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「ここ最近、小柄な女性を狙った性犯罪が隣町で多発している」
放課後。例のごとく屋上へ呼び出された俺たちは、梅宮さんのその言葉に少し、拍子抜けした。
「隣町…ですか…」
思わず口にした言葉に、梅宮さんが頷く。
「しかも1つの街だけじゃない。複数の街で、だ。」
少し語尾を強めた口調に、これは長くなりそうだな、と、どこか他人事のように感じる。
「多分、1つの大きな組織が、複数に別れて街を襲っているのだと思う。なんでそんな事するのかは分からんが」
手が届かないくらい、青く澄んだ空を瞳に映しながら、彼がため息をついた。
「だから、これからより一層見回りを強くしていこうと思う。いつこの街の女性が襲われてもおかしくない。普段行かないような場所や、人気の少ない所まで、抜かりなく見てほしい」
「っとに気味悪ぃなぁ…」
さっきまであんなに青かった空も、いつの間にか赤みを増し、太陽がバターのように西に溶けていた。
赤く照らされた道路を俺と楡井くん、桜くんの3人で歩いていると、桜くんが顔をしかめて言った。
「ですよね…しかも大きな組織がわざわざそんなことするなんて…」
楡井くんも心底辟易がするという表情で、項垂れている。
「俺も思った。大きな組織なら、金でいくらでもできるのに。わざわざ通りすがりの女性に手を出すなんて。もう犯罪じゃない」
うんうん、と楡井くんが頷く。
まぁ、そういう趣味なら分かるけど。
「とりあえず、明日は見回り、頑張るぞ」
白銀の方の髪を、夕焼けの光でキラキラ反射させながら、桜くんが言った。
でも、俺たちはその後彼がボソッと呟いた言葉を聞き逃さなかった。
「………頼りにしてるからよ………」
「「えっ」」
照れくさそうにそう呟く桜くんに、何を思ったのか、胸がきゅ、っとときめく。
「なんだよえっ、って!悪いかよ!!」
「えぇええ。さ、桜さん、キレないで下さいよ!」
「わあ、桜くん、顔が真っ赤だ」
「うるせぇぇっ!!」
きっと赤いのは夕日のせいだけじゃないであろう、桜くんの頬を見ながら、だんだんこっちまで照れくさくなってきた。
桜くんは、俺のクラスの級長で、すごく強くて、でも不器用で、どこか寂しげで、俺の大切な友人で、それで、俺の、
一好きな人
でもあった。