていると、徐々に昨日の記憶が蘇ってきた。
「!?……契約は?!」
エラリスのいきなりの真顔に、一瞬驚くフィニス。
「リヴァレーとの契約なら無事に成立したはずだぞ。ゼフィリアがエラリスの魔力を使いすぎたとかなんとかで、契約するのに魔力を使い切っちゃったとかなんとか言ってたな」
「そうだったんだ……ごめん」
「ん?別に平気だよ。珍しいものも見れたし、そもそも元からここで一晩明かすつもりだったからな」
「そう……」
そう呟き、フィニスの元へと歩み寄るエラリス。フィニスの隣に座ると、エラリスは再びフィニスへ顔を近づける。
「ど……どうした?」
「フィニス。フィニスの旅の目的は何?」
じっとフィニスの目を至近距離で見つめるエラリス。
「も、目的?そうだな……」
一瞬だけ間を開けた後、フィニスもエラリスの目を見つめ返す。
「魔女による悲劇を繰り返させたくないっていうのが今は大きいけど……世界を見てまわりたいっていう気持ちもあるかな」
少しだけ照れる様に答えるフィニス。しばらくフィニスの目を見つめた後、エラリスが優しく笑った。
「私も貴方に付いていく。ゼフィリアにリヴァレー。魔力が無いだけじゃ、あそこまで気に入られることなんてないはず」
「え?」
「……私自身も、貴方に興味が湧いたし。それに、世界を回るなら、他の精霊にも会えるかもしれないから」
なんとも言えない不思議な雰囲気に包まれる2人。慣れない空気に、フィニスの鼓動が少しだけ大きくなる。
『朝から2人とも元気だな』
「「!?」」
湖からひょっこり出てくるリヴァレー。
「な、何わけのわからないこと言ってんだよ!」
「ん?まだ体調は万全じゃないけど、元気にはなったよ」
リヴァレーに気づき、フィニスと距離をとるエラリス。そのタイミングで、背後にあるテントからニティアとアルテアが出てきた。
「ふぁ〜……おはよう」
「おはようございます。あら……エラリスさん、体調は大丈夫ですか?」
「迷惑かけちゃってごめんね。大丈夫だよ」
「無理はなさらないでくださいね」
「ありがとう」
続いて荷馬車の荷台から出てくるルシオとガルド。
「お、みんなは早いな」
「おはようございます。フィニスさんも、火起こしありがとうございます。せっかくなので湯を沸かしましょう。とっておきの紅茶を出しますよ」
「え?ホント!?なんか久々に飲む気がする♪」
風に揺られる葉の音が囁いている静寂な森の朝。
そんな森の中に、いつもの森とは異なる、賑やかな声が広がっていった。
⸻
集落へ到着するや否や、数人がガルドの元へやってきた。
「ガルドさん、お久しびりです」
「物資を持ってきました。一応必要そうなものを選定して持ってきたつもりですが……足りないものがあれば仰ってくださいね。次回持ってきますから」
「いつもありがとうございます!」
そのうちの1人が、集落の奥へと消えていく。皆にガルドが来た旨を伝えにいったのだろう。ガルドと残った集落の人間がゆっくりと荷物を下ろし始めた。
フィニス達も手伝おうと物資に手を伸ばそうとすると……
「フィニスさん、ここは大丈夫です。せっかくですし星見の丘でも見てきたらいかがですか?……って、魔族がいたらアレですけど(笑)」
「ここは初めてですか?でしたら是非一度見にいってみて下さい。魔族?も毎日いるわけでもないですし、いたとしても刺激さえしなければ襲われることもないと思いますよ」
ガルドの言葉に、隣の若者が笑いながら話を続ける。集落の人間がそう言っているということは、そういう事なのだろう。フィニス達は一度視線を合わせた後、笑いながら頷いた。
「そうか、ありがとう。見に行ってみるよ」
仮に魔族がいたとしても、それはそれで白髪の魔女に繋がる情報になるかもしれない。ガルドを除いた5人は、星見の丘があると言われる集落のさらに奥へと足を進めていった。
⸻
