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こんにちは!
このノベルのやつミスって3回消した
ほんまに辛い
今回は比較的ほのぼのしてるやつです。多分
学晴です
あと最初の挨拶と最後の挨拶を省きます。良くない表現とかが次のお話にあった場合だけ書きます。
なんでもありな人向けです
ではいってらっしゃい!
第一話 白い空のほころび
放課後の校庭には、まだ帰らない生徒たちの影がちらついていた。
笑い声も足音も、ちゃんと耳には届く。なのに――どこか遠い。
まるで厚い硝子越しの世界を眺めているような、妙な隔たりがあった。
晴明は、古びた東屋の縁側に座り、手の中の紙コップを揺らす。
半透明の液体は光を反射せず、静かに沈んでいる。その色は“透明”のはずなのに、どこか深く曇って見えた。
「晴明くん、今日もお疲れさまです。つかれたでしょう?」
背後から静かに歩いてきた学園長が、いつもの柔らかな笑みを浮かべて言った。
「……学園長、これ、また僕だけですか?」
「もちろん。貴方だけには、特別なものをあげたいんですよ。」
その声は優しすぎて、逆に胸の奥が冷える。
学園長の微笑と裏腹に、指先だけがわずかに震えていた。
ふいに、空気がひゅう、と細く鳴った。
校庭を吹き抜けたはずの風は、晴明の頬に触れず、ただ白い紙の上をすべるように無音で去った。
「ねぇ学園長、、、最近、僕たち以外の声ちゃんと聞こえてますか?」
晴明は横目で周囲を見渡す。
視界の端では、部活帰りの生徒がふざけあっている。
だけど笑い声は、どれも遠く薄く、色も温度も欠けていた。
学園長は少しだけ、言葉を選ぶように沈黙した。
その沈黙は、風が凍るような静けさだった。
「晴明くんが気にする必要はないですよ。」
そして優しく髪を撫でた。
その掌は温かいはずなのに、どこか焦げつくように熱かった。
「世界がどう変わっても、私が貴方を必ず守る、、、それでいいでしょう?」
甘く、穏やかで、それなのに――
その響きの奥には、ひどく脆い何かが潜んでいる。
晴明は返事をしないまま、空を見上げた。
夕焼けに染まっていたはずの空は、白く滲み、輪郭を失っていく。
色という色が吸い取られ、まるで世界の端が磨り減っているようだった。
「……ねぇ学園長。空、変じゃないですか?」
「大丈夫ですよ、どこも変じゃないです、晴明くんが少し疲れているだけですから。」
笑う学園長の影は濃く伸び、晴明の影と静かに重なった。
二つの影が交わった瞬間、周囲の雑音が一段と薄くなる。
校庭の向こうで、誰かが手を振っている。
でも晴明は、その顔を思い出せなかった。
名前も、声も、体温すら霧の向こうに消えている。
――気づけば最近、こんなことばかりだ。
「晴明くん」
「……はい」
「貴方は、私となら……どこへだって行けますよね?」
その問いかけは、優しい囁きのようでいて、
どこか“確かめたがっている”ような切実さを孕んでいた。
晴明は胸に手を当てる。脈が深く、ゆっくりと落ちていく。
世界の色も音も薄まる中で、学園長の声だけが鮮やかに響いていた。
「……もし世界が全部なくなったら?」
「そのときは――貴方と私だけが残ればいい」
声は淡々としていた。
けれど、その言葉の裏には妙な確信があった。
まるで、もうすでに“そうなりつつある”ことを知っているかのように。
風が止む。
光が薄れる。
二人の影だけが、ゆっくりと濃度を増していく。
まるでこの場所が、二人を包み込むために形作られた部屋であるかのように。
世界の端が静かに削れ、空が白い淵を広げるその中で――
晴明はただ、学園長の横顔を見つめていた。
そしてほんの一瞬だけ、
“この人となら、どこまででも落ちていける気がした”
――そんな感覚が胸を打った。