赤 『まじか…』
学校を出ると、雨が降っていた。
いつも折り畳み傘を持っているのに、今日に限ってない。
ついてないな、と思いつつ、濡れることを決意して一歩踏み出すと、なぜか俺には雨が当たらなかった。
すぐに上を向いて確認すると、見慣れない傘が俺を雨から守っていた。
赤 『…?』
桃 『傘、ないの?』
赤 『さ、桃くん!?』
後ろから声がしたと思えば、幼馴染の桃くんが俺に傘をさしていた。
桃 『そうだけど?笑』
赤 『な、なんでいるの?』
困惑している俺を見て、クスクスと笑う彼。
ったく、こっちは真剣だっつーの。
桃 『別に?』
桃 『たまたまかな』
赤 『へ、へえ〜…』
桃 『へえ、ってなんだよ笑』
赤 『いやぁ…びっくりして…』
桃 『ずっと一緒にいるのにびっくりするなんてことないだろ笑』
赤 『あるんだってば!』
なんなら、ずっと一緒にいるからこそかもしれない。
俺は、昔から彼に想いを寄せているのだから。
でも、彼が振り向くこともないし、関係は幼馴染。
今までもこれからも、それは変わらない。
早く諦めたほうがいいことなんてわかっているけど、どうしても諦めきれないまま、もう高3。
そろそろ潮時かと思っていたのに、こんなことされたらまた好きになっちゃうじゃん…。
桃 『はいはい笑』
赤 『もう…//』
桃 『で、傘は?』
赤 『ないよ!見たらわかるでしょ!』
桃 『じゃあどうやって帰ろうとしてたんだよ』
赤 『普通に濡れて帰ろうかなって』
桃 『バカお前、そんなん風邪引くだろ』
赤 『べ、別にひかねーし…//』
赤 『俺強いから…っ//』
桃 『いつまでガキみたいなこと言ってんだよ笑』
赤 『なっ…!//』
桃 『ふはっww』
桃 『よかったな俺がいて笑』
赤 『うるさい…//』
こんなに好きなのに。
こんなにずっと…想っているのに。
君に想いが届くことがないなんて信じたくない。
桃 『家近いから最後まで入って行けるな』
桃 『よかったわ』
赤 『ありがと…//』
桃 『にしてもひでぇ雨だな…』
会話が止むと、地面に叩きつけられる雨の音が響く。
赤 『うん…』
赤 『濡れて帰らなくてよかった…』
桃 『あのさ』
赤 『…?』
桃 『さっきなんでいるか聞かれた時「たまたま」って答えたけど』
桃 『全然たまたまじゃねえから』
赤 『え…?』
桃 『こんな雨ん中大切な人を濡らして帰るやつがどこにいんだよ…』
傘を持っていない方の手で頭を掻きながらそう言う彼。
俺はその言葉をすぐに理解できず、ただ黙っていた。
赤 『…それって…、』
桃 『…ずっと』
桃 『ずっと好きだった』
赤 『…!//』
桃 『でもさ…』
桃 『赤はそんな気ないだろ…?』
桃 『だからもうここで区切りつけようかなって…』
赤 『そんなことない…っ!//』
赤 『そんなこと…ない…っ、//』
桃 『え…?』
赤 『俺も…ずっと好きだった…//』
赤 『だけど桃くんにそんな気ないだろうって思って』
赤 『何度も諦めようとしたけどやっぱり諦められなくて…、』
赤 『気づけば…高3だった』
桃 『…っ、じゃあ俺たちって』
赤 『両…想いです…//』
桃 『本当に…?』
赤 『コクッ…//』
桃 『そっか…そっか…ポロッ』
安心したのか嬉しいのかわからないが、突然泣き出した桃くん。
そんな彼を見て、今度は俺が笑ってしまう。
赤 『何泣いてんの…笑』
桃 『怖かった…』
桃 『気持ち悪がるんじゃないかとか…っ』
桃 『嫌われるんじゃないかとか…』
桃 『もう…関係が崩れちゃうんじゃないかとか…っ、』
桃 『不安だったから…、ポロッ』
赤 『…告白してくれてありがとう//』
桃 『…!』
桃 『こちらこそ…っ、!//』
赤 『ふふ…笑//』
桃 『大好き…チュッ』
赤 『…!//』
そっと重ねた唇を、静かに雨が濡らしていた。