「刺激しなければ大丈夫……か」
ポツリと呟くルシオ。
「集落の人が言ってるんだからそうなんだろうけど、にわかには信じられないわよね」
「私も何度か行ったことあるけど、その時にはいなかったかな。魔族なんて」
「毎日いるわけではないって言ってましたしね。今日も……いなければいいんですけど……」
「いたとしても、刺激しなければいいって言ってたし。とりあえず行けるだけ行ってみようぜ」
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耀聖(ようせい)
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声良の書庫
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集落を抜け、更に短い林道を抜ける。
なんだかんだで絶景と言われた景色が気になっているのだろう。いつのまにか先頭を歩いているフィニスが、古びた案内板に記載されている通り、段々となった岩肌を先に登っていった。
そして最上部まで登り詰めたフィニスが、その場で足を止めた。
「……ウソ……だろ……」
「どうしたの?」
身動き一つ取らないフィニスに、ニティアが声をかけるも反応すらしない。その姿に一瞬警戒を強めるルシオ。
「魔族か!?」
しかし冷静に答える2人。
「変な魔力は感じない」
「私も、魔族や魔物の気配は感じません」
「ん?って事は……景色に見惚れでもしたのか(笑)」
そのままフィニスを追いかける様に岩肌を登る4人。
全員が登り終え、その先へと視線を移す。
「……は?」
視線の先。絶景と言われている丘の先に佇むひとつの影。
「どうして……?」
白く長い髪を靡かせながら
「??」
丘から景色を見ている
「白髪の……魔女……」
白い魔女がそこにいた。
⸻
全員が身動き一つできずにいると、白髪の魔女はこちらを見向きもせずに呟いた。
『……ここで……お前らと戦う気はないよ』
小さく、そして距離もあるはずなのに、全員の耳にしっかりと届く声。
「あれだけのことをしておいて……その言葉を信じろと?」
額から冷や汗を流したフィニスが目の前の魔女に向かって言い放つ。
その言葉に、首を少しだけ後ろに回す魔女。
『私が嫌いなのは……醜い人間だけ』
その言葉を発した瞬間、突如魔法陣が魔女の隣に展開され、2つの剣を持った魔族が姿を現す。
「てめぇ……あの時の……」
「言ってることが全然違うじゃない!」
咄嗟に戦闘状態へと移行する5人。
しかし、魔女は5人にでは無く、突如出現した魔族に冷たい視線を送る。
『何しに来た』
『いえ……魔力の揺れを感じたもので……』
小さくため息をした後、今度は5人に視線を移し、一人ひとりに視線を合わせる魔女。
視線が合っただけで、全身から血の気が抜けていくような感覚に陥る5人。武器を手に持ったまま、身動き一つ取れずにいた。
『2人。借りていくぞ』
魔女がそう言い放った瞬間、魔女の足元に巨大な魔法陣が展開される。そして次の瞬間……
「!?なんだ……ここは……」
「結界空間……ジャヌスさんと同じ……」
先程までいた丘から一変。ニティアとフィニスの目の前に広がっていたのは、かつてジャヌスと修行をしていた時と同じ、無機質な空間が広がっていた。
周りを見回すと、ルシオやアルテア。エラリスの姿は無く、魔女と魔族。ニティアとフィニスの4人のみがこの空間に連れてこられたようだ。
『手は出すなよ』
視線をフィニス達に向けたまま、魔女が魔族に呟く。
『しかし……』
その言葉に対し、明らかに不機嫌な表情を見せた魔女が魔族を睨みつける。
『……!し、承知いたしました!』
急に頭を下げる双剣の魔族。
「あの魔族ですらいうことを聞かせられるくらいの存在ってことか……」
「冗談でしょ……」
手に持った武器を強く握りしめる2人。
『今回はお前も大人しくしていろ』
そう言って魔女が手に持った杖をくるりとひと回しした次の瞬間……
「きゃあ!!」
フィニスの後ろにいたニティアの叫び声が、無機質な空間に響き渡った。
フィニスが咄嗟に振り向くと、今にも首元に噛みつきそうな状態の白く輝く蛇が、ニティアの全身を拘束していた。
「くっ……てめぇ……」
『そいつを殺すつもりはないよ。フィニス……私を……』
「お前……なんで俺の名前を……」
静寂に包まれた空間。
魔女が小さくため息をし、手に持つ杖を消して両手を広げる。
『私は抵抗しない。その剣で刺してみろ』
「!?」
『どうせ殺せはしないが……もし殺せることができたのならば……お前の目的の一つ。魔女の惨劇を止められるかもしれないぞ』
「舐めやがって……」
『ヴァルフィス。私が何をされてもお前は動くな』
『……!!……かしこまりました……』
「フィ……ニス……やめて……罠かも……」
締め付けられて息が上手くできないニティアが途切れ途切れになりながら口を開く。
『言っただろ。今は戦うつもりはないと』
広げた片方の腕をニティアに向ける。
「うぐっ……!!」
締め付けが強くなったのだろう。ギリっという音が聞こえる。
「やめろ!」
『早く来い』
「くっ!」
剣を握りしめ、魔女に向かって駆け出すフィニス。
「後から後悔するんじゃねーぞ!」
片方の剣の魔法を発動させるフィニス。普通の剣と振動している剣。その二つの剣を魔女の胸元に向かって思いっきり振りかぶった。
ズシャッ……
鈍い音が響き渡る。
フィニスの振りかぶった二つの剣は、魔女の胸元。心臓があるであろう場所を貫き、剣が刺さっている場所からは大量の血が溢れ出る。
「はぁ……はぁ……」
剣を突いただけにも関わらず、大量の汗が流れ出ているフィニス。視線を胸元から上げて、魔女の顔に視線を移すと……
つー……
目を瞑っている魔女の口元から血が流れ出ていた。
『……満足したか?』
「!?」
言葉を発したあと、静かに目を開ける魔女。
自分から一歩二歩と後ろへ歩き、胸元に刺さった剣をゆっくりと引き抜いてゆく。
ボタボタっ……
大量の血が地面へ流れ出るも、平然としている魔女。
ペッ!
口から血を吐き出す魔女。腕で口元を拭った後、フィニスの顔をじっと見つめる。
『……分かったか?そんな攻撃じゃ私は死ねない……。お前とじゃ戦いにもならないんだよ』
幻覚や魔法じゃない。完全に突き刺した感触……流れ出る血の熱さを感じていた。
何が起こっているのかが分からず、魔女を突き刺した体勢のまま動けずにいるフィニス。
魔女が右手をかざし、フィニスが再び剣を構える。
「お前……何をした……」
かざした右手に杖が現れる。
『何もしていない……言った通りだよフィニス』
コツン
魔女が杖で地面を鳴らした瞬間……
サァー……
あたりの景色が一変し、先ほどの丘に戻っていた。
「がはっ……はぁ……はぁ……」
「おい!」
「ニティアさん!」
「!」
拘束を外されたニティアがその場で倒れ込み、アルテア達が駆け寄ってくる。
フィニスの目の前には、胸元が赤く染まった魔女。すでに完治したのだろう。血は流れていなかった。
再び全員一人ひとりに視線を送った後、小さく笑う魔女。
『ヴァルフィス。行くぞ』
振り返り、後ろに立つ双剣の魔族の方へ身体を向けた魔女がふわりと身体を浮かせる。
『はっ』
ヴァルフィスと呼ばれた魔族も魔女に続けて浮かび上がった。
「お前……何がしたいんだ……」
魔女を睨みつけるフィニス。
『……ここに……もう用はない』
再びフィニスの方へ身体を向ける魔女。
『次は殺せるといいな』
笑ってそう言い残すと、その場から白髪の魔女と魔族の姿が消えてなくなっていた。
赤く染まった二つの剣を強く握りしめ、フィニスは魔女達の消えた空を見つめることしかできなかった。