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傘

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1 - 傘

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2023年06月27日

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赤 『まじか…』


学校を出ると、雨が降っていた。

いつも折り畳み傘を持っているのに、今日に限ってない。

ついてないな、と思いつつ、濡れることを決意して一歩踏み出すと、なぜか俺には雨が当たらなかった。

すぐに上を向いて確認すると、見慣れない傘が俺を雨から守っていた。


赤 『…?』

桃 『傘、ないの?』

赤 『さ、桃くん!?』


後ろから声がしたと思えば、幼馴染の桃くんが俺に傘をさしていた。


桃 『そうだけど?笑』

赤 『な、なんでいるの?』


困惑している俺を見て、クスクスと笑う彼。

ったく、こっちは真剣だっつーの。


桃 『別に?』

桃 『たまたまかな』

赤 『へ、へえ〜…』

桃 『へえ、ってなんだよ笑』

赤 『いやぁ…びっくりして…』

桃 『ずっと一緒にいるのにびっくりするなんてことないだろ笑』

赤 『あるんだってば!』


なんなら、ずっと一緒にいるからこそかもしれない。

俺は、昔から彼に想いを寄せているのだから。

でも、彼が振り向くこともないし、関係は幼馴染。

今までもこれからも、それは変わらない。

早く諦めたほうがいいことなんてわかっているけど、どうしても諦めきれないまま、もう高3。

そろそろ潮時かと思っていたのに、こんなことされたらまた好きになっちゃうじゃん…。


桃 『はいはい笑』

赤 『もう…//』

桃 『で、傘は?』

赤 『ないよ!見たらわかるでしょ!』

桃 『じゃあどうやって帰ろうとしてたんだよ』

赤 『普通に濡れて帰ろうかなって』

桃 『バカお前、そんなん風邪引くだろ』

赤 『べ、別にひかねーし…//』

赤 『俺強いから…っ//』

桃 『いつまでガキみたいなこと言ってんだよ笑』

赤 『なっ…!//』

桃 『ふはっww』

桃 『よかったな俺がいて笑』

赤 『うるさい…//』


こんなに好きなのに。

こんなにずっと…想っているのに。

君に想いが届くことがないなんて信じたくない。


桃 『家近いから最後まで入って行けるな』

桃 『よかったわ』

赤 『ありがと…//』

桃 『にしてもひでぇ雨だな…』


会話が止むと、地面に叩きつけられる雨の音が響く。


赤 『うん…』

赤 『濡れて帰らなくてよかった…』

桃 『あのさ』

赤 『…?』

桃 『さっきなんでいるか聞かれた時「たまたま」って答えたけど』

桃 『全然たまたまじゃねえから』

赤 『え…?』

桃 『こんな雨ん中大切な人を濡らして帰るやつがどこにいんだよ…』


傘を持っていない方の手で頭を掻きながらそう言う彼。

俺はその言葉をすぐに理解できず、ただ黙っていた。


赤 『…それって…、』

桃 『…ずっと』

桃 『ずっと好きだった』

赤 『…!//』

桃 『でもさ…』

桃 『赤はそんな気ないだろ…?』

桃 『だからもうここで区切りつけようかなって…』

赤 『そんなことない…っ!//』

赤 『そんなこと…ない…っ、//』

桃 『え…?』

赤 『俺も…ずっと好きだった…//』

赤 『だけど桃くんにそんな気ないだろうって思って』

赤 『何度も諦めようとしたけどやっぱり諦められなくて…、』

赤 『気づけば…高3だった』

桃 『…っ、じゃあ俺たちって』

赤 『両…想いです…//』

桃 『本当に…?』

赤 『コクッ…//』

桃 『そっか…そっか…ポロッ』


安心したのか嬉しいのかわからないが、突然泣き出した桃くん。

そんな彼を見て、今度は俺が笑ってしまう。


赤 『何泣いてんの…笑』

桃 『怖かった…』

桃 『気持ち悪がるんじゃないかとか…っ』

桃 『嫌われるんじゃないかとか…』

桃 『もう…関係が崩れちゃうんじゃないかとか…っ、』

桃 『不安だったから…、ポロッ』

赤 『…告白してくれてありがとう//』

桃 『…!』

桃 『こちらこそ…っ、!//』

赤 『ふふ…笑//』

桃 『大好き…チュッ』

赤 『…!//』




そっと重ねた唇を、静かに雨が濡らしていた。

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