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◆ そばにいてもいいですか?
他人のそばにいるのが好きだ。
一人ぼっちも嫌いじゃないけど、誰かとひっついてぬくもりを感じていると安心する。
もちろん、それが大好きな人だったらふわふわウキウキしあわせいっぱい、、、なはずなんだけど─?
「どぬちゃんどうした?眠たいの?」
リビングのソファにもたれてぼぉーっとしてたら、横に座ってたもふくんが優しい声で聞いてきた。
「ん~、ちょっと」
まだまだ寝るつもりじゃないのに、やわらかなソファーとメンバーたちの穏やかな談笑が聞こえるまったりとした空気のせいでどんどん夢の中に吸い込まれてしまいそうになる。
「部屋行く?」
「ん~」
甘く聴き心地のいい声をもっと聴いていたくて首を振ったら、操作していたスマホを置いてもふくんがこっちを向いた。
「そこで寝たら風邪ひくぞー」
「ひかない、、、もん、、」
「首凝るぞ?」
「え、、、、それはヤダ、、」
一瞬、じゃあもふくんの肩貸してよ。って喉まで出かかったけど、なんとか踏みとどまる。
俺が本気で甘えておねだりしたら、多分もふくんはなんでも聞いてくれる。今までの経験上、多分、そう。
けど、リビングで、みんなのいる前だともふくんは嫌がる。これも経験上、多分、そう。
もふくんに「えー、💦」って困った顔されると凄く悲しくなっちゃうんだ。
だから、ほんとはもっとそばで肩枕とか膝枕とかひっついていたいのだけど、ぐっと我慢する。
もふくんまでの距離あと十数センチ。今はこれが限界。
「なんか、どぬ寝ちゃいそうじゃね?」
「ぅわっ」
急にどさっと膝の上に誰かがが乗り上げて来て思わずうめき声が出た。夢うつつがすっと覚め目を開けると、目の前でゆあんくんが覗き込んでて急な至近距離にびっくりする。
そのままためらうこと無くほっぺたとかおでことかペタペタ触ってくるからすっかり目が覚めてしまった。
「あ、起きたんじゃね?」
「あ、おはよう」
「起コシテクレテドウモ」
正面に乗られたままペットみたいに頭をぽんぽんされて、不機嫌な声が出てしまう。
せっかくの甘い空気もすっかり飛んで行ってしまった。
やめてよー、すぐ左隣にもふくんがいるのに。
心なしかもふくんのおはようも、さっきまであった甘さが微塵も感じられない冷めた無機質な声になった気がする。
ゆあんくんとはこんなに簡単にゼロ距離になれるのに、あと手のひら一個分の距離が果てしなく遠い。
「お前、ちょっと寄れよ」
心の中でゆあんくんへの文句をたらたらこぼしてたら、いつの間にか膝から降りてたようでぐいぐいと横から押されていた。
「え、なに??」
「そっち、もうちょっと左に寄れよ。俺が座れねえだろ」
「えっ、左、、、?」
言われたまま左へ顔を向けたら、視線の先には変わらずもふくんがいて、手のひら二個分横にある顔には『不満』の二文字がありありと現れていた。
ゆあんくんに押されるがまま体を寄せたら確実にもふくんとぶつかってしまう。
いっそ、さっきのゆあんくんみたいに膝の上に乗っちゃう?いや、無理だろ。だってもふくんめっちゃ不機嫌な顔してたもん。絶対、あの困った顔をさせてしまう。
なんでゆあんくんこっち来んの?もふくんの隣の方がスペース空いてたじゃん。
「こっち座れば?」
頭の中が大混乱して固まってしまっていたら、もふくんが席を立とうとしていた。
「待って!」
大混乱のままもふくんの手を掴む。
えーっと、こういう時なんて言うんだっけ?
立ち上がる途中の不自然な態勢のもふくんとバチリと目が合う。
なんとかしないともふくんが行っちゃう。回れ、俺の頭。
『行かないで』
『隣に座ってよ』
『膝枕して』
欲望はいっぱい頭の中に浮かぶのに、肝心の最適解が出てこない。
もふくんを困らせない、そばにいてくれる魔法の言葉って、どれ???
顔中が暑い、多分、絶対、俺、顔真っ赤だ。
もふくん、俺、もぉわかんないよ、、、。
頭が真っ白になって、答えが全然わかんなくて、でも触れていたくて。
何か言わなきゃ─、、、。
「そばにいても、いいですか?」
音に乗ったかわからないくらい消え入りそうな声で絞り出したら、
数拍置いて目の前のもふくんの顔がくしゃっと笑った。
終わり