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前に泊まったのも会員制のホテルだったけれど、政宗先生はこういう場での振る舞いに本当にそつがなくてと感じていると、エレベーターが止まりドアが開いた──。
部屋の中へと案内をされると、その高級感と広さに目を見張るようだった。
センターには大理石のローテーブルを囲むように、シックなアイボリーカラーのソファーセットが置かれていて、
頭上のシャンデリアに照らされた室内の前方には、全面ガラス張りの大きな窓があり、都会の夜の景色が煌きを放ち星の海のように広がっていた。
「……綺麗」
窓の外を眺めて呟くと、
「都心では星は見れなくても、星のような夜景を見ることはできますよね」
脱いだスーツの上着をハンガーに掛けながら、彼が私を振り返った。
「本当に、綺麗で……」
感嘆の言葉しか出てこない私に、彼が近づいて来ると、
「君も、綺麗で……」
不意打ちで唇を捕らえた。
背中に腕がまわされ、体でのしかかるようにしてソファーに倒される。
「先生……」
はだけられた服の隙間から入り込んだ手の平が、脇腹を撫で下ろして、
片方の手が一つずつボタンを外す度に、肩に、鎖骨に、胸元に口づけが落ちる。
「……ん…ダメ…」
「ダメ…? どうしてです…?」
言う間にも、服が一枚また一枚と脱がされて行く。
「……だってまだ、お風呂にも入ってないのに……」
ボタンの開けられたブラウスの合わせ目を、ぎゅっと手で握り締めると、
「仕方ないですね」
と、彼が身体を離した。
ソファーに上体を起こし、締めているネクタイを黙って緩める姿に、
もしかして怒らせてしまったんだろうかと思う。
ネクタイを外した彼が、スリーピースのベストを脱ぎワイシャツに手をかけるのが目に入って、
「……先生、あの……」と、声をかけると、
こちらを流し見るように、ちらりと視線が投げかけられた。
そうして、メガネを取りテーブルの上にコトッと置くと、
「服を、脱ぎなさい」
彼が命令口調でそう言い、じっと私の顔を見据えた。
「…………怒っていて?」
拒んだことがやはり気に障ってしまったんだろうかと感じて、そう尋ねると、
彼が横目に私を一瞥した。
その冷ややかにも感じられる眼差しに、竦んでしまいそうになる。
「怒ってはいません」
一言を口にした彼が、
「脱ぎなさいと、そう言いましたよね?」
変わらない低めな声でそう続けて、「はい…」とスカートのチャックを下ろし、ウエストに手をかけた。
なんだか涙が出てきそうにもなっていると、彼が見咎めて、
「……なぜ、涙目に?」
と、私を見つめた。
「だって……なんだか、怒られているみたいで……」
口の中でぼそぼそと小さな声で言うと、
「ああ、そんなつもりでは……。つい習慣で言い方がきつくなって。先にシャワーをと言っていたので脱がなければと思っただけで……」
彼の両手にふっと頬が挟まれて、思わず堪えていた涙が零れ落ちた。