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「はい、どうぞ」
私の好きな紅茶専門店のミルクティーのパウダー。
甘過ぎず、まろやかな口当たりが好きで、ゆったりしたい時のために買っている。
もちろん、自分自身のために。
私だけの、ほんの小さな贅沢。
「これ、すごく美味しいよ」
涼香姉さんは、何も言わずにカップを口に近づけた。
「うっ、やだ、熱っ」
「そんなに慌てないで、ゆっくり飲まないと」
「お湯が熱すぎるのよ。本当、気をつけてよね。私が猫舌なの知ってるでしょ? あっ、そうそう。私、この前1杯1500円のミルクティーを飲んだのよ。何ともいえない香りでね、美味しかったわ」
1杯1500円って……
「そ、そう。でも私は、これで十分満足だから」
「ねえ、そういえば、今あなたが働いてるお店、AYAIの店長って、社長の息子なんですってね?」
「どうしてそれを?」
「私、友達多いじゃない? 色々な情報が入ってくるから。確か、店長の名前は『綾井 俊哉』だったかしら?」
そんな細かいところまで……
涼香姉さんのネットワークは本当に恐ろしい。
「そ、そうだけど……」
「店長さん、今度紹介してよ」
「えっ、紹介?」
「妹がお世話になってるんだから、ご挨拶するのが当たり前でしょ?」
「そ、そんなことしなくて大丈夫だから。綾井店長は忙しいからいつ店にいるかわからないし」
挨拶だなんて言ってるけれど、何を考えてるかわからない。
「まあいいわ。それよりこの部屋ちょっと狭くない? 私の部屋の半分も無いけど」
涼香姉さんは、首を動かしながらジロジロと部屋を見回した。
とても気の毒そうな顔をして――
「広すぎても掃除に困るし、私にはこのくらいがちょうどいいの。姉さんは家賃とか大丈夫なの?」
百貨店のお給料がどれだけあるか知らないけれど、あのマンションはかなり高いはず。