テラーノベル
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「……よし、全員配置についたな。これより作戦を開始する」
アジトの作戦室。無数のモニターとホログラムに囲まれた中心で、いるまはヘッドセットに手を当て、鋭い声を響かせた。
モニターに映し出されているのは、今夜のターゲットである空中庭園ビル。その最上階に保管されているのは、妖艶な紫色の輝きを放つ、世界最大の紫水晶『アメジスト・ハート』だ。
今回のセキュリティは、これまでとは次元が違う。過去の怪盗たちのデータを学習し、侵入者の動きに合わせてリアルタイムで構造を変化させる『AI流動防壁(アルゴリズム・ウォール)』。
現場での臨機応変な突破は不可能。つまり、この任務の成否は、すべての戦況をリアルタイムで先読みし、完璧なルートを指示する司令塔──いるまの頭脳にすべてがかかっていた。
「いるま、こっち準備おっけーだよ。いつでも動ける」
潜入ポイントのダクト内で、らんが声を潜める。
「ん……こっちもスタンバイ完了。いるまちゃん、指示よろしくね」
すちがいつもの眠たげな声を返す。
「あぁ、耳をかっぽじって俺の指示をよく聞け。1秒の遅れが命取りになるぞ」
いるまの目は、目まぐるしく変わるモニターの数値を完全に捉えていた。
「──カウント3で突入。3、2、1、行け!」
いるまの合図と同時に、メンバーが一斉に動き出す。
「らん、すち、そのまま直進。3秒後に右から警備ドローンが来る。すち、声を出すな。こさめの『音響操作』で足音を消したまま、ドローンの死角になる左の柱の影に滑り込め……今だ!」
「おっとっと……! 本当にドローンが来た! すげー、ドンピシャじゃん!」
「静かにしろらん、次だ。みこと、フロントの警備員が不審な動きに気づきそうだ。10秒後に西側の通路に向けて『魅了の歌声』を響かせろ。奴らの意識をそっちに逸らす」
「了解。……ふふ、僕の歌に集中してね?」
いるまの指示は、まるで未来を予知しているかのように的確だった。
敵の配置、防衛システムの周期、メンバーの移動速度。そのすべてを脳内で完璧に計算し、流れるようなコンビネーションで潜入を進めていく。これこそが、いるまの持つ
『超感覚並列思考(マルチプロセッシング)』
の力だった。
「なつ、裏口のスロープに警備が集まり始めてる。お前の『絶対命令』で、やつらを東側のゲートに誘導しろ」
「了解。おい、お前ら全員東へ向かえ……よし、片付いたぞ」
メンバーがそれぞれの能力を最大限に発揮できるのは、いるまが「誰が、いつ、どこで、どう動くべきか」を完璧に差配しているからに他ならない。いるまの冷徹なまでの冷静さと、メンバーへの深い信頼が、6人を最強の怪盗団にしていた。
ついに最深部に到達したらんの手によって、妖しくも美しい紫色の『アメジスト・ハート』が回収される。
だがその瞬間、AIシステムが異変を察知。ビル全体の照明が落ち、すべての出入り口に厚さ数十センチの隔壁が降り始めた。
「なっ……!? 全ルートが完全にロックされた! いるま、どこも開かないよ!?」
らんの焦った声。
「慌てるな、想定内だ。AIが退路を塞ぐパターンはすでに計算してある」
いるまのキーボードを叩く速度が上がる。
「いいか、全員聞け。今から俺がシステムの基幹にハッキングを仕掛け、一瞬だけシステムをオーバーロードさせる。チャンスはたった一度、時間はわずか3秒だ」
モニターの警告灯が赤く点滅する中、いるまは不敵に口元を歪めた。
「俺の指示を信じて、迷わず走れ!」
いるまがエンターキーを激しく叩きつける。
パツン、とビル全体のシステムが強制再起動(ダウン)に入った。
「すち、目の前の隔壁を『共鳴破壊』でブチ抜いて進め! なつ、その先の通路にロボットが立ち塞がる、『道を空けろ』だ! こさめ、みこと、二人の後ろから来る追手の視覚センサーを音波で狂わせろ! ──らん、お前は宝石を抱えてそのまま屋上へ走れ!」
間髪入れないいるまの怒涛の指示。
5人は一切の迷いなく、いるまの言葉通りに身体を動かした。
すちが壁を砕き、なつが道を拓き、こさめとみことが敵を翻弄する。そしてらんが、開いた一筋のルートを全力で駆け抜けた。
「──屋上に出たよ! いるま!」
夜風が吹き抜ける屋上。ヘリの手すりにつかまったらんの手には、月光を浴びて怪しく輝く紫色の宝石があった。
「よし、全員回収! 撤退だ!」
アジトの作戦室で、いるまはヘッドセットを外し、大きく息を吐きながら椅子の背もたれに深く体重を預けた。
モニターには、ヘリで夜空へと消えていくメンバーたちの楽しげな映像が映っている。
「……ったく、人使いの荒いメンバーたちだぜ」
ぶつぶつと言いながらも、いるまの口元には、最高の仲間たちへの誇らしげな笑みが浮かんでいた。
コメント
2件

いるまさんの魔法の力がカッコいい✨️です ((o(´∀`)o))ワクワクな気持ちになりましたありがとうございます!
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しずく@病み×鬱