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莉乃ちゃん
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そう思い、目を瞑ろうとすると
「…っ、ごめん…なさい…」
苦しそうに謝罪を口にするひろに、一瞬で胸が締め付けられた。
正直、ひろが今なにを考えているかは分からない。
ただひとつ、分かることは「不安定」ということだけだろう。
「ひろ……」
一番そばにいて、一番にその不安を取り除いてあげたいのに、俺は眠っているひろの背中をさすってあげることしかできない。
前のように「大丈夫だよ」とは言えなくなっていた。
酷く、薄っぺらい言葉になる気がしたからだ。
そんなギクシャクとした生活が続いた
ある日の朝───
「今日さ、帰り遅くなるし俺はご飯いらないから」
出勤前、着替えをしながらひろにそう伝えた。
「え…っと、その…外で食べてくるってこと…?」
ひろはキョトンとして、どこか上ずった声で聞いてきたが深くは言わなかった。
「まあ…そんなところかな。なるべく早く帰るから、何かあったらLINEして」
不安にはさせたくなくて、なるべく早く帰ることを約束し、いつでも連絡を取れるようにそう言った。
少し濁すような言い方になったが、ひろは特に何も聞いてこなかった。
その日の夜───
ネオンが煌めく街の一角の、とあるバーに足を運んでいた。
「それで…宏樹くんとギクシャクしちゃって、俺を頼りに来たと?」
「…そんなとこ」
実の兄貴・遙…通称ハルに相談しに行っていたのだ。
以前、ひろを怒らせてしまったときも兄に相談したのをよく覚えており
今回も恥を忍んでハルに泣きついたというわけだ。
ひろにはスパダリ攻め(?)だとか言われたりしていたし、要するに頼りになる大人のように見えているのだろうが
兄の前では全てが崩れる。
「てか、宏樹くん今家に一人なんでしょ?一緒にいなくていいわけ?」
「…いや、ひろってば俺の顔見たくないのか、目合うと逸らすし…今は一緒にいない方がいいのかなって」
俺は最近のひろの行動や、同棲生活を思い返しながらハルに話した。
「ま、気まずいんだとは思うよ?でも…目が合うってことは敦のこと気にしてる証拠じゃん」
「それは…」
「宏樹くんも、早く敦と仲直りしたいって思ってんじゃない?」
「…そうだと、いいけどさ。向き合い方に悩んでて。ひろに俺の気持ちすら信じて貰えないってのに、何を伝えたらいいのか…」
俺は不甲斐もなく項垂れた。
いつものように、ひろの心に寄り添ってあげたい気持ちは山々なのに
それができずにいる自分自身の情けなさに嫌気が刺してくる。
すると、ハルが一呼吸置いてから口を開いた。
「じゃあ聞くけど。こんなギクシャクしても、宏樹くんとは別れようとは思わないの?」
「当たり前だろ。ひろと別れるとか一度だって考えたこともない」
「じゃあ、それでいいんじゃない?」
「…え?」
ハルのあまりにもシンプルな答えに、俺は素っ頓狂な声が出た。
